長引くコロナ禍は、子どもたちの生活にも大きな影響を及ぼしています。保育園や学童クラブ、児童館などを運営する人たちは、感染対策とともに子どもの居場所を守るための努力や工夫を続けています。
その中で、勉強会や運営者同士の連携を通して感染症対策ガイドブックが製作されました。社会に声を上げられない小さな子どもたちの権利をどう守っていけるのか。ガイドブックに込められた関係者の思いと模索を取材しました。
無邪気で元気な子どもたちの姿。触れ合ったり、遊ぶことを通して社会性を身に着けることは必要不可欠な事です。しかしコロナ禍においてその様子は、密を避けられていない、感染の恐れがある、ともとらえられます。
みどり町児童センター・山城康代館長「もし感染したらどうしようとか、(子どもの)遊びが大切だから密は避けられないとはいえ、感染したときのことを考えると、すごく怖いところはある。」
コスモストーリー保育園・天願順優園長「密を避けるというところ。でも子どもたちには来ないで、集まらないでという制限をすると、かえって子どもたちにとっては不安になってしまうのではという課題があった。」
保育園や児童館、子ども食堂などは県や市町村から示されている新型コロナ対策を基に活動していますが、その規模や自発的にマスクや感染予防ができない小さな子どもの数といったそれぞれ異なる現状への対応に頭を抱えています。
国場児童館・山崎新館長「県内の学童・児童館だったりに(情報を)提供していきたいと勉強会を開催した。」
去年12月、県内の子どもの育ちに関わる現場の人たちが、コロナ禍での疑問や悩みをアンケートにまとめ、新型コロナ対策に当たる医師を招いての勉強会が行われました。
参加者「運動するときにマスクを外すというリスクは、どう考えて私たちは対応したら良いか?」
参加者「子どもが10時間以上マスクをつけているので、顔の表情の認識というところが(保育スタッフの)経験として不足してしまうのではないか。」
中部病院・高山義浩医師「基本の感染対策は、飛沫と接触を予防するというところ。(マスクを)できる子にはきちんと教育の意味もあるし、覚えてもらうような努力をしましょうという話をした。答えのない部分が多い。子どもたちは本当に予測不能な動きをするので、感染対策を心掛けながら(子どもたちを)守る様子を、むしろありがたいと一人の親として思った。」
この勉強会などをベースに、子どもの育ちの現場でのガイドブックが製作されました。
部屋を常に換気することや、子どもと大人の食事場所を分けることを始め抑えるべきポイント、そして事業者からのアンケートで寄せられた、マスクをうまくつかえない小さな子どもへの対応、部屋の消毒、除菌の頻度といった質問へのアドバイスなどが記載されています。
また感染状況で更新されていく情報をチェックできる国や県、日本感染症学会などのホームページがQRコードで紹介されています。
パンフレット5000部とリーフレット7万5千部は、県内の保育園や学童クラブ、児童館などに配布されました。アンケートを取りまとめたNPO法人のホームページからダウンロードできます。
NPO法人沖縄県学童・保育支援センター・伊波奈津美さん「(保育園や子ども食堂など)事業の垣根を越えてつながり合うこと、子どもということを中心につながりあった上で、いまできることを探していく。」
ガイドブックを取りまとめた山崎新国場児童館長「子どもが大人に対して社会に対して発信するという窓口がない。子どもに関わる大人たちからの共同メッセージを出す窓口が必要。これは行政だけでなく、現場の僕たちがつくっていかないと。」
コロナ禍で子どもの遊びや学びの場をどう守れるかが、子どもの育ちに関わる事業者のスタンスです。
うるま市のみどり町児童センターは、学童クラブや児童館、子ども食堂とさまざまな役割を果たしています。
子どもたち「(Q.どんな時間が一番楽しい?)遊ぶ時。ドッジボール!」
子どもたち「(Q.学童に来られなかった時は?)いやな気持ち。開いていてほしい。」
素直な感情で動く小さな子どもたちに、コロナ対策を大人と同じようには求められないと、山城康代館長は話します。
みどり町児童センター・山城康代館長「子どもたちは不安になると私たちにくっついてくる。助けを求めてきたりとか。遊びの中で子どもたちは社会性を学んでみたり、友達との関わり方、将来大人になった時に人ととの関わり方を学んでいる中なので、そこを(コロナ対策で)取り去るということは、子どもたちの発達上の問題があるのではないか。」
みどり町児童センターもガイドブックの作成協力や、配布を通してコロナ対策との両立を図っています。
みどり町児童センター・山城康代館長「学童保育は国からの指針もあり、働いている親を支援するための施設なので受け入れて欲しいということが前提にある。児童館は無料で(子どもたちが)さまざまなところからバラバラに来る。児童館でも閉めるではなくて(対策を)やりながら開けていく。開けていく方法を考えていくというところでは、ガイドブックは助かるなと思っている。」
同じうるま市にあるコスモストーリー保育園。0歳から5歳児まで140人ほどの子どもたちが通っています。仕事や家事に追われる保護者にとってコロナ禍の育児は頭の痛い問題です。
お母さん「自粛中は子どもたちはずっと家に居てストレスで。もう泣くのがすごくて、それで保育園が開いていると助かる。」
お母さん「マスクだと子どもはどうしてもきれいに(装着)できないから、こちらが何回も注意して、ちゃんとやろうねと言わないといけないが、それが子どもにとってストレスかなというところはある。」
屋内外を広く解放するなど、子どもたちの遊びの場を維持する工夫をしている天願順優園長は、コロナ禍の保育を改めて見つめ直す機会にしたいとガイドブックに寄稿しました。
コスモストーリー保育園・天願順優園長「できるだけポジティブなところも一緒に共有出来たらという思いで文章を書かせていただいた。保護者の方にとっても仕事に行くときに、この(乳幼児)の年齢は留守番することも難しいし、できるだけ園でも感染対策を行いながら、一方でも子どもたちの安心した生活や遊びを保障していけるように、保護者のことも支えていけたらと思う。」
子どもの育ちの現場に関わる人たちも不安を抱えるコロナ禍ですが、子どもの成長に欠かせない遊びや学びを守るために、連携してその大切さを広く知って欲しいと考えています。