※ 著作権や肖像権などの都合により、全体または一部を配信できない場合があります。

「クラウドファンディング」という言葉をご存じでしょうか?耳にしたことがあるという方は多いかもしれませんが、ネットを通して多くの人から資金調達を応援してもらう取り組みです。

高校生たちが地域の病院や保育園などにプレゼントしたあるものがきっかけで、このクラウドファンディングの輪が広がっています。社会に貢献したいという高校生とその思いをサポートする人たちを取材しました。

地域への感謝をペダルに乗せて 美里工業

沖縄市の美里工業高校。学校玄関には文化系、体育系と生徒たちの賞状やトロフィーが数多く展示されています。こちらはアイディアロボットコンテストのもの。美里工業機械科は県大会6連覇中と素晴らしい結果を残しています。

その機械科では、授業の中で取り組んだ課題研究を一本の動画にしました。3年生13人が授業で学んだ技術を生かして作り上げていったのは、手を使わずに手を消毒することができるスタンドです。

地域の人たちの役に立つものをと、学校近くの病院や保育園など10カ所に製作したアルコールスタンドを贈呈しました。

地域への感謝をペダルに乗せて 美里工業

携わった3年生たちは授業で出た廃材や、機械の部品を活用しながら試作品をつくり、そこからさまざまな工夫が生まれたと話します。

比嘉はやとくん「普通は上から(手で)押すが、僕たちはひとつ変わった感じでやろうと思って、他と違う(足踏みで押す)ペダル式に結果至った。(手で)触れていないのが一番のメリット。(買い物袋などで)手がふさがっていても足で押せるので、それもいいところだと思っている。」

安慶名海寿さん「最初溶接でほとんどくっつけていたが、そうしたらバラしにくいし形がゆがんだりするので、できるところはネジで簡単につくった。」

森田悠人くん「(ボトルの)大きさが違ったりしていたら、ねじを緩めて高さを変えて、違うボトルに対応できるようにする。」

機械科のメンバーは贈呈するだけでなく、使ってみての感想も聞き取り、改良したものを再び届けたりしました。

宮城歩くん「アンケートを配って感想などを聞いたが、保育園だと小さい子が珍しがって、自分たちから消毒してくれるようになったとか、そういう話を聞けたりした。」

地域への感謝をペダルに乗せて 美里工業

3年生の思いの背景には悔しさがあります。おととしまで県6連覇中だったアイディアロボットコンテスト。先輩たちに続けと7連覇を目指していた去年の大会はコロナ禍で中止に。いまの3年生たちは挑戦の場へ立つことすらできませんでした。

伊盛雄大くん「去年先輩たちがロボット(コンテスト)で優勝し、そういうものを見て自分もロボット班になったので、最初は(大会が)できないとなってすごく残念だったが、このアルコールスタンドを作って地域の方に喜んでもらえたのでそれは良かった。」

その思いを地域の人たちも受け止め応援しています。スタンドを贈呈され活用している学校近くの愛誠クリニック。中田安彦(なかだ・やすひこ)院長は、美里工業の校医を長年務めています。

中田安彦院長「耐久性がいい。工業高校のすごくいいところだと思う。いまロボットコンテストが中止になっている工業高校の人たちも(状況の)暗い中、いろいろアイディアを出している。明るい未来の一つかなと思った。」

地域への感謝をペダルに乗せて 美里工業

その中スタンドづくりにもピンチが訪れました。今後も作り続ける費用が学校の予算では足りず、資金造成のためのクラウドファンディングを行うことにしたのです。資金を提供してくれる人への返礼品にと、こちらも地域の人たちがサポートしています。自家製麺が人気のアワセそば食堂は、通信販売で全国からの注文を集め、コロナ禍を乗り切ろうとしています。

武原康博さん「(クラウドファンディングの)返礼品で沖縄そばはできないかという話があった。息子が美里工業を去年卒業して、娘も在学中ということもあって、そういうきっかけもあってより協力したいということ。」

クラウドファンディングに協力しているもう1軒が、元お米屋さんという、米八(こめはち)そば。店主の永山さんはそばだけでなく、洋服の通販などでも知られるアイディアマンです。

永山賀朗さん「生徒さんもよく来るし、親御さんといった方々もいらっしゃる(美里工は)身近にある高校。」

高校生のボランティア精神を培う助けになりたいと考えています。

永山賀朗さん「誰かが助けてくれる(クラウドファンディングが)成功することでみんなの経験になる 。今後の成長につながっていくと思っている。」

地域への感謝をペダルに乗せて 美里工業

卒業を間近に控えた美里工業高校機械科の3年生。この1年で経験した悔しさ、喜び、そして感謝の気持ちをペダルに乗せて後輩たちに託したいと考えています。

中山喬仁くん「これから後輩の代に引き継いでいって、これよりもっといい作品をつくれたらいいなと思っている。」

アルコールスタンドのクラウドファンディングは、サイト「レディーフォー」にて、今月26日まで受け付けられています。このクラウドファンディング、実はすでに口コミなどで広がって目標金額を達成していますが、引き続き26日まで受け付けられています。生徒さんたちを応援したいという熱い応援の思いを感じます。

3年生にとっては嬉しい反面、後輩たちがスタンドづくりに忙しくなりすぎると、今年のロボットコンテストに影響するのではという心配もあるそうですが、協力し合って両立してくれることを願いたいなと思います。