先週土曜日、アフリカ・ザンジバルの野球チームが初めて県内の高校生と国際交流試合を行いました。普天間高校・上原監督が現地に野球を伝えて8年。教え子たちは野球を心から楽しみ、成長している姿を見せました。
先週木曜日、アトムホームスタジアム宜野湾のグラウンドに立ったのは、東アフリカ・タンザニア連合共和国に属するザンジバルからやってきた野球チーム。黒土のグラウンドを初めて踏みました。
普天間高校川添大和主将による歓迎のスピーチ(11月3日)「ようこそ沖縄へ国境を越えてつながることができる野球というスポーツの偉大さ、きょうここで出会った喜び全てに感謝します」
この日(11月3日)は普天間高校との合同練習。「テレビで見ていた」という設備の整った球場に初めて立った選手たちは、キャッチボールやノック、試合形式の練習に汗を流しました。良いプレーが起きるとみんなでハイタッチを交わすなど、スタジアム内は和やかな雰囲気に包まれました。
「ザンジバルの選手たちが沖縄のグラウンドに立つ」
この時を待ちわびていたのが、現在普天間高校野球部の監督を務める上原拓さんです。
上原拓監督「うれしいの一言、彼らが本物の野球場に立つことは普通に生活していたら絶対にかなわないことだったはずなので、これが実現できて本当にうれしかった」
2014年、青年海外協力隊の一員として、ザンジバルに赴いた上原さん。現地の人々に、スポーツとしてまだ伝わっていなかった野球を教えました。その時に上原監督に野球を教わった、ザンジバル野球のパイオニア、カシムさん。(26)
8年前、上原監督の下でキャプテンを務め現在は現地でコーチを務めている、ザンジバル野球のパイオニア、カシムさん、出会いは18歳の時でした。
上原監督に野球を教わったカシムさん「初めてやった時はなんて変わったスポーツなんだろうとびっくりした。でも自分はサッカーや陸上をやったりしていたけどはじめてのスポーツで驚きの連続だった。でも拓コーチが楽しく教えてくださって、やっているうちに好きになって今自分の中に「野球の血」が流れているように感じている。今は絶対に野球をやめたくありません」
野球に夢中になり、「もっと上手くなりたい」という教え子たちの思いに心を動かされた上原拓監督。「いつか沖縄の野球場に立たせたい」と思うようになりました。
事業家でザンジバル野球連盟会長を務める島岡強さんに相談し、国際親善事業が実現。2日、ついにザンジバルから13人の選手たちが来沖し、長年の夢が叶いました。
普天間高校 上原拓監督「とてもうれしい。久しぶりなので少しおじさんになっているけど当時一緒にいるメンバーも6人いて、とても懐かしく思っている」
カシムさんは今回の遠征にザンジバルの野球に対する「ある思い」を秘めていました。
カシムさん「自分たちが戻って自分たちより若い人や子供たちにベースボールを紹介して、ザンジバルベースボールを続けていきたい。日本の野球が素晴らしいと自分は感じていて、テレビで見ていたようなほかの国のベースボールとは違うような気がする。日本の野球を吸収して持ち帰って伝えていきたい」
ザンジバルに野球の楽しさをもっと広めたい。そのために、楽しみながら選手が成長できる「コーチング」を学ぶことでした。2日間の練習を終え、いよいよ、初めての試合を迎えます。
カシムさん「自分たちがどれだけレベルアップしたかは自分たちには分からないが、上原監督にはその成果をたくさん見ていただけると思っている」
相手は、県内の高校から国際交流を希望した選手が集まった「沖縄選抜チーム」。試合は1回、沖縄選抜に出塁を許しますが、先発ピッチャー、ハキームが抑え、沖縄選抜を見事0点に抑えます。
両チーム無得点で迎えた3回表、1アウトから9番ラマダンが相手のエラーを誘い出塁すると、1番ファハディ。
「14歳で拓コーチにお会いしたので8年の中で成長してきたのでその姿を見せることができてうれしい」
レフトオーバーの大きな当たりで1塁ランナーのラマダンが激走し、一気にホームへ。沖縄選抜チーム相手に記念すべき先制点を奪います。
さらに、アブドゥルのショートへの強襲ヒットで2点目。この後も打線がつながり、2点を追加。この回、4点を先制します。
しかし、その裏、守備のミスが重なり、すぐに同点に追いつかれます。コーチングを学びたいと話していたカシムさん。試合の間、常に上原監督の横にいて1つのプレーごとに正しい動きを聞いていました。
カシムさん「ザンジバルチームの内野手・外野手・バッターの動きなど一つひとつの動きについて学んでいた」
ピッチャーの交代を告げる時も、監督と一緒にベンチから出て、マウンドでチームメイトに声を掛けます。
上原拓監督「当時から彼を中心にザンジバル野球は続いていて、彼の一言でみんなが動くし、とても信頼性のあるキャプテンだったのでゆくゆくは彼が引っ張っていく立場になるようなアドバイスをした」
試合は4-10(7イニング)と初陣を勝利で飾ることができなかったザンジバルチーム。しかし、上原監督に8年間の集大成を見せることができたメンバーたちは、充実した表情を浮かべていました。
上原拓監督「予想より野球になっていた。先に先制点取るとは思っていなかったので予想外の展開ではあった。手に入らない道具をこちらから支援したり精神的なサポートを続けて日本の野球部員と一緒にサポートしていけたらと思う」
カシムさん「拓コーチはどんな時でも変わらない。自分たちが勝っても負けても変わらずに野球の楽しさを教えてくれた。一生懸命やるということを教えてくれた。自分もそれを見ていて、そういうコーチになって子どもたちに野球の楽しさを教えていきたい」
新たな歴史を踏み出したザンジバル野球。それをリードするカシムさんも思いを新たにしていました。
ザンジバル野球チームは今週末に再び交流試合を行う他、普天間高校と合同で、授業交流や文化体験を行い、16日まで沖縄に滞在する予定です。