コロナ禍になって2年。変わっていく生活の中で今やすっかり定着したもののひとつに「オンライン」があります。オンライン会議やオンライン飲み会、オンライン授業と、オンラインでできることが増えていく今、その広がりと可能性に迫ります。
まん延防止措置が出されていた1月、観光客もまばらな沖縄美ら海水族館で始まったのは、パソコンやスマートフォンでウェブ会議やセミナーが実施できるアプリ・ZOOMを使ってよしもと芸人が水族館を案内するオンラインツアー。沖縄に来ることが叶わない県外の参加者に向けた「オンライン観光」です。
ありんくりん「オンラインって怖いね」「ウケているかどうか分からない」「ウケていることを信じてオンラインツアー頑張っていきましょうよ」
今回の参加者は東京にいるおよそ70人。芸人らしく笑いを交えながら水槽を巡り、水族館や生き物の魅力を紹介していきます。1時間に渡って行われた水族館初のオンラインツアーは、参加者にとっても充実した沖縄観光になったようです。
ありんくりん・クリスさん「オンラインだから反応が見られない不安はありますけど、チャットを通じて感想を聞けたのでそこで喜んでくれていることが分かったから良かった」
ありんくりん・りゅうたさん「僕たちはやっぱり芸人だから、目の前のお客さんを笑わせる仕事だったんですけど、このオンラインでやっぱり喜んでくれている答えとか返事とかをいただいてすごくうれしかった」
かつては結びつくことがなかった「オンラインと観光」。2019年には入域観光客が1000万人を超えた沖縄観光ですが、予期せぬ事態による観光客の減少で大きな打撃を受け続けている観光業界の厳しい現実がありました。
この2年、沖縄を訪れる観光客は感染者が減ればわずかに持ち直す傾向にありましたが、去年11月には海底火山噴火の影響で多くの海岸に大量の軽石が漂着。シュノーケリングツアーや船舶を使った遊覧ツアーなどが中止に追い込まれました。
さらに年明け早々にはオミクロン株の爆発的な流行で、修学旅行の予約キャンセルが相次ぐなど、沖縄の観光は幾度となく大きなダメージを受けてきました。
低迷にあえぐ旅行業界にあって芸能事務所や人気の観光地と手を組み、同社初のオンラインツアーを成功させたJTB沖縄。距離や時間など物理的なハードルを乗り越えられるオンラインでの旅行の先に見据えるものとは?
JTB沖縄・杉本健次社長「これはリアルな旅行、リアルな交流にとって代わるものではないと思っている。むしろリアルな交流とオンラインのいろんな体験というのは相乗効果で、それによってもっと豊かな大きな広がりを持ってくると思っている」
地域の事業者同士をつなぎながら、これまでとは違う立場で描く沖縄観光のあらたな魅力の構築。苦境の中でも商品を生み出す、旅行代理店としてのプライドがあります。
JTB沖縄・杉本健次社長「今回のコロナは10年先の未来を持ってきたと。本当だったら10年後ぐらいに訪れたであろう変化が今、目の前に広がっている。我々もそこに対してはきっちり対応していかなければいけないと思っている」
旅行業界があらたな観光の形を模索する中、いわゆる「メタバース」による観光支援も始まっています。
あしびかんぱにー・佐橋直幸さん「みなさんがそれぞれアバターとして参加してバーチャル内でのバーチャル観光ツアーみたいなものもできたりするので」
メタバースとは、ネット上に構築された仮想空間でアバターと呼ぶ自分の分身を介して他の利用者と交流したり、遊んだりできるオンライン空間のこと。
仮想空間に沖縄を再現した「バーチャルOKINAWA」では、屋台で実際に買い物ができるなどリアルとバーチャルを繋いでいます。
あしびかんぱにー・佐橋直幸さん「コロナ禍になったことで物が売れなかったりとか経済のダメージにつながっている部分が、実際に県産品を届けられたり、友達と集まって観光できたりおしゃべりできたりゲームをしたりといろんなことがバーチャル上で実現できる。沖縄に興味を持ってもらって、そこから実際にリアルな体験をしてみたいという形で沖縄への誘致につなげていければいい」
ウィズコロナの時代に生まれたオンライン観光。生活や社会環境に関する調査・研究を行っている専門家は、オンラインで楽しむ観光には3つの特徴があると考えています。
第一生命経済研究所・水野映子さん「1つはその場所に行く前に情報を収集したり行く場所を検討したりできるという効果。2つ目はオンラインの体験そのものを楽しむということ。バーチャルリアリティーの技術とかコンテンツがまだ少ないと思うけど、充実発達していけば今後も広がる可能性があると思っている。3つ目はリアルで前に行った場所にもう1回行く。昔行った場所を見て楽しんだり前に見られなかったものを見ることで、その土地のファンになったりする人も現れるんじゃないかと思う」
さらにオンラインはこんな現場にも進出。
はせば葬祭・長谷場正一さん「私が始めたサービスはオンライン参列です」
この会社が行っているオンライン参列は、告別式のライブ配信を通じて離れた場所にいても葬儀に参列できるオンラインを使ったサービス。画面に映りたくないという参列者がいることや、故人との別れは対面で行うべきという考えもある葬祭にオンラインを取り入れた理由とは。
はせば葬祭・長谷場正一さん「コロナの第1波の時にニュースで、居酒屋を経営している(東京の)方が不幸があったけど、身内から(沖縄での)葬儀には参列しないでと言われたというインタビューがあって、こんなことがあっていいのかと」
今ではコロナ禍に人生最期の時を迎えた故人、そしてその遺族の思いを叶えています。
はせば葬祭・長谷場正一さん「人生最期の締めくくりの儀式になるので、家族としてはきちんと送ってあげたいという気持ちが強い方が多いと思うので、それに対応できる葬儀社になりたいという気持ち」
様々な場面に広がるオンライン。その需要と可能性は今後ますます大きくなりそうです。