今月10日から19日まで行われた日米による共同統合演習。自衛隊の輸送などには、民間港である中城港湾が使用され、与那国島では公道を戦闘車が走行するという様子が確認されました。
ロシアによるウクライナ侵攻、北朝鮮による度重なるミサイルの発射、緊張感の高まる台湾情勢など、これまでにない環境下で行われた今回の演習について振り返ります。
「戦車走るなー」濱元記者「反対の声が響く中、機動戦闘車が公道に入ろうとしています」
今月10日から19日まで、10日間にわたって全国各地で行われた日米共同統合演習「キーンソード」。自衛隊とアメリカ軍合わせておよそ3万6千人が参加する大規模なものとなった今回の演習の目的について、防衛省の統合幕僚部は次のように説明しています。
報道発表資料文書「グレーゾーン事態から武力攻撃事態等における(※中略 自衛隊の運用要領及び日米共同対処要領を演練し)自衛隊の即応性及び日米の相互運用性の向上を図る」
防衛省は「グレーゾーン事態」を「平時でも有事でもない幅広い状況」としており、一方、「武力攻撃事態」については、「外部からの武力攻撃が発生した事態、または、武力攻撃が発生する、明白な危険が切迫していると認められるに至った事態」と説明しています。(防衛白書より)
今回の演習はまさに「有事へと変わった状況」を想定しており、資機材の輸送などでは民間港である中城湾港が使用され、台湾にほど近い国境の島、与那国町においては、戦闘車が公道を走行するなど、県民生活への大きな影響が懸念されます。与那国町では島民から様々な声が聞こえてきました。
住民「実際、最近中国が演習で与那国近くまでミサイル飛んで来ているんで、正直、強化してもらった方がいいんじゃないかと思う」
住民「(自衛隊が)守るから大丈夫だよという気持ちになる人もいらっしゃるかもしれないんですけど、やっぱりこういうのがあると逆に煽るんじゃないかなという気持ちになりました」
住民「銃口を突きつけて走っているものが普通に予告なく走って当たり前というのは、恐ろしいなと思っています」
住民「とにかく一致しているのはこのアジアで緊張を緩めてほしい、緩和してほしいというのは一途の願いで、今のこの動きがそれに繋がるものだとは到底思えません」
こうした中、玉城知事は。
玉城知事訓練への言及10日会見「我々はいわゆる(民間港湾の)日米の共同使用、あるいは自衛隊の使用について、なし崩し的に物事が進められるということを一番危惧しています。基地の過重な負担に繋がるようなことは我々としても到底認められるものではありません」
一方、国は。
浜田防衛大臣11日「南西諸島の空港や港湾は、有事や災害等の各種事態における人や物資の輸送の観点においても大変重要な役割を担うものと認識をしております。日頃からそのための訓練を重ねる必要があるとの観点から、これらを平素から柔軟に利用できることが重要と考えております」
「過重な基地負担は認められない」と訴える県に対して国は、空港や港湾の使用について「平素から利用出来ることが重要」だとして、今後、積極的に議論していきたいと、全く逆の考えを示しました。
また、今回の演習期間中、オスプレイによる負傷者の搬送訓練の様子が報道陣に公開され、アメリカ軍の指揮官は、次のように述べました。
医療施設の指揮官・エリザベス・スミス大佐「日本の自衛隊員でも、アメリカの海兵隊員でも、国籍関係なく、患者に最善の治療を行なって、元の状態に戻れるようにするのが、日米同盟の目的であると考えます」
こうした中、浦添市の松本市長はオスプレイを使った訓練について、事前に通達があったとして「問題はない」との認識を示しました。
浦添市 松本市長 今月15日「我々としては事前に米軍の方から通達がございましたので、不安を与えないような特段の配慮をお願いするとやってきております。きょう、目視の確認でも我々の要望に応える形で訓練が行われたと解釈しているところでございます」
草柳キャスター「今、沖縄の空にはじめてオスプレイが翼を広げています」
しかし、オスプレイの普天間基地への配備を巡っては、10年前、県民らによる大きな抗議行動が行われていました。
2012/9/9 オスプレイ配備に抗議する県民大会。
翁長雄志那覇市長(当時)「これだけの反対を押し切って強行配備をしようとする日米両政府のやり方は戦後の銃剣とブルドーザーで土地を強制接収したことと、なんら変わらない構図がこんにちまで継続していると言っても過言ではありません」
当時の41全ての市町村長らと県議長が署名し、政府に対してオスプレイの配備撤回を訴える「建白書」を提出したほか、銀座ではおよそ140人で抗議パレードを行うなど、沖縄がまさに一体となって意志を示しました。
2013/1/27東京での抗議行動「売国奴」「日本から出てけ」
オスプレイの配備から10年。今回の演習についてこのあと、スタジオに沖縄国際大学 前泊博盛教授を招き解説します。(動画を参照ください)