沖縄が生んだ伝説のロックバンドの映画が公開されています。
２０２２年９月１９日、那覇市の映画館シネマＱには多くの人が、ある映画を楽しみに集まっていました。
その映画とは、沖縄が生んだ伝説のロックバンド「紫」初のドキュメンタリー映画です。
野田孝則監督「本物のロックミュージックを楽しめるヒューマンドキュメンタリー」
メガホンをとったのは、沖縄の喜劇の女王・仲田幸子さんを主演に迎えた映画「なんくるないさぁ」が記憶に新しい野田孝則（のだたかのり）監督です。
野田孝則監督「まさか、自分が中学生の頃とかに聞いてた、あのバンドのドキュメンタリー映画を僕がやるっていうのは。生まれも育ちも内地の人間で、ただのロック小僧、ギター小僧、ロックキッズだったもんですから。紫って、あの紫ですか？っていうのがスタートです。」
紫のドキュメンタリー映画を手がけることになった野田監督が撮影中に感じたのは、音楽にかけるメンバー達の熱いエネルギーでした。
野田孝則監督「あれだけ個性的な人たちが集まってるんで、やっぱり人間としての紫を描きたいなというのがあった。ドキュメンタリーを撮っていく中で、ちょっとしたトラブルがあるとおいしいじゃないですか…あったんですよ。失礼を承知で僕はご本人達に言いましたけど、「中学生と変わりませんね」って言ったら「そうなんだよ」って言ってましたね。「曲を良くしたいんだ」「かっこいいステージをやりたいんだ」っていうところから中学生になっちゃうんですよね。並みのエネルギーじゃないですよ。」
映画公開を前に、紫のホームとも言える沖縄市のライブハウス、セブンスヘブンコザでメンバーにインタビューを実施、そこで見えてきたのは〝生涯現役〟で走り続ける、音楽にかける情熱でした。
宮永英一さん「音楽が好きだったんだ」
ジョージ紫さん「そうです。まさしくその通りです。一番はそれですよ。やっぱり音楽が好きだからやるわけだし、それをやってたら自分が楽しい、うれしい、幸せを感じる。だから、すごく生きてる意味とか、ライフエナジーみたいなのが湧き出てくる。だから、ずっと続けていけるところがあると思います。」
そんな紫が、初めて本土にわたって行ったライブ。ジョージさんは、その熱烈な歓迎ぶりに驚いたと言います。
ジョージ紫さん「一番最初に８・８、１９７５年の８月８日に大阪万博の広場で、いろんなプロのバンドがゲストとして出て、そのゲストの中で紫がトリだったんですね。それまではずっと後ろでひいてお客さんも見てたけど、紫がステージに登場すると同時にステージの方に駆け寄ってきたんですよ。僕はこれにビックリしたんですよね」
当時、復帰直後の本土では、今では想像もできないくらいの沖縄の人に対する差別があったと言います。
ジョージ紫さん「沖縄から集団就職で本土に働きにいった若い人たちもいっぱいいて、本土では差別を受けたり、アパートにも沖縄人お断りとか、いろんな虐げられたことがあったと思う、社会的に。だけど紫という沖縄出身のバンドが日本・東京に出て、それで人気も含めたいろんな形で1位になったとか、すごい人気が出たことで、彼らもすごい勇気をもらって、沖縄人で良かったねみたいな」
本土にわたった沖縄の人たちを勇気づけた「紫」という存在。野田監督は、そんなメンバーたちの今の姿を追いかけました。
野田孝則監督「レジェンドにインタビューしたりすると、「昔はね」とか、「あの頃はね」っていう話がほとんどになるんですよね。でも、もうそれはさらっと言って、なにせ「もっと良い曲を作りたい」とか「もっとギターが上手くなりたい」とか「最近の若い連中の弾き方を今俺勉強してるんだよ」とか、すげえと思いましたよ。70過ぎの方たちが誰1人後ろを向いていない。」
下地行男さん「ジョージが前に死ぬまで一緒にプレーしようと言ったんだけど、僕は死んでからも向こうでやる、向こうでも一緒にやるからねって、それはもう絶対に忘れない。家族にもそう言ってるから、僕が向こうへ行くときはギターも一緒に持っていくから。たぶん向こうにも待っている人がいると思う。」
ＪＪさん「ジミ・ヘンドリックス待ってるよ」
ジョージ紫さん「目標というよりもこれ本当にやれるとこまでやる。多分みんなもその気持ちでいると思うので。ステージでぶっ倒れるまでみんなでやってると思います」
訪れた人「最高でした。紫さんの魅力がいっぱいで、もう涙が出そうで」「終わった伝説じゃなくて、これからの紫なんだというラストが一番良かったです」
７０歳を超えてなお、今も現役でロックを鳴らし続ける紫の伝説はこれからも続いていきます。
紫のドキュメンタリー映画は、スターシアターズで公開中です。