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来年3月末で閉校する県立伊良部高校。島に一つしかない高校の在校生は3年生5人だけです。

高校生活を締めくくる最後の一大イベントとして5人が企画した「駅伝」。感謝の気持ちや地元への愛着を伝えながら島の中を走り続けました。

伊良部島唯一の“伊良部高校”。今年度での閉校を前に開催したのは題して「Thanks I LOVE 伊良部高校 謝恩駅伝」。島を東西に横断した19km、島にある7つの地域を回ってタスキをつないでいきました。

沖縄本島から南西300kmあまりの場所に位置する伊良部島。およそ5000人が暮らす島は2005年に合併で宮古島市となり、2015年には全長およそ3.5kmの伊良部大橋完成で宮古島とつながりました。

島のほぼ真ん中に位置するのが県立伊良部高校です。1984年に宮古高校伊良部分校としてスタートし、2年後の86年に独立。以来2170人の卒業生を送り出してきました。

在校生5人の伊良部高校 タスキでつなぐ「感謝の気持ち」

中でも島を挙げて盛んなバレーボールではインターハイや春高バレーの全国大会に計6度出場と輝かしい実績を誇ります。

しかし伊良部大橋の開通で宮古島の高校に進学を希望する人が増えるなど生徒数が減少していき、2年前には募集を停め、今年度限りでの閉校が決まっています。

現在、伊良部高校に通っているのは地元の島での進学を希望した3年生5人だけです。

佐久川美緒さん「お姉ちゃんたちも伊良部高校に通って、自分が別な学校に行くとなったら(親の)送り迎えが大変だから、ここ(伊良部高校)にした」

島袋憲璃加さん「伊良部高校は特に緑が多くてきれいな学校。学校が一番好き」

来年3月、学校最後の卒業生となる5人は生徒会が年に一度企画を任される学校イベントを「駅伝」に決めました。みんなで協力して翌日に控えた本番の準備に当たります。

在校生5人の伊良部高校 タスキでつなぐ「感謝の気持ち」

生徒会長・宮国快吏くん「(これまでのイベントは)生徒会主催の文化祭学園祭のような形でやってる。人数も少ないので文化祭とか大きい行事をやるよりは、先輩方も誘って結構大きく地域を回る(駅伝)というので良かったと思う」

生徒会副会長・手登根華恋さん「(駅伝のアイデアは)みんなで決めた。卒業生も来るので、楽しめるように盛り上がるように準備している」

そしてもう一人、生徒会長の快吏くんや学校の教職員と一緒に準備をしている仲間成南くん。

小中と続けたバレーの腕を地元・伊良部高校でさらに磨きたいと入学。しかし先輩たちが引退した後は部員が成南くん一人になってしまいました。それでも宮古総実との連合チームで活躍し、高校最後の大会、春高バレー県予選ではベスト8まで進む原動力となりました。

成南くんの家には小中学校バレー部時代の記念写真が飾られています。その母校も伊良部高校より先に閉校しました。島にあった4つの小中学校は去年すでに伊良部島小中学校として、1つに統合されています。

仲間成南くん「(伊良部高校の)募集停止が決まったのは(1年生の)1学期の終わる前ごろだったと思う。もう後輩がいないというのがあって、バレーも続けられないのかなと思ったりして、不安は結構あった」

父・誉人さん「思ってもみなかった。全校生徒5人になって。それがバレーボールを通して友達も増えただろうし、卒業まで頑張ってもらってあと(学校で)何か得るものがあると思う」

母・ひとみさん「(閉校は)残念だが、他の学校に友達もできたり同じスポーツで楽しめる部員(仲間)ができた。それはまた幸せなことかなと思う」

仲間成南くん「OB(卒業生)の方々も伊良部高校の在校生5人も含めて、みんなで楽しく、生徒会祭謝恩駅伝を成功させたい」

在校生5人の伊良部高校 タスキでつなぐ「感謝の気持ち」

迎えた駅伝本番在校生の思いに卒業生や地域の人たちも応えます。

駅伝当日、5人の心意気に応じて、多くの卒業生たちが集まってくれました。

濱川美穂さん(9期)「卒業生だけでなく、地域も一緒に楽しく、伊良部高校ありがとう!という気持ちで(駅伝が)できたらと思う」

バレー部で美ら島総体出場・下里修平さん(25期)「伊良部高校のバレー部がなくなるのが一番寂しい。(Q:在校生に一言)一生懸命やるしかない。また卒業してからも恩返しの意味も込めて頑張っていくしかない、もうそれしかない」

島を横断して7つの地域を回るコースは19km、38区間。タスキをつなぎながら走るその先陣は5人の在校生たちが務めました。

1つの区間はおよそ500m。それぞれのペースで母校への思いを込めながらタスキをつないで行きます。高校時代のユニフォームを着て走る卒業生も。

野球部OB・池間開さん(18期)「帰省するタイミングだったので良かった。これはいい機会だと思って参加した。同級生もバレーのユニフォームを着て走っていたので良かったと思う」

成南くんのお父さんはじめ、保護者たちは安全確保や参加する人たちへの差し入れなど駅伝をサポート島唯一の小中学校からは横断幕を持った応援団の姿が。

伊良部島小中学校教諭・新垣宏隆さん「島の高校がなくなるということで、少しでもいい感じで終われたらと思って応援しに来た」

島の東側から今度は西側へ。

佐久川美緒さん「女子3人はみんな県外に出るので、みんなで協力できたことが楽しかったし、卒業生一人ひとりに(タスキを)パスして、そこで絆も見えたというか、とてもうれしかった」

島袋憲璃加さん「最初はきつかったけど、最後の最後まで感謝の気持ちを込めて走った」

駅伝はいよいよ最後の1区間500m。

仲間成南くん「伊良部高校最後の生徒で、バレー部ということで、快吏くんもバレーをしていたので、二人とも着ればいいんじゃないかなと思って(ユニフォームを)着た」

在校生5人の伊良部高校 タスキでつなぐ「感謝の気持ち」

19kmの道のりを3時間余りかけフィニッシュ。たくさんの人たちの協力のもと、伊良部高校最後の一大イベントは幕を閉じることができました。

伊良部高校生徒会副会長・手登根華恋さん「とても良い生徒会祭となった。私たち5人は3月まで一生懸命がんばっていきたいと思うので、応援よろしくお願いします」

在校生5人の伊良部高校 タスキでつなぐ「感謝の気持ち」

仲間成南くん「地域の方々がたくさん応援だったり参加してくれて。伊良部高校(出身)というのは誇りなんだなとそういうものが一番印象的だった」

父・誉人さん「企画から運営を先生方と一緒に、同窓会も巻き込んで、きょう一日お疲れ様でした。日々成長している。親が思っている以上に」

来年3月、37年の歴史にピリオドを打つ伊良部高校。活躍を見せた最後の卒業生5人の姿を、島の学び舎はあともう少しだけ見守ります。

卒業生や島の人たちの高校への思いは在校生のみなさんにもしっかり伝わったようです。卒業後は進学や就職で島から巣立つ予定の5人ですが、故郷の誇りを胸に大きく羽ばたいてほしいと思います。

在校生5人の伊良部高校 タスキでつなぐ「感謝の気持ち」