北中城村にある国指定重要文化財の中村家。その中村家で先月、貴重な体験ができる催しが行われたんです。いったいどんな催しだったんでしょうか。
目にも鮮やかな、美しい色彩の琉球宮廷料理の数々。朱色に輝く琉球漆器「東道盆(トゥンダーブン)」のなかに普段お目にかかることのない貴重な料理がずらりと並びます。
この食事を味わえる特別なツアーは北中城村にある国指定重要文化財である「中村家住宅」で行われた体験プログラムです。
企画の発案者は、地域の魅力を発掘し発信する役目を果たす、地域おこし協力隊員の篠田宇希(しのだ・ひろき)さん。横浜出身でオーストラリアやスイスなど世界各地で世界遺産のガイドを経験し、4年前に北中城村にやって来ました。
篠田さんは他にも、世界遺産の中城城跡を舞台にした「城(グスク)ヨガ」や、ホテルで琉球大学の講義を受けてからランチを提供する「ウェルネス大学」、仲順(ちゅんじゅん)・喜舎場(きしゃば)など北中城村内を散策するツアーを生み出してきました。
今回、中村家住宅で琉球王国時代の宮廷料理を食す企画のテーマは「一生に1度の贅沢」。
篠田さん「今回中村家住宅という国指定重要文化財を貸し切ってやるっていうのが価値高いと思う。その雰囲気を装飾や空気感を感じていただいて、300年前にタイムスリップしたような感じを体験していただけたら」
料理を担当するのは、暮らしの発酵ライフスタイルリゾートで総料理長を務める照屋寛幸(てるや・ひろゆき)シェフです。
照屋さんは沖縄の伝統的な食文化を深く理解して、調理法や味を受け継ぐための技術を身につけた人に与えられる「琉球料理伝承人」として活動しています。
照屋シェフ「お客さんに喜んでもらうのが生きがい、私自身もうれしい。(昔の方は特に宮廷料理とかは)沖縄にある食材で、いかにどうもてなそうかというのを色々と工夫しながらやってますので、この辺が伝わったらいいなと」
この日はモニターツアーとして行われました。県内に住む6人が参加して、一足先に企画の出来映えを体験しました。まず中村家にみられる沖縄の住宅の特徴などをガイドが紹介しながら進められました。その間、照屋シェフは朝ホテルで準備してきた料理を東道盆に盛り付けてゆきます。
中村家は母屋が18世紀の半ば頃に建てられたとされます。先の戦争で多くの建築物が焼失したこともあり、昔ながらの姿をしっかりと残す非常に貴重な木造家屋であるため、屋内で火を使うことは禁じられています。
メニューはターンム(田芋)のから揚げ、シシ(肉)かまぼこ、花イカ、ミヌダル、ビラガラマチという青ねぎ巻きなど。色も形も華やかなうえ、冷めても味が変わらないよう工夫されています。
琉球料理の根幹をなすものは「ウトゥイムチ」おもてなしの心。
照屋シェフ「イラブーは生命力の強い生きものなので長寿を願って最初に出して」
参加者たちが「チムシンジ」イラブー汁を堪能している間に東道盆の準備がされて提供されます。
ひとつひとつ丁寧に作られたおもてなし料理に舌鼓を打ちました。
参加者「元々琉球料理に興味があって来ました。東道盆は初めて。一品一品は母が作ることあるんですけど、セットでは(ない)。昔の暮らしを感じながらいただけるのが贅沢な気持ちになります」
参加者「ひとつの東道盆としての食事は初めて。(お友達に紹介したい?)友人たちに是非紹介したい。中村家でお食事が出来るっていうのはすごい」
参加者「非常においしかった。こういう施設で食べられたというのは非常にラッキーで光栄。滅多にない(笑)」
このほかに「庶民料理」としてゴーヤー料理やどぅるわかし、お刺身やラフテー、紅芋のうむくじあんだぎーなども提供されました。
県民が琉球料理の魅力を再発見し、琉球料理伝承人として面目躍如の活躍を果たした照屋シェフ。
照屋シェフ「それが私たちの使命だと思いますので絶やしてはいけないと思いますので、精力的に活動しないといけないのかなと思ってます」
篠田さん「文化財と飲食の組み合わせ、新しい形態の事業が我々のような観光事業者とか飲食店の垣根を超えた新しいクリエイティブな価値を生み出すものの模範になれれば」
宝物は私たちのすぐそばにあるのかもしれません。なかなか自由に旅行できない昨今、ディスカバー沖縄!ワッター島の魅力を今一度、再発見してみるのも良いものですね。