特集は、食欲の秋にぴったりの、おいしい話題をお届けします。主役はこちら「タンナファクルー」です。沖縄で昔から親しまれてきたお菓子が、今、あの大物民謡歌手とのコラボなど、新たな展開を迎えています。
街頭インタビューQこのお菓子の名前わかります?「はい、タンナクルーです」「タンナクルーでしょ」Qどんな味かわかります?「いただきます」
目の前にあったら手を伸ばさずにはいられない県民をひきつけるお菓子「タンナファクルー」。「おばあちゃんの家に常備されていた!」という人も多いのではないでしょうか。沖縄で昔から親しまれてきたお菓子がいま、新展開を迎えているんです!
先月上旬、お笑い団体FECの事務所で、あるレコーディングがおこなわれました。
大物民謡歌手 護得久栄昇先生「ハイサイ」「え、撮るわけ?聞いてないよ」「バラエティーだろうが、ニュースだろうが、報道だろうが、同じスタンスで私はいくよ。変わらないよ。私が若かったら、あんたの人生、チンダミしてたよ、チャメ!報道でこのアップなかなかないだろ」
この日収録するのは、大物民謡歌手・護得久栄昇先生の新曲「タンナファクルー節」。
護得久栄昇feat.大兼のぞみ「タンナファクルー節」作詞曲:東外門清順、編曲:赤嶺勝也,東外門清順
「♪そもそも わからんのだよその名前 どんな意味か「タンナファクルー」どこで切るの?身近すぎて 考えもしない」
タンナファクルーの由来や、あるあるネタを盛り込んだ実に軽快なダンス・チューンです。護得久先生は、これまでにもレモンケーキやマドレーヌなど沖縄の法事菓子の定番を楽曲のテーマにしていますが、ローカルの伝統菓子を取り上げるのは今回が初めて!
先生の魂の口説に呼応するのはユタ・大兼のぞみ。
「♪オバーの家に 常備されている それは少し湿気って 固くなっているよねビニール袋の裏に 少しへばりつくことあるよねそんな君が好きなんだ!君の名前を呼んだ タンナファ・クルー タンナファ・クルー Yeah!」
ユタ大兼のぞみさん「はじめて護得久先生とこうやって一緒に歌うということで、あの人にまず、負けないようにというところと、そして、タンナファクルーという沖縄で昔からあるお菓子を、私の、このユタですから、ユタとしてのパワーを使って、皆さんに改めて届けたい」
楽曲の誕生をきっかけに、世間の注目を集めそうな予感のタンナファクルー、その工場は、那覇市国場の住宅街にありました。創業135年の丸玉です。生地づくりから焼き上げまで、全て手作業でおこなっています。生地を揉んでいるのは、3代目当主の大田靖さん、原材料の県産黒糖は湿気を吸いやすいため、水加減には細心の注意を払います。
丸玉 3代目当主 大田靖さん「生地が繊細です。湿度によっても変わりますし。湿気を吸ってるときの黒砂糖もちょっと水っぽくなるんですよ。そのときに水を少なく入れるとかそういう具合にしてますね、一番気遣ってます」
タンナファクルーは、大田さんの曾祖父・玉那覇宏次朗氏が、1887年に考案しました。高価な宮廷菓子・クンペンを、庶民も楽しめるようしたいと、黒糖で代用したのが始まりです。
一風変わった名前は、色黒だった曽祖父のあだなで、「タンナファ」は「玉那覇」、「クルー」は色黒からきています。
丸玉 3代目当主 大田靖さん「私の祖父は、私が継ぎたいっていうことを話したときにわかったと。一切教えてくれませんでした。材料のあれも、祖父が置いてるやつを自分で測ってメモして、それだけです。やりながら覚えなさいと。見て覚えろと。超えるために祖父を、一生懸命頑張りましたね。いまだもう40年近くやってるんですけど、まだハードル高いですね」
大田さんは、先代からの技法にこだわっていますが、そのことが、丸玉の悩みの種にもなっていました。職人6人がかりで1日700袋を作るのがやっとで、増産を望む声にこたえることができないのです。
丸玉 大田由実社長「お試しは、やっぱりプレーンのタンナファクルーを食べてもらいたいじゃないですか」
大田さんの妻・由実さんは、丸玉の社長として今年5月にはECサイトをオープン。通販に適した少量パックの商品を開発するなど、多くの人に届ける方法を模索しています。
丸玉 大田由実社長「手作りなので、今後もどこまでたくさんの人に届けていくために、生産量とかも含めて増やしていけるかちょっとわからないんですけどやってみないとわからないんですけど、もう可能な限り変わらない味で残していきたいので、そこはちょっとやっぱりどうやって残していくかっていうことを今考えていますね」
由美さんは、戦前から戦後を描いた絵本に、タンナファクルーが登場していたことを知り、沖縄の文化として、次の世代に残したいと願うようになりました。
丸玉 大田由実社長「お手紙とか結構いただくんですよ、県外に行かれた沖縄の方とかに、すごい涙が出てくる嬉しい言葉とか結構いただくんですけど。本当に愛されてるんだなっていうのをわかってきて、小さな子供から、お年寄りまで、やっぱりこのまま変わらず愛されるお菓子で、変わらない味で届けていけたらないと思いました」
先月末、丸玉の工場を、FECの山城智二社長が訪ねました。完成したばかりの「タンナファクルー節」を聞いてもらうためです。
3代目当主 大田靖さん「ありがとうございます。すごいですね」FECの山城智二社長「どうでした?」大田さん「カメラ回ってなければ、体動いてましたよ」山城さん「ダメ出しとかないですか?」大田さん「ないです」山城さん「良かった~めっちゃうれしい」大田さん「本当によく調べていますね。歯の裏にひっつくとか」
FEC 山城智二社長「僕らの足元にはもう本当に宝物がいっぱい埋まってるんで僕らなりの、そのバイタリティというか表現で掘り起こして、古くから愛されている良さみたいなものを、今の人たちにも伝えることができるんじゃないか」
今回実現した、素朴なお菓子と沖縄のお笑いのコラボ。身近な宝物に光をあてた楽曲は、聴く人を笑顔にするとともに、伝統の美味しさを未来につなぐ力となります。