本土復帰50年を前にしても、一向に、負担軽減とならない基地の問題。ことしもアメリカ軍に起因するトラブルが相次いで発生し、自衛隊にも新たな動きが見られました。
QABでは、年間通しで、基地に関連する内容をお伝えしてきました。そのなかでも、辺野古新基地建設を巡る動きで先月、玉城知事が大きな決断を下しました。今、何が起きているのか、そして何が必要なのか。
玉城知事「不承認とする処分を行いました」
玉城知事は先月、沖縄防衛局が去年4月に提出していた、軟弱地盤の改良工事のための設計変更申請を「不承認」とする判断を下しました。
その理由は、軟弱地盤の安定性などにかかる設計に関して最も重要な地点の調査が行われていないこと。環境への影響を回避・軽減するための措置が的確に検討されていないことなどを挙げています。
しかし、国は対抗措置として、行政不服審査制度を用いて新基地建設を推進する内閣の一員である国土交通大臣に「審査請求」を申し立てました。
日本大学(地盤工学)鎌尾彰司准教授「私としましては軟弱地盤について、そこがですね、しっかりと調査ができていないんじゃないか。そういう懸念があると不承認の理由を読みとりました」
以前から、軟弱地盤の改良工事についてその難しさを訴えていた専門家に改めて問題点を伺いました。
日本大学で地盤工学を研究している鎌尾准教授。大浦湾側の改良工事について、軟弱地盤が広がっていることから難工事になるとして、改めて「地盤調査の必要性がある」と指摘しています。
鎌尾准教授「地盤調査がないことでいろいろな議論をしている。(国は)推定できるからいいだろうというだけでは、やはり、(県側は)納得できない。どうすれば納得するのかを考えますと、実際に地盤調査をやれば誰しも納得する」
県が「不承認」処分と判断した理由の中で、重要視していたのは軟弱地盤の改良工事において「最も重要な地点の調査がなされておらず、災害防止に配慮されていない」ということでした。
県の言う最も重要な地点とは、軟弱地盤で最も深い90メートルの地点、設計変更では「B-27」と記されている地点を指しています。県はこの「B-27地点」の調査がされていないことを問題視しているのです。
鎌尾准教授「この軟弱地盤が一番深いと言われてるB-27の地点、ここが調査がされていない。これを他の地点、場合によっては700mぐらい離れた他の地点から推定するのには少し無理がある。可能なら、やはり地盤調査をやっていただきたいというのが私の意見であります」
しかし、国はこれまでに行った他の地点の調査で推定可能であり、安全に配慮していると訴え、県の言い分は失当であると指摘しています。その強硬姿勢の背景にはなにがあるのでしょうか?
鎌尾准教授「(調査を)やらない理由が私には、よくわからない。たとえば、本当に、(費用が)高くてできないのか。費用は高いと思うんですよ、何千万だと思うんですけど、それはよくわからない」
記者「何千万だとしても?」
鎌尾准教授「安いよね」
記者「全体(の工費)から考えたら」
鎌尾准教授「1兆円だって言ってるんだからね」
辺野古新基地建設に係る費用はおよそ9300億円、工期は12年以上かかるとされており、軟弱地盤の改良工事のためには、7万本以上の砂杭を打つ必要があります。
鎌尾准教授は土木技術者の観点から辺野古の工事は不可能ではないとしながらも、追加調査をしないままに工事を強行すれば、費用も工期もさらに増えていくことになると懸念を示しています。
日本大学(土木工学科)鎌尾彰司准教授「私が思うに工事は不可能ではありません。そういう不可能に近い工事を可能にするのがこれまでの土木技術の積み重ねだと思います。国としては、自分たちの意見を通すのではなくて、沖縄から来た意見を真摯に受け止めて、じゃあ、沖縄県が心配していることをどういうふうにしたら、心配なくなるかっていうこともあわせて考えていただきたい。ぜひ私としては、さらなる調査、そしてさらなる県との協議をしていただきたいと思います」
辺野古新基地建設を巡り、追加調査の必要性を訴える県と調査は十分だとする国。互いの主張は平行線のまま来年以降、争いは法廷の場へと移る見通しです。