保育園の屋根で米軍ヘリの部品が見つかって以来3年間、原因究明などを求めてきたお母さんたち。なぜ、その願いは今も叶わないのでしょうか。
オンラインイベントに向けて撮影に励んでいたのは、チーム緑ヶ丘のお母さんたち。「子どもたちを安全な空のもと遊ばせたい」という思いで始めたこのイベントも、今年で3回目。新型コロナでイベント開催が難しい今でも、発信しなければいけない理由がありました。
宜野湾市にある、緑ヶ丘保育園。この地で56年間、子どもたちの成長を見守ってきました。事態が一変したのは、3年前の12月7日、午前10時すぎ。子どもたちが遊んでいた園庭までわずか数十センチの保育園の屋根の上で、アメリカ軍ヘリの部品が見つかったのです。
アメリカ軍は、CH53ヘリの部品だと認めましたが、「落下させていない」と言い張っています。
園長や保護者らは「チーム緑ヶ丘」を結成し、事態の原因究明と再発防止、園上空の軍用機の飛行禁止などを国、県、市そして県警。思いつく限りの機関に繰り返し訴えてきました。しかし、3年がたっても、要望は1つとして叶えられないままです。これまであらゆる記録を必死に集めてきた、神谷園長。
緑ヶ丘保育園・神谷武宏園長「保育園の向かいに公民館があって、公民館のカメラで園上空を飛んでいるのがわかっている。ドーンと激しい音で園庭にいた先生や、隣でゲートボールをしていたおじいちゃんたちにも目撃者がいます。こういう証拠の品がそろっているんです。県警は基地に関係なく子どもたちの命が脅かされたことに対してしっかり向き合って調査していただきたい。」
こうした中、県警が再現実験を行っていたことがわかりました。しかし。
県警・宮沢忠孝本部長「これまでのところ、米軍機または米軍機以外の航空機からの落下物であるという特定には至っておらず、必要な事実確認を継続しているところです。」
QABでは、県警に調査資料の開示を請求し、8枚の資料を入手しました。ところがそのほとんどが黒く塗られ、どういう調査をしてきたのか、何の事案として調査しているかさえうかがい知ることはできません。
緑ヶ丘保育園・神谷武宏園長「普通防犯カメラは下を撮るんですが、この防犯カメラは上を向いている。もし落下物があったときにカメラでとらえられるようにと考えています。」
2007年に日米が合意して認められた飛行ルートではありませんが、普天間基地からおよそ300メートルしか離れていない保育園の上空では、日常的に基地を離着陸するアメリカ軍機が飛んでいきます。
2年前、園の屋上に測定器を設置し、騒音のデータを取り続けている琉球大学の渡嘉敷健准教授。
琉球大学・渡嘉健敷准教授「新型コロナウイルスが3、4、5月に発生して、米国も大変な状況だったと思うんですが、それでも訓練は一行に衰えない。2月に最高レベルの116.6デシベル。120デシベルが聴力の限界とされていますので、それに匹敵する音。」
渡嘉敷准教授は、去年と今年を比べて、今年はより子どもたちの環境が悪くなっていると分析します。
琉球大学・渡嘉健敷准教授「2019年5月の16回は数値的に多いので、これから見ても、2020年の5月で比較しても32回です。90デシベル以上は倍以上の飛行回数があった。落下物直後に比べると飛行回数が増えていることがわかる。」
落下物が見つかってからちょうど3年が過ぎた今月8日。防衛局に4度目の要請に訪れた、チーム緑ヶ丘。園長には、田中防衛局長に見てもらいたい映像がありました。
緑ヶ丘保育園・神谷武宏園長「けさ4機が普天間基地から離陸していきました。こういう風に園庭で楽しく遊んでいるときに突然飛んでくる。」
轟音に耐えかねて、耳を抑えたり、先生の旨に顔をうずめたりする子どもたち。この時、園に設置された測定器は、すぐ近くで車のクラクションを聞くような、110.1デシベルを記録していました。
3年間で何か1つでもやってくれたことはあるだろうか。お母さんたちは防衛局に怒りと不信感を募らせていました。
チーム緑ヶ丘「きょうの時点で戦闘機が4機飛ぶ。3年前よりひどくなっているんですよ。」
沖縄防衛局・田中局長「搭乗員に対して、保育園等の上空を最大限可能な限り避けるよう指示した。」
緑ヶ丘保育園・神谷武宏園長「最大限というのは?」
沖縄防衛局・田中局長「航空機の飛行なので、列車がレールの上を走るようには難しいと思っています。」
緑ヶ丘保育園・神谷武宏園長「沖縄の市民を守る気持ちはあります?」
なぜ、お母さんたちの願いは叶わないままなのでしょうか。
沖縄国際大学・前泊博盛教授「無知と無視と無関心、無能力、そういったものが重なってこの問題が放置されている。物証があるので、当然それについて捜査が進み原因究明することが必要ですが、日本の警察・沖縄の警察にもその能力が与えられていない、あるいはそういう気力がないのかという問題点が出てきている。地位協定の壁ではなくて、日本政府がやる気がない、無気力のために米軍側が主張している壁を壊すことができていない状況だと思います。」
前泊教授は、解決の糸口が見えないのは国の姿勢に問題があると指摘します。一方で、当事者が声をあげ続けることが重要だと話します。
沖縄国際大学・前泊博盛教授「お母さんたちが声をあげることによって、アメリカ側も(部品が)自分たちのものであると認めてきた。全国で米軍ヘリの低空飛行の被害を受けている人たちが同じように緑ヶ丘の動きについては注目していると思います。」
チーム緑ヶ丘・与那城千恵美さん「これは私たちにとって基地問題ではありません。みんなが基地問題からわが子の命と環境の問題とスイッチを切り替えれば必ず変わると信じています。」
あの日から3年が経っても、お母さんたちにとって、これは決して過去のことではありません。1日1日成長するわが子のための闘いです。
チーム緑ヶ丘「ことりだけが飛ぶ空になるまで、私たちはめげません!」