アメリカ軍基地から派生する事件事故の時に必ず取りざたされるのが「日米地位協定」です。よく『不平等』だとか『治外法権』といった言葉が飛び交ったりする印象がありますが、どういったところに問題点があるのでしょうか。
濱元記者「罪を犯したアメリカ軍関係者を日本の法律で罰するという時に、日米地位協定が立ちはだかっていると言わざるを得ないという状況です。刑事裁判に詳しい琉球大学の矢野恵美教授はこの点を強く問題視しています」
琉球大学・矢野恵美教授「そもそも、日本国内で日本の警察が一時的に捜査をしたり、身柄を拘束したりできないというところにやっぱり(日米地協定の)問題があると思っている」
濱元記者「地位協定では、事件を起こした当事者が【公務中】だった場合『裁判をする権限がアメリカ側にある』と定められています。つまり『日本の法律が適用されない』ということなんです。
濱元記者「次に【公務外】だった場合です。そこから、身柄が日本側にあるのか、アメリカ側にあるのかで変わってきます。日本側に身柄があれば、日本側に裁判をする権限があり、日本の法律で罰することができます。ただ、警察が入ることのできない基地の中に当事者が逃げたようなケースで、アメリカ側に身柄がある場合だと、原則として『日本側が起訴するまで身柄は引き渡されない』ことになっています。『日本で起きた犯罪を日本の警察が円滑に捜査できない』というわけです」
濱元記者「特に、殺人や強姦といった、いわゆる【重大な犯罪】について『起訴前の身柄引き渡しについてアメリカ側は好意的に考慮する』とされていますが、結局のところ『アメリカ側の裁量次第』ということになっているんです」
国がアメリカ軍に提供している施設のフェンスを隔てて、身柄がこちら側にあるのか、あちら側にあるのかで捜査に違いが出てきてしまうというのは理解に苦しみます。
濱元記者「今回の事件は裁判員裁判になるほど重大とも解釈できるので、矢野教授は起訴前に身柄の引き渡しを求めてもよかったのではないかと疑問を呈していました」
矢野美教授「証拠っていうものが人の体に残ってることが多いわけですよね、性犯罪って。そうすると時間とともに散逸してしまいます。また、もちろん人の記憶、その犯罪をした本人であっても、人の記憶というのは変わっていってしまうものですので。(米軍側が身柄を管理した場合)過去に言うと(本国に)帰っちゃったこともあるわけで。今回そういうことがあったか聞いてはいないが、被害者のところに脅しに行っちゃうということが絶対にないと言われたらわからない。日本の警察が逮捕しているのとは違って」
アメリカ側に身柄があると事件の当事者がどんな状況に置かれているのか知らされないというのも日本側にとって不利な点の1つともいえます。課題山積の地位協定がこのままでいいわけなく、様々な視点で考えていく必要があると思います。