琉球の貴重な動植物を紹介する「リュウキュウの自然」です。案内は動物写真家の湊和雄さんです。よろしくお願いします。
湊和雄さん「よろしくお願いします」
今回のテーマはこちら「亜熱帯の秋」です。森の中も季節が変わってきましたか?
湊和雄さん「そうですね、動物たちの活動も次第にさみしくなる季節ですが、やはりそこは亜熱帯、まだまだ温帯では見られないシーンが展開しています。」
さっそくVTRをご覧ください!
湊和雄さん「今の季節、やんばるの森では何種類もの赤い木の実を目にします。そのひとつが、このハクサンボクの実。」
たくさんの実が付いています。緑と赤のコントラストが映えますね!
湊和雄さん「そうですよね。つづいて、赤い木の実で存在感を示しているのがイイギリ。高さもあり、房状になる実は、遠くからでも目立ちます。しかし不思議なことに、この実は動物たちに人気がありません。」
鈴なりなのに食べてもらえないなんて残念。
湊和雄さん「今の季節の 木の実と言えば、忘れてならないのがドングリの仲間。これは、その代表のイタジイの実。やんばるの森で最も多い樹木です。」
湊和雄さん「イタジイの実は、樹上でも地上でも、多くの動物の貴重な栄養源になっています。人間も食べられるドングリなんですよ!!」
そうなんですね!
湊和雄さん「本土では、秋といえば紅葉のイメージですが、亜熱帯の森で紅葉する 木はほとんどありません。今の季節、黄色に変色した葉っぱなら、何種類か見られます。その代表がアカメガシワ。間もなく落葉します。」
きれいな黄色で、秋を感じますね。
湊和雄さん「より亜熱帯らしいのは、このサキシマフヨウ。ハイビスカスと同じアオイ科フヨウ属の仲間で大輪の花をたくさん咲かせます。本土だと暑い季節のイメージですね。」
薄いピンクでキレイですね!
湊和雄さん「花の色は濃いピンクから白い色まであるんですよ。」「続いて、こちらはまだまだ元気に活動しているチョウ達。その多くはマダラチョウの仲間ですが、アゲハチョウやシロチョウなど他のグループの姿も見られます。」
湊和雄さん「その中でも最も多く見られるのはツマムラサキマダラ。1990年頃から沖縄に定着し、その後しばしば大発生しています。」
別の種類のチョウもいますね。
湊和雄さん「これはアサギマダラ。数はそれほど多くありませんが、ほぼ日本全国で見られる種類で、沖縄では夏に姿を消し、10月中旬から再び姿を見るようになります。」
このチョウには、何か文字のようなものが書いてありますよ。
湊和雄さん「そうなんです。たまに、このようにハネに文字や数字の書かれた個体を見かけます。実はアサギマダラは渡鳥のように季節によって長距離を移動しているのです。このアサギマダラを調べてみると、喜界島でマークされたもので、直線距離で250km移動しています。」
こんな小さな身体で250kmも移動するのは、驚きですね。
湊和雄さん「続いて、亜熱帯らしさの象徴と言えばセミでしょう。夏の昆虫というイメージですが、11月まで活動するのがクロイワツクツク。主な生息地はやんばるです。今年は11月の初旬で鳴き声を聞かなくなりました。」
湊和雄さん「さらにこのオオシマゼミも同じような季節・地域で活動する近縁種ですが、まだまだ鳴き声を聞く機会が少なくありません。例年12月に入っても鳴き声が聞かれることもあります。」
やんばるに行けば、まだセミが鳴いているんですね!
湊和雄さん「セミに並んで、夏の印象が強いトンボの活動も、まだまだ続いています。これはやんばるの渓流環境を代表するリュウキュウハグロトンボの雄。渓流沿いで縄張りを守りながら小さな昆虫が近づくと、捕まえようと飛び立ちます。」
何かをしっかり狙って飛び立っています!
湊和雄さん「アカナガイトトンボもまだ活動しています。枯枝の先にとまっていましたが…、そこに近づいたアリに驚いて飛び立ったようです。肉食性なのに、ちょっと臆病ですね。」
マーキングされたアサギマダラを初めてみました!
湊和雄さん「マークを付けて渡りの調査をしているんですよ。」
興味深いです。変わって、美ら海水族館で写真展を展開している湊さんですが、今月末にもイベントがあるそうですね?
湊和雄さん「はい。「日本初の国立自然史博物館を沖縄に」と題して、シンポジウムが、11月30日、なはーとで行われます。私は開演前に流される『やんばるの自然』のプロモーションビデオを担当しています。」
シンポジウムについては、『国立自然史博物館を沖縄に』で検索してください。湊さん、今回も貴重な映像ありがとうございました。以上、リュウキュウの自然のコーナーでした。