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リアルで巨大!という圧倒的なインパクトで注目されているレプリカがあるのをご存じでしょうか?楽しい・面白いをモットーに、細部にこだわり抜いて「ものづくり」に没頭する、ひとりの職人の姿を追いました。

大人の顔より巨大な食虫植物!わずか数センチの世界に表現された戦前の世界。コザのロック魂を体現した、羽の生えたギター。大迫力で本物そっくり!? でも何だか、ちょっと「クセあり」の作品の数々。

沖縄市で看板製作や特殊造形を手がける「OBJET(オブジェ)」の会長、徳平國広(とくひら・くにひろ)さんが作ったものです。この道40年以上!「ものづくり請負人」と称する國広さんの最新作は、熱帯ドリームセンターで見ることが出来ます。

虫どころか人まで食べてしまいそうなくらい巨大な「ハエトリソウ」そして「ウツボカズラ」の2つが、食虫植物の仕組みを伝えるために展示されているんです。どちらもその大きさはさておき、まるで本物そっくり。

「面白い」を形に!リアルなオブジェの職人魂に迫る

熱帯ドリームセンター中川綾乃さん「さいしょ見たときは本物ですかって人もいらっしゃるので、レプリカですよって説明しやすいようにって、やっぱりわかりやすいですねって話をよく。お子さんはこう食い入るように見てくれて、とても楽しんでいただいていると思います。」

徳平國広さん「食虫植物って見たことないし興味もないですからね、一体なんぞやっていうところから始まって。実物のサンプルをみながら裏はどうなってるんだろうとか、中は腐った昆虫がいるんだとかよく見ながら。」

食虫植物の制作は初挑戦とあって、生態の研究やデッサンにはじまり、完成までは1つで約1カ月を費やしました。食虫植物の仕組みと特徴を忠実に表現しただけに留まらず、中に取り込まれた虫が「溶けかけ」ているのは國広さんのアイデアです。

徳平國広さん「楽しみながら出来ましたね。きりがないというか深い、そこらへんですね。もうちょっと腕を磨かんといけんなと。」

「面白い」を形に!リアルなオブジェの職人魂に迫る

國広さんは沖縄市で看板製作を行う「コザ工芸」の2代目として生まれ育ちました。でも元々は家業を継ぐつもりはなかったといいます。

徳平國広さん 「デザイナーかイラストレーターになりたかった、親父が看板屋やっていたので、親父の作業服みると格好悪いなと。俺はもっと格良くナウい職業をしたいということで東京いって。」

東京のデザイン学校を卒業し、沖縄に戻ってからはデザイン事務所などで働きましたが、結局その道では生活できませんでした。父親に頭を下げ、看板をつくるところから修行をはじめ、再スタートを切ることになったのです。

「面白い」を形に!リアルなオブジェの職人魂に迫る

町やCMで見たことのある あんなものやこんなもの、小さなものから大きなものまで、これまで手掛けた作品は600点以上にも及びます。そんな國広さんの「代表作」とも言える作品が与那原町にあります。

徳平國広さん「情景ジオラマって言って、実際のジオラマとはちょっと違う、昔の生活だとか実際にはなかったものがある。ちょっとデフォルメした。」

戦前、那覇ー与那原間を結んでいた「軽便鉄道」。その開通100年を記念して7年前に建てられた軽便与那原駅舎資料館。ここに展示されている、当時の様子を復元させた「情景ジオラマ」を制作したのです。

徳平國広さん「一番大変だったのは人間ですね。(何人くらいいる?)確か200人くらい。」

馬が概ね1cm、人にいたってはわずか数ミリサイズ。とても小さな中に一体一体、髪型や服装に至るまで個性が表現されています。

徳平國広さん「(途中で嫌になったり?)本音をいうとそうですね。かなり神経使います。完成したとき達成感が。これまでの疲れがいっぺんに吹き飛びます。やり遂げた感はかなりありますね。」

「面白い」を形に!リアルなオブジェの職人魂に迫る

工房ではものづくりに情熱を注ぐ國広さんの背中を見ながら2人の息子も日々、腕を磨いています。今は3代目の彼らが看板などの製作を行い、國広さんが特殊造形を担っています。

徳平広宣さん「シンプルにみて面白そうっていうのがファーストインパクト。根本に楽しいのが一番いいよねっていうのがあって、こうしたら面白いんじゃないとか、やさっ!って。」

彼らの「ものづくり」は「楽しい」「面白い」がキーワード。それにしても仲が良い様子。広宣さんにとって父・國広さんは超えるべきライバルなのでは?

徳平広宣さん「ライバルと見て貰ったらうれしい、キャリアが全然違うのでいい師匠。一緒に酒飲みながら話して。こんな失敗やったとか教えてもらっていい先輩。」

「面白い」を形に!リアルなオブジェの職人魂に迫る

徳平國広さん「(ひとつの括りではなくて)造形だったり、絵画だったり、ジオラマだったり、レプリカだったりのものづくり。そういうの楽しいんだよ、それでものが食えるんだよっていうのを若い子たちに教えたいなっていう、のがある。俺たちはアーティストじゃない、商業美術だって、お客さんから すごいの出来たね、面白いねって言われるのが一番のよろこびじゃないかな。」

徳平広宣さん「こっちはクオリティの高いもの作りたい、僕なんかは儲かるもの作りたい、お互い歯車が合ってんのかな?」

いかに自分たちが面白いもの、そして人を楽しませるものを作るか。ものづくりにかける思いは親子の中に脈々と受け継がれています。