コロナ禍を打開する切り札となっている「ワクチン接種」は市町村で進捗状況にばらつきがあり、課題も多岐にわたります。
特にインターネットが使えない高齢者は予約さえままならないという大きな壁が立ちはだかっていました。高齢者に手を差し伸べ、ワクチン接種を滞らせないようにしようと、地域の青年会や医療機関が模索を続けながら奮闘しています。
豊見城市でワクチンの集団接種がおこなわれる会場では、急ピッチで準備が進められていました。
豊見城市福祉健康部・嘉数久美子部長「(高齢者の接種について)加速化をしているところで、7月の中旬~下旬までには終われるように取り組んでいます」
市は、先週から新たに集団接種会場を1カ所追加し、現在2つの会場でワクチン接種の加速化を図っています。しかし、対象となる高齢者からの予約はなかなかふるいません。
高齢者のワクチン接種を円滑に進めようと、サポート役を買って出た若者たちがいました。
比嘉記者「こちらの地域では、ワクチンの接種率をあげるために、地元の青年会がある秘策を用意しています。こちらでこれから何がおこなわれるんでしょうか」
上田山川青年会・仲程一副会長「ワクチン接種の予約代行をします」
公民館放送「インターネット予約にお困りの方がいらっしゃいましたら、接種券を持って集会場へお越しください」
上田山川地区は、およそ200世帯のうち、半数が65歳上の高齢者世帯です。市のワクチン集団接種がはじまって、一番の悩みは「予約が取れないこと」でした。
高齢者「午前中、何十回かけてもとらなくて、それでもう諦めて」「インターネットを繋いでいないもんだから、電話でやっても通じなかったんですよ。だから朝からずっと8時なるの待ってからずっと。もうやらないでいいさと諦めていました」
多くの高齢者が「ネット予約」に苦戦を強いられていたのです。
そこで青年会が計画したのが「予約代行」でした。接種予約の受付け日に合わせ、インターネットでの予約を手伝ってあげます。
一緒に予約の画面を確認しながら、希望する日時、会場などを入力します。ワクチン接種に行きそびれないよう、日付など手続きした内容を書いた紙も用意しました。-
青年会では、これまでに2回予約代行を実施し、50人の予約をサポートしました。
上田山川青年会・伊佐健次会長「高齢の方が多い地域ですし、先輩方がはやく安心して生活できるのであれば嬉しいと思います」
一方、接種会場に行くことが難しい人をサポートする医療チームがいます。友愛医療センター「巡回接種チーム」です。
豊見城市と連携して、先月中旬からほぼ毎日、高齢者施設や障がい者施設を訪問してワクチンを接種しています。この日訪ねたのは、市内の老人ホームです。
到着するやいなや、ワクチンの充てん作業にとりかかります。メンバーは感染制御管理室と看護部で編成されたベテランたち、15分ほどですべての準備が完了しました。
医師の問診が終わると施設職員が接種ポイントへ誘導します。この日は、施設の入居者23人と職員22人、あわせて45人の接種を受けることになっていて、1つのフロアに大勢が待機しているにもかかわらず、人の流れは実にスムーズです。
感染制御管理室・大嵩昌子看護師「施設の方には、入所者の誘導をお願いしているので、車いすの方の誘導や歩ける方の誘導をしてもらうことで、よりスムーズな接種ができるかと思います」
老人ホーム順風苑・諸見里由恵さん「車いすの方も半数近くいらっしゃいますので、介護タクシーを呼んだり、色々手間ひまがかかる中で、先生方がここに来ていただくということで、実際に接種後も、一時見守りもしていただけるので、本当に安心している」
準備から片付けまでで、およそ2時間。施設側に負担をかけず、コンパクトにワクチン接種をできる点が巡回接種のメリットです。
高齢者を取り残さないという強い思いのもと始められた「巡回接種」と「予約代行」、地域や医療機関がそれぞれ、できることを模索していく姿勢こそ、コロナ禍を切り抜ける一助となりそうです。