第6波に備えた計画が取りまとめられるなど、新型コロナへの対策は予断を許さない状況が今もなお続いています。
県内では今年、感染が急拡大する流行の波に何度も見舞われました。次にやってくる波の影響をどうすれば小さくできるのか、患者の対応を続けてきた医師の話とともに考えます。
コロナ禍で迎えた初めての年明け。例年のような混雑はなく、賑わいを失った空港。参拝客の間隔をあけるため、線が引かれた初詣。私たちの新年の風景は様変わりしました。
帰省を含めた県外からの移入や会食などによって、年明けすぐに感染が急拡大しました。そのため1月20日から2月いっぱいまで県独自の緊急事態宣言の期間となりました。
さらにこの宣言があけた直後に第4波に見舞われ、再び感染が拡大。4月12日にまん延防止措置による歯止めはきかず、感染は収まりませんでした。5月中旬には緊急事態宣言の対象となり、県民生活に大きな制限が余儀なくされる期間が始まりました。
その後徐々に感染者数は落ち着き始め、宣言の解除も見え始めてきたところでやってきたのが、デルタ株の猛威でした。感染力が強く県内でも一気に置き換わりが進み、感染者数は爆発的に増加していきました。
玉城知事(8月1日緊急共同メッセージ)「いま、沖縄県内で確認される感染者数の人口比は全国ワーストで、海外諸国ではロックダウン相当のレベルです」
第5波のピークを迎えた8月は連日、3桁の感染者が確認され、8月25日には1日で809人の感染が確認される事態となりました。
椎木医師「私たちの目標は、とにかく倒れないでどうやって医療を提供し続けられるか、患者さんを受け入れられ続けられるかということを日々考えていた」
医療崩壊の危機が迫った第5波を振り返る県立中部病院の椎木創一医師。中部病院では最大およそ60床の新型コロナ病床を確保し、感染者の治療などにあたってきました。
あれから4カ月近くたち、今は病棟の一部を利用する程度に落ち着いています。感染者の病床は、ほかの入院患者とわけるため、陰圧のテントで区切られています。
病棟内には夏場に医療がひっ迫していたときの名残が残っていました。
椎木医師「ここに跡があるんですけど、これは先ほどのテントを張るときに使うものなんですけど、これが以前、病棟全部コロナの患者見ていたときはここに(テントが)立っていた」
テントを張ったこのエリアがどんどん広がってくることで、コロナの波が押し寄せてくるように感じたといいます。
次に椎木医師が案内してくれたのはICU、集中治療室です。ここでは新型コロナの患者のみならず、ほかの病気の患者、救急搬送されてきた患者も受け入れています。新型コロナの感染爆発で、このICUもひっ迫した状況になりました。
椎木医師「(Q:ICUはある程度余裕を持っておかないといけないですよね?)おっしゃる通りです。ICUは常に若干の余裕があるのが一番いいんですね。ですが、正直コロナが流行っているときはまったく余裕がない状態にまた次に急変の方が来てということで、それが現場的なストレス、負荷にはなっていました
受け入れられる数も病院の人員も限られる中、増加の一途をたどるコロナの患者。ついにはそのほかの病棟の診療や手術を制限する状況にまで陥りました。
椎木医師「軽症や中等症までであれば病棟を拡張して診る、例えば当院でも1病棟では足りないから2病棟目という対応はできましたけど、集中治療室を増やすのは正直難しい」
3月中旬に始まった第4波、そしてデルタ株によって起こった9月末までの第5の間、この期間、人口10万人あたりの新規感染者数が全国で最も多かったのは114日、緊急事態宣言の期間は9月末に解除されるまで5度の延長を繰り返し、4カ月以上に及びました。
そんな中、感染状況の改善に希望の光を見出したのがワクチンです。椎木医師も現場でワクチンの効果を実感していました。
椎木医師「医療現場的に一番強く感じたのは重症化しないということです。ご高齢の方が、昨年だったり今年の頭はかかったら本当に皆さん具合悪くなっていたのが、ワクチン2回打っていますという方が来ると、たしかに肺炎を起こしたりするけど軽く済むとか、これは歴然とした差だった」
県は10月末までに接種率7割を目指していましたが、いまだに達成しておらず、全国最下位となっています。そうした中、今後心配されるのはオミクロン株、そして第6波の到来です。
椎木医師「第6波、もちろんこれは株がいつオミクロンに切り替わっていくか日本の中ではまだはっきりしていませんが、諸外国を見るとオミクロン株がもし入れば非常に早い段階で切り替わっていくだろうと思います。そうなってくるとワクチンだけで予防するかからないようにするのは難しいと思う」
マスクの着用や消毒などといった、これまで続けてきた基本的な対策が今後も欠かせないとしています。
コロナ以外の感染症や病気も増加する冬場、年末年始は人の流れが活発になる時期でもあります。夏に経験した感染拡大を引き起こさないために、私たちが意識すべきこととはなんなのでしょうか。
椎木医師「ご自分たちの身を守ることが周りの人、自分の知らない人、社会を守る、医療現場で医療が必要な人が受けられるような形になる。そういったことに全部実はつながっているんですよね。そういったイメージを皆さんで共有できると、本当に強いコロナに負けない社会になるんじゃないかと思うんですけどね」