コロナの影響で、ことしも大きなダメージを受けた観光業など県経済。感染状況が落ち着き、経済の回復の兆しが見えてきたところに突然の「大量の軽石」の漂着でした。コロナに続く、もう一つの予期せぬ事態にどう立ち向かてきたのかをまとめました。
花城桜子記者「軽石が押し寄せマングローブ林に向かう川にも入り込んでいます」
名護市源河区・伊波實区長「この川は死んでしまうんじゃないかと正直思いました」
住民「ただただビックリあぜん。生まれて初めて見ました」
突然、私たちの前に現れた軽石。8月に小笠原諸島の福徳岡ノ場で海底火山が噴火したことが原因とみられています。
軽石が本島沿岸に漂着が確認された10月下旬以降、県経済に大きな影響を与えることになります。
花城桜子記者「止まっている船は軽石に囲まれ、まるで砂の上に止まっているようにも見えます」
辺士名漁港では、港内が軽石で覆われて漁に出航できず、連日、軽石をすくう作業が行われました。
国頭漁港・村田佳久組合長「とってもとっても、どんどんどんどん流れつく状況。一体いつ終わるのかという不安に駆られている」
同じ港内のいけすでも、大きな被害が。
OSC株式会社・躍場秀兵主任技師「(魚の)胃の中に石が入っていて、餌と間違えて食べてこれが原因で死んでしまっています」
いけすで育てていた「グルクマ」およそ2000匹が軽石をエサと間違え食べて死んでいるのが見つかりました。
今も、漁業への深刻な影響が続いています。
また、コロナが落ち着き、回復の兆しが見え出していた沖縄のリーディング産業にも襲いかかります。
観光客「結構服に付いたりしちゃったので、足とかにもまとわりついてビーサンとか結構痛かったので、ちょっと不快というか」
ホテルモントレ沖縄マリン部門・土門直司さん「きょうは漂着が始まって1番多いかもしれない。水面を見ても見ての通り灰色になっている。(来客者へは)ちょっと可哀そうかなっていうか申し訳ないっていう」
沖縄観光の目玉、ビーチやマリンレジャーが奪われた瞬間でした。恩納村にあるリゾートホテルでは、軽石の除去ために重機を導入し、本来のビーチを取り戻すための懸命な作業が続きます。
ホテルモントレ沖縄・横山寛支配人「軽石の状態を見ながら皆さまへアクティビティーの提供を行っていきたいという風に考えております」
そして、生活の場面でも、沖縄本島と離島を結ぶ航路に軽石が漂い、離島のライフラインが止まりました。
久高区・内間一浩さん「やっぱり、海を隔てているもんだから港に(軽石が)入り込んでくるとどうしようもないですよね。なるべく港に入らないような方法を取らないといけない」
港内に軽石が漂着したため、定期船の欠航が相次いだ久高島では、高齢者の生活への影響が懸念されました。
久高診療所・有銘春香医師「(フェリーが)長期的に来られなかった場合、リハビリの方やヘルパーの方が来られないと島民の方の運動能力ですとか、食事や入浴の介助の方にも支障が出てくるかなと考えておりました」
軽石被害について、県は災害復旧事業として、国に対して財政支援や軽石の回収処理に対する支援を求めました。国も「政府も地元の相談に応じて関係省庁が連携し対応している」と述べました。
玉城知事「(農林水産省からは)漁港内の軽石については災害復旧事業で対応し、港外いついては災害関連事業の流木災の適用ができないか水産庁で検討していると聞いております。(環境省からは)既存の予算でなければ補正予算を組んで、その予算対応はしっかりしてまいりたいとお話を頂きました」
軽石撤去のための人員が不足するなかで、週末になると、多くのボランティアが各地で撤去作業に参加しました。
SNSで支援を呼かけたのは、「ユーチューバー」沖縄サムライのMGこと宮里真司さん。
宮里真司さん「仕事できないわけじゃないですか、困っているんだなと、それでどうにかスロープだけでも(きれいに)できないかということで(企画した)」
この日集まった参加者は400人。みんなで一生懸命、2時間の作業で10トントラック10杯分の軽石を集めました。
また、一回で大量に回収できる機材の実用化に向けた取り組みが行われています。こちらは川底の土砂を除去する「サンドポンプ」。今回は、船着き場の海面に浮かぶ軽石を吸い取り、およそ1時間で10トントラック4台分の除去することができました。
しかし、除去したあとにも問題があります。軽石は、多孔質とという密度の小さい穴が無数にあり、沖縄に流れる着くまでに多くの塩分を含んでしまい、土に埋めることもできず、軽石の置き場に頭を悩ましています。
琉球大学工学部・富山潤教授「できるだけ大量に消費したいということがあると思うので、そうなりますとやはり土木の方の材料として使えればと考えてまして」
軽石を建設材料として活用できないか?着目したのは、琉球大学で建設材料学を研究する富山潤教授です。富山潤教授は、サトウキビの製糖後に出るバガスなどを組み合わせたコンクリートについて研究していて、今回、県から軽石の利活用として相談を受けました。
そして富山教授は、東京大学と企業が共同で開発した廃木材と廃コンクリートの粉に植物繊維を練り混ぜて作る「ボタニカルコンクリート」という資材に着目しました。
富山教授「沖縄の特徴を生かしたバガス繊維を使ったボタニカルコンクリートの研究と樹木チップ伐採した樹木を使ったボタニカルコンクリートという材料が作れるようになってきまして、それに軽石を粉砕して混ぜ込んで建設材料として使えないかと」
次世代の素材として環境に優しいと期待される「ボタニカルコンクリート」に、利活用には除塩が必要と言われている軽石をそのまま混ぜ込めないのか、その可能性を見出しています。
富山教授「こちらの場合は特に鉄筋を中に入れるとかそういうことを考えていないので、その場合だと除塩する必要はないと思っています」
富山教授は、利活用できる製品として縁石や公園などでよく見かけるインターロッキングブロックなどに活用できると考えています。
来年も除去方法や利活用について課題が残りそうな軽石。早く沖縄の美しい海を取り戻そうと、多くの人が動き出しています。
県はきのう、軽石に関する対策会議を開き、公募した軽石利活用アイディアについて今後の対応を話し合いました。45団体から88件が寄せられ、除草剤や吸着剤とする案やインテリアグッズのなどがあったということです。