展示内容を見直し新たなスタートを切ったひめゆり平和祈念資料館。2度目のリニューアルだったのですが、今回は「戦後生まれ・戦争を体験していない職員」で行った初めてのリニューアルでした。
そこには様々な葛藤と、それを乗り越え「自分たちが次世代に伝えていく」という、強い思いがありました。
1989年の開館以来、2度目のリニューアルオープンを迎えたひめゆり平和祈念資料館。「戦争からさらに遠くなった世代へ」をテーマに、若い世代にも自分事としてとらえてもらえるようにイラストをふんだんに使い、動員前の学校生活の写真などを多く取り入れました
資料館を訪れた人「戦争というものが想像以上に無残なことだったというのをまざまざと感じた」
資料館の1度目のリニューアルは2004年。元ひめゆり学徒らの高齢化が進むなかで、たとえ、直接語ることができなくなっても平和への思いを次世代に伝え続けるために、元学徒らが中心となって展示が見直されました。
そして今回、2度目のリニューアル。1度目と大きく異なるのは、その展示内容だけでなく「戦争を体験していない世代」でのリニューアルだということです。
リニューアルオープンを4日後に控えた先週木曜日(4月8日)、資料館では学芸員らが展示に使うタッチパネルなどの確認作業を行っていました。若い世代に少しでもわかりやすく。ギリギリまで議論が続きました。
ひめゆり平和祈念資料館・普天間朝佳館長「世代が変わっていく時には伝え方も変わらないといけないんじゃないかということで、リニューアルしようという方向で進んできたんですけれども」
ひめゆり平和祈念資料館学芸課長・古賀徳子さん「やっぱり見てわかりやすいっていうことがすごく重要になってきているので、そのためにどういう表現がいいのかということを試行錯誤してきました」
戦争の歴史の語る「モノ」についても、その展示の仕方に工夫を凝らします。
ひめゆり平和祈念資料館説明員・尾鍋拓美さん「リニューアル前はこういう物に名前を書いていなかったんですよ。今回は誰々の洗面器とか、これだったら津波古ヒサの時計とか、名前を入れて、より人を感じてもらうようにしようって」
ひめゆり平和祈念資料館学芸員・前泊克美さん「『くし』もこれはきれいな形で残っていますけど、多分身だしなみを整える余裕も全然なくなっていくんですけど、持っていった洗面器や歯ブラシも使う余裕がなかったということなので」
試行錯誤を重ね、新しく生まれ変わっていったひめゆり平和祈念資料館。当初は「イラストが多くなることで戦争の悲惨さが伝わりにくくなるのではないか」など、リニューアル内容に葛藤や不安もあったといいます。
それでも、リニューアル前日に資料館を訪れた元学徒らは…
元ひめゆり学徒隊・仲里正子さん「このイラストとこの説明とこれ(図)が一緒になってわかりやすい。こういう形でみんな逃げ回りながら、こういう犠牲者が出たんだよっていう、これだけまとまってわかりやすいんじゃないかなと。私もこの中にいるからさ」
戦争を体験していない世代が作った新たな展示を感慨深げに見つめていました。
元ひめゆり学徒隊・島袋淑子さん「やっぱり今戦争を知らない人たちが、こうやってわからないことをわかるようにという掲示に変わっているなと思って、大変ありがたく思いました」
元ひめゆり学徒隊・本村つるさん「私たちができなかったことを今の若い人たちが頑張ってくれたと思うと、ただただ感謝するだけです」
そして今回のリニューアルで最も大きく変わったのが第5展示室。テーマは「ひめゆりの戦後」です。
普天間館長「彼女たちは戦後、長い間自分の体験を語ることはなかったんですでも、戦後何十年も経った後に、たくさんの人の心から戦争のことが忘れられていってしまうということを感じるようになって、このひめゆり平和祈念資料館を建てたんです。そういうことを知っていただけるような展示にしたいなとは思っています」
古賀さん「当事者が自分たちのことを自分たちで伝えるということはやっぱり難しいことなので、これは戦争非体験者の職員だからできた展示ではないかなというふうに思っています」