特別支援学校に通う高校生たちが接客などの仕事ために必要な技能を競う技能検定をご存じでしょうか?ひとりひとりの“働く力”を高め育む検定で、生徒たちは、自らの可能性に挑戦することで、未来につながる一歩を踏み出しています。
「ご注文を繰り返します。ホットコーヒーひとつ、以上でよろしいでしょうか?」
先日、沖縄市で行われた特別支援学校の技能検定。生徒たちの就労意欲を高めようと県が主催したもので、県内13の特別支援学校や分教室に通う生徒35人が参加しました。
参加者「最初は緊張したけれど、そのあとから普段通りにできてよかったです」
参加者「自分なりに頑張ったから、よかったかなと思いました」
検定は、接客技術を審査する「喫茶サービス」部門とモップなどを使って清掃作業のスピードや正確さを競う「メンテナンス」部門の2部門。
審査にあたるのは、その業界で働くプロで挨拶やみだしなみなど厳しく評価し、1級から10級までを認定します。
就労支援コーディネーター 翁長克さん「やっぱり基礎力ですよね、社会に出ていくと基本というのがすごく重要になってきます。」
「社会に出て行ったときに、これだけ自分できるんだよということころを、しっかりとアピールできるように。特別支援学校だからできないではなくて、特別支援学校だからこういう技術も積むことができたという自信をもってしっかりと出ていてほしいと思います」
将来を見据えて、さまざまなことを経験したいと、今回、初めて技能検定に挑戦します。
南風原高等支援学校2年 幸地克斗さん「将来や自分に役立つかなという思いで技能検定挑戦しましたね」
幸地さんが通っている南風原高等支援学校は、南風原高校に併設されています。一般就労を目指した専門科目の授業では、トータルクリーニングや食品加工など4つのコースが設けられていて、生徒たちは3年間を通して、働くための技術や知識を身につけます。
「親指と中指で押すように」
幸地さんも多くの経験を積み重ねながら自己理解を深め、働く意欲を高めています。
南風原高等支援学校 知念佐和子教諭「彼の実直さ、まじめさ。丁寧に作業できているので、しっかり確認もしてくれるとっても頑張ってると思います」
ひたむきな姿が印象的な幸地さんですが、その人柄は幸地さんが紡ぐ言葉にも垣間見えました。
南風原高等支援学校2年 幸地克斗さん「人と話しするときに笑顔じゃなくて普通、怒ったりすると相手も嫌な感じになると思うので、その考えをなくすために笑顔をして人とのコミュニケーションをとることを続けています」
「こんにちはー」
授業が終わり放課後、まもなく迎える本番を前に、練習に励む幸地さん姿がありました。幸地さんの課題は、制限時間内に収めること。検定では、5分の制限時間内で実演しなければなりません。
接客の練習する幸地さん「お、お、お待たせいたしました。ホットコーヒーひとつ。ホットコーヒーであります」
身だしなみはもちろん、注文の受け答えなど、接客の基礎を一つ一つ確認しながら練習を重ねました。
知念先生「6分だったから、制限時間ギリギリ。もうちょっとセリフ覚えて流れ覚えたらばっちり」幸地さん「しっかり縮めていきたいと思います」
検定当日。開始前のあいさつさする幸地さん「南風原高等支援学校の幸地克人です。よろしくお願いします」
水と飲み物はお客様の右側から提供など、評価は88項目。すべてクリアとなれば、1級を取得することができます。自分のペースを掴み始めると、表情にも余裕が出てきました。
接客する幸地さん「ご注文はお決まりでしょうか?(ホットコーヒーを一つ)はい、ご注文を繰り返します。ホットコーヒーをおひとつ、以上でよろしいでしょうか?かしこまりました。少々お待ちください。注文お願いします。ホットコーヒーをひとつです」
南風原高等支援学校2年 幸地克斗さん「ほんとに学校で練習したことができるかなと、そこが心配だった」「お客さまには笑顔で対応することが大事で、あとは声を大きくするっていうのを本番前にしっかり意識して出せたかなって思ってます」
終了のあいさつする幸地さん「業務が終わりました。ありがとうございました。(お疲れ様でした)ただいまの時間、4分28秒」
5分以内の制限時間も見事クリア。最後まであきらめることなく、やり遂げました。
南風原高等支援学校 金城義樹教諭「僕らも生徒の違った一面見られてよかったと思います。次、3年生になって就職をかけた実習とかそういったものに自信につながるんじゃないかなと思ってます」
南風原高等支援学校2年 幸地克斗さん「接客っていう初めての検定に出たんですけれど、そこをまずは経験ができてよかったと思ってます」「挑戦するっていうのが大事、そこをしっかり3年生になってもやっていけたらなと思ってます」
検定での経験は、生徒たちにとって社会に出ていくための一つの突破口。昨年度、県内の特別支援学校を卒業して一般企業などに就職した生徒はおよそ9割、定着率も高い現状。
しかし、まだまだ障がい者雇用に対して地域や企業の理解が十分ではない部分もある。卒業後、生徒たちが自信をもって力を発揮できるように、私たち、ひとりひとりの理解が求められています。