新型コロナの影響でライブやイベントが相次いで中止となっているなか、きのう、クラシック音楽の新たな取り組みが首里城で行われました。再建を願い首里城に響いたのは「第九」です。
夕日の優しい色合いのなか、力強く演奏されたベートーベンの「交響曲第9番第4楽章」。きのう第6回沖縄国際音楽祭「第九 in OKINAWA」が首里城公園の守礼門前で開催されました。
沖縄国際音楽祭・岩崎セツ子実行委員長「感動、感動、感動で。皆さんがこれだけ合唱団の方たちがすごい熱意を持っていた」
音楽祭を主催した実行委員会の岩崎実行委員長。練習から本番までこれまで経験したことがないことの連続でした。
本番のおよそ2週間前に首里公民館で行われた練習。新型コロナの感染を防ぐため、本番の出演者40人全員ではなく15人程度にとどめ、マスクを着けて歌うなど、対策が取られました。
本番も3密を回避するため、これまで会場だった屋内の沖縄コンベンションセンターから屋外、首里城の守礼門での開催に。さらにコロナ禍で人を集められないため、ユーチューブで生配信という方法がとられました。
また実行委員会ではクラウドファンディングを立ち上げ、支援の一部を首里城基金へ寄付するという首里城再建への願いを込めて開催されました。
岩崎実行委員長「ピンチをチャンスにしなくちゃいけない。クラシックがウェブで生配信されることがどういう結果になるかということも、たぶん厳しい評価をいただくかもしれないとは思いますけれど、それを乗り越えて次の時代に入っていくのかなと思います。首里城の復興、そして音楽を愛する人たちの後ろ押しになっていただけたら、ありがたい」
試行錯誤しながら迎えた本番。正装に身を包んだ出演者たち。その表情には少し緊張の様子が。
そして午後4時。
出演者44人の力強い歌声が首里城を包み込みます。この日は第九のほかに芭蕉布などが歌われ、本番のおよそ30分間、天気の崩れや配信のトラブルなどもなく無事終了しました。
5回目の参加・久髙将輝さん「緊張しながら、上手くいったのかどうかわかりませんけど。外のほうが気持ちがいいと思いましたね。首里城で歌うってことは滅多にないことですから、今回いい経験をさせてもらって。また首里城の復興に少しでもお役に立てればうれしいです」
バリトン・合唱指導・仲本博貴さん「この風もそうですし、自然と首里城のロケーションと言いますか、これを感じながら歌を歌えるという解放感ですよね。それはやはり中々味わえないものだと思います。こういう歌声を通してですけど、歌いたいとか演奏したいと思っている人たちの希望になればなと、おこがましい言い方ですが」
岩崎実行委員長は今回の音楽祭が首里城で音楽に触れられる一つのきっかけになってほしいと話します。
岩崎実行委員長「次の世代の人、次の世代の人たちが受け継いでいってもらえればなと思います。首里城いっぱいに、歌う方でいっぱいになればいいなって。聞く人はそれこそ映像で見て、楽しんでいただくとか、そういう方法があるんじゃないかと思います。(第九は)苦難を乗り越える、みんなで手をつなぐ、そういう歌なので、首里の文化にも非常にふさわしいものだと思います」
首里城火災に新型コロナと様々な困難の中開催された音楽祭。第九に込められた思いを胸に、多くの人と力を合わせて前に進んでいます。