全焼から再建に向け、前を向きます。2か月前に火事で全焼したアートギャラリーが宜野湾市にありました。この場所で活動を続けてきた芸術家たちが立ち上がり、支援の輪を広げています。
ピンナップオーナー・許田盛哉さん「現実を受け入れられないというか。ぼくが着いたときには消火活動も終わっていて。もう何が起きているか本当にわからないというか」
当時を振り返り、悲痛な思いを語るのはアートギャラリー「ピンナップ」のオーナー・許田盛哉さんです。ピンナップは、空き店舗を改装して3年前に宜野湾市でスタートし、これまでジャンルや有名無名を問わず、若手作家を中心に個展や企画展の場を提供してきました。
しかし・・・
ことし9月、ギャラリーは火災に襲われ全焼。およそ40点の展示品も灰となってしまいました。火事の原因は未だにわかっていません。
許田さん「数年かけて手作りで作ったギャラリーではあったんですね、改装とかも業者は使わずに、スペース自体にも思い入れもあって。個展期間中の作家さんの作品もすべて全焼したのが、箱自体よりも、作品たちが燃えてしまったのが自分としては心痛くて」
許田さんがギャラリーの場所として選んだのは宜野湾市真栄原。かつては「新町」と呼ばれ、違法に営業する風俗店が軒を連ねていました。
許田さん「負のイメージとして、歴史として消したがっているふうに僕には見えて。歴史から消すのではなくて、残すべき歴史だとぼくは思っていて。違う形でまたここでお店を開いて別の形でアピールできないかと思って」
いまではゴーストタウンと化した街を、アートの力で再び盛り上げようと始まった「ピンナップ」でしたが、火災を受け、その目標を果たせなくなってしまいました。
そんな、失意の許田さんを救ったのが、これまでピンナップで個展や企画展を開いてきたアーティストたちでした。
許田さん「これまでお世話になった作家さんだったり、その関係者だったり、初日から来てくれて、初日から支援活動とか、団体が立ち上がったりとか。みなさんから、ピンナップはどういう形であれ、復活してほしいという声をたくさんいただいた」
支援者の1人、写真家の前田洋平さん。自身も3度、ピンナップで企画展を開いたことがあり、今回、再建を手助けするため、クラウドファンディングを立ち上げました。
目標金額は500万円で、期間は来月13日までとなっています。
写真家・前田洋平さん「やはりこの場所をなくしてはならないという思いが第一ですね。今回の火災で、ピンナップを支えようということで企画、展示というのもかなり進んでいるので、金額にしまして、55万円以上のものがあるという印象です」
また再建に向けて、許田さんたちが始めたのが、焼失したギャラリーを利用した展示会です。観客はガラス戸越しに作品を見ることができ、観覧料がギャラリーの再建費に充てられます。
観覧者「外の方を見させていただいて、いろいろ積まれている様子を見ると、大きな火災だったんだなと思って。燃えたというのを最近知って、ショックな感じもするのですが、ここの表、すごくかっこいい感じにペイントとかされたり、作品を置いているので、いい感じだなと思いました。よく見たら葉っぱのモチーフを使っている作品とかあって、形とか面白いのがあって、かっこいいと思いました」
前田さん「お客さん、観覧者っていうのも、この場所を必要としている、なくてはならないものだと感じているがゆえに、支援していただいているのではないかと思っている」
画家の町田隼人さん。大学を卒業後、すぐにピンナップで展示会を開き、若手アーティストとしてのスタートをきりました。
画家・町田隼人さん「声をかけていただいた分、より自分も集中して展示会を開けるように構想を練ったりとか。よりアートとか、画家として考えることにいいきっかけになったので、とてもありがたく思っている」
これまで2度、企画展を開いてきた思い出あるギャラリーの全焼の報せを受け「やるせない気持ちになった」と話す町田さん。しかし、ピンナップに恩返しがしたいと、支援活動に参加しました。
町田さん「許田さんに直接連絡を送って、何かできることがあればということで。ピンナップのグッズとかを自分がデザインしたりとか、作品を作ったりとかして、支援に向けての自分の関わりはあります」
許田さん「ギャラリーが火災が起きて燃えてしまって、引退を考えたのですが、こうやって助けてくれる人たちもいるので、そういう交流の場を作れたのは自分でも良かったなと」「ここからスタートしたことは大切にしつつ、沖縄県内の作家さんを県外、海外にアピール、逆に海外の作家さん、県外の作家さんを沖縄に招いて、その作家さんも沖縄県民の方にアピールしていくという活動をしていきたいと思います」
次々と支援の輪が拡がり、焼失を乗り越え、再建に向けて動き出すアートギャラリー、ピンナップ。許田さんは今後の展望を胸に、前を向きます。