パソコンやタブレットなどを用いて行うオンライン授業。コロナ禍で教育現場におけるデジタル化は一気に加速しました。充実した学びをどうやって離れた相手に届けるか。教育の現場は頭を悩ませながら、オンライン化の道を模索しています。
オンライン授業を経験した学生「最初は戸惑いがあって、やりづらかったんですけれど」「一人暮らししている友人は家にWi-Fiない子もいて、いちいちカフェいったり」「先生によって授業がバラバラだったり、使うアプリもバラバラだったり、授業の質も一定じゃない」
学生から厳しい声が上がるオンライン授業。コロナ禍で一気に普及しましたが、クオリティーをいかに保っていくか。課題は少なくありません。
去年、沖縄大学ではオンラインに切り替えて、例年通り4月上旬から授業を行いました。
沖縄大学・小野啓子副学長「授業に接続できるという状態をキープするというのが第一の目的。有志の先生方が自分たちで動いてくれてマニュアル作ったり、情報共有のためのプラットフォームを作りはじめていた。スピード感をもって」
このマニュアルは、通称大城マニュアルとよばれ、授業動画の撮影に必要な機材などについてまとめられています。
マニュアルを作った大城淳准教授「遠隔で(授業)をやるなら、こういうソフトウェアや機材が必要だというのを海外の事例をみていたので参考にして、みんなに伝えていた」
沖縄大学では大城マニュアルをもとに、専任・非常勤問わず、大学で教鞭をとる講師全員を対象としたオンライン授業を行うための講習会を3月から4月にかけて開催したことで、スムーズにオンライン授業へと移行することができたといいます。
学びをとめないための連携は学内にとどまらず、学生がオンライン授業を受けるために必要なものを企業からの支援でまかないました。
マルチメディア教育研究センター・儀間真太さん「沖縄ツーリストさんがコロナ禍で観光客が減少しているなか、安価にレンタルできますというご厚意がありましたので、急遽中古のノートパソコンを調達して、約100台を希望者に貸し出しを行いました」
学生に貸し出しているモバイルルーターは30台で、1台あたり毎月およそ3500円の通信料がかかり、その費用を大学が負担しています。
より良い授業を行うため、撮影ができる教室が整備され、コロナの長期化にも対応できるよう、対面とオンラインのハイブリット方式も試験的に始めています。
大城准教授「半分教室、半分遠隔。ライブ中継もしつつ、撮った動画を少し編集してあとから配信する」
コロナ2年目の今年は、およそ7割の授業をオンラインで実施しています。大学構内ならどこでも快適にオンライン授業を受けられるように、インフラとしてのWi-Fiを強化しました。
今月7日から、2度目の休校期間となった那覇国際高校では、教科の特性などに合わせて部分的にオンライン授業を導入しています。
那覇国際高校・具志堅加奈先生(世界史)「最初はだいぶ機材を動かすのも慣れなかったのですが、触っていくしかない。使っていかないと、いつまでたってもスキルはアップしないので。本当に『習うより慣れよ』です」
ここは2年生の物理基礎の授業です。ビデオ会議システムを使って、生中継で授業を進めています。
那覇国際高校・濱元良人先生(物理)「せっかく同時配信ですので、本物の道具を見せて、あとは長くならないように、端的に短い時間で教えようと思っています」
この日が2回目の双方向授業という担当の濱元先生。オンラインだとラグがあり、普段の授業と比べると、内容を減らさざるを得ないと言います。
濱元先生「(Q:生徒からの反応もあるほうが、ないよりはやりやすいですか?)そうですね。反応があるので、理解しているかどうかは把握しやすいです」
教科や教師によって方法は様々で、世界史を教えている具志堅先生はYouTuberさながらの授業を展開しています。
具志堅先生「YouTubeにアップすることによって、容量食わないし、生徒たちが家からスムーズに見やすくなるという事情もあって、この方法を使っています。ときどきこういうのも入るんです。音がね(チャイム音)」
休校期間が明けても、対面授業の補助として、動画や音声データを生徒に公開しています。また、生徒との連絡ツールを使って、定期テストや模試の問題、解答なども見られるようにしました。
具志堅先生「繰り返し学習したり、あるいはもうちょっと先取りで学習したいというときに、スライドとかあったら、本人たちは助かるかな」
オンライン授業の腕を上げても、生徒側にオンラインの環境がないと、取り残されてしまいます。取り残される生徒を生み出さぬよう、教室の一部を開放し、学校所有のタブレットを貸しだして、学校でオンラインの授業を受けられるようにしています。
那覇国際高校・上江州隆校長「コロナ禍で休校になっても学びは止めない。特に全国は休校になっていませんので、沖縄だけが学習を遅れてはいけないということで、本校でもできることをしっかりやっていこうということで、こういった形で今進めているところであります」
オンラインで授業をできても、学校でないとできないこともたくさんあります。
上江州校長「体育祭ですとかそういった大きなイベントはおそらく、とても楽しみにしているかなと思うんですけども、そういったものが延期になったり、縮小されたりというところで、やっぱり生徒たちの学校の楽しみが少し奪われてきているという感じがします」
コロナ禍によって求められるようになった教育現場のデジタル化。現在、生徒と学校、その両方に金銭的、物理的な負担がのしかかっています。学校生活と感染対策をどう両立していくか。学びを止めないための模索が続いています。