消滅の危機にある「しまくとぅば」を守ろうと様々な取り組みが行われています。先週から始まった小学校での挑戦としまくとぅばの魅力を発信する研究者を取材しました。
しまくとぅば普及センター棚原亜梨紗さん「子どもたちにも親しんでもらいながら、受けてもらいたいなというところで、検定が始まりました。」
本番まであと3カ月となった「しまくとぅば検定」。申し込みするともらえる単語帳で、勉強することができ合格すると、合格証書が授与されます。
棚原さん「(去年は)一番若くて5歳の幼稚園生から、80代まで幅広く受けていただきました。」それぞれのレベルに合わせてチャレンジできるよう、今年は4つの級が設定されています。例えば9級(小学1~2年生レベル)はこんな感じ!
これらをしまくとぅばで何というでしょう? 「ヤギ・砂糖・油 !!」
正解は、「ひーじゃー(ふぃーじゃー)、さーたー、あんら(あんだ)。みなさん、わかりましたか?」
地域の営みや文化、魅力が凝縮されたような味わい深いしまくとぅば。しかし、これからの未来を担うこどもたちにしまくとぅばについて聞いてみると・・・「古い方言だと思ってる。昔の言葉」「(Qしまくとぅば分かる?)わかんなーい」子たちにとっては「古いもの」「わからない言葉」というイメージが強いようです。
與那覇弘美先生「はいたーい!ちゃーびらたい!」みんな「めんそーれー」そんなしまくとぅばを、子どもたちにもっと身近に感じてもらおうと行われたのが「しまくとぅば講座」。
授業「”きょう”は何と言う?」「きょう」「きょう?(ずっこけ)」「ちゅー と言うの」しまくとぅば普及センターが希望する場所にしまくとぅばを教える講師を派遣するもので、現在、県内7つの小学校で授業が行われています。
授業「9月18日はしまくとぅばの日にしようよ、といった人がいるの。誰?」「儀間真常!」「儀間真常?!(笑)えらい!」
5年生「先生が面白かった」「あいさつとか、女の人と男の人で言葉が違うんだなって思いました」「おばあちゃんとかに話してびっくりさせたいです」
宜野湾小学校では今年初めて、5年生で週に1回、年間を通して取り組むことにしました。
授業「しまぬくとぅば、わしりーねー、国んわしゆん」「どういう意味というとね、島の言葉を忘れてしまうと自分がどこの国の人間かも忘れてしまうよ、と」
松村校長は、コロナ禍で授業数が限られている中でもしまくとぅばに触れる機会をつくりたかったと話します。
松村徹校長「子どもたちは県外にこれから出ていくと思いますので、その時に沖縄のアイデンティティー、しまくとぅばを話せるというのは大きな財産になると思います」
しまくとぅば講師 與那覇弘美さん「集中して食いつくように、しまくとぅばには興味があるのかなと印象を持って、安堵しています」「残すだけじゃなくて使っていく、日常の生活の中でつかっていける言葉、生きた言葉が伝えられたらいいかな」
しまくとぅば普及センター照屋さん「(しまくとぅば検定を)受けてみたいなという生徒のみなさんは、ぜひ挑戦してほしいなと思います」
子どもたちも気軽に挑戦できる「しまくとぅば検定」。ある人に挑戦してもうと・・・?
挑戦!しまくとぅば検定。よくある朝のようすです。お母さんは何というでしょう?次のしまくとぅばから選んでください?ちょっと難しいですよね・・・ この問題に、ある人が挑戦!どうみても沖縄出身ではなさそうですが・・・・正解できるんでしょうか?
ハイスさん「あわてぃーる なーかー よんなー やんろー 3かな?」 正解! 「やったー!」「あわてぃーる なーかーというと、急ぐほどゆっくりしろということですね。」
解説までしてくれたこの方は・・・!ラジオ「ぐすーよー ちゅーうがなびら うらんだのハイスやいびーん」オランダ出身のハイスさん。長崎に留学していたとき、沖縄出身の友人からしまくとぅばを聞いたのが興味を持ったきっかけでした。
ハイスさん「同じアルバイト先に沖縄の研修生がいたんですよね。長崎は長崎弁ですよね。」「何してる、と、なんばしよるは、まだ想像できますけども」「なんばしよっと?は沖縄の言葉でなんていうかというと、ぬーそーが?っていうのが出てきて、」「ぬーそーが?っていうのが衝撃的で」
8年半前に、オランダから沖縄へ移住。知人のツテを辿って初めて訪れたのが久米島でした。
ハイスさん「初沖縄でしたけども、もう一目ぼれでしたね。」「言葉調べたいんですって言ったら「何知りたい?」って平たい感じで、楽だったんですよ。」
現在は沖縄国際大学でしまくとぅばを研究するかたわら、ぎのわんシティFMでパーソナリティをするなど、しまくとぅばの魅力を発信しています。
ラジオ「アンタ、アシタイク?」「ウン。タブンイクハズヨ」ちょーひろー うちなーぐちぬ エイキョウ ゑーびん。(「あんた、明日行く?」「うん。多分行くはずよ」というのも沖縄の言葉の影響です。)
この日は、沖縄の言葉の影響をうけた日本語=「うちなーやまとぅぐち」のお話。
ラジオ「やまとぅぬ やまとぅぐちちぇー 「ハズ」ちょーへー、るーかちぇー ちかーのい、「アンタ、アシタイク?」「ウン。タブンイクトオモウヨ」ちゃんちる あゆぬ はじ れーびんれー。」(本土言葉では、「はず」は、自分に使わないで、「あんた、明日行く」「うん。多分行くと思うよ」というはずですよ。)
この「うちなーやまとぅぐち」。ハイスさんは、臆せずに使ったほうがいいと考えています。
ラジオ「うちなーやまとぅぐちちょーへー、ばっぺーとーぬ やまとぅぐち あらんちょーぬ くとぅ ゑーびん。(ウチナーヤマトゥグチ(=沖縄的な日本語)というのは、「間違っている日本語」ではないということです。)
「うちなーんつが はじかはーさのい、うちなーやまとぅぐち ちかてぃん しみんちゃんち うまーびん。でへー、カンサイジンろー ぬーん はじかはーさのい、まーんくい カンサイベン うぬまーま ちかてーちゃびーへー。「沖縄の人は恥ずかしがらないで、ウチナーヤマトゥグチを使ってもいいと思います。関西の人も恥ずかしがらないでどこでも関西弁をそのまま使っていますよね」
ハイスさんが長年研究してきた「しまくとぅば」しかし、流ちょうに話せるのは80歳以上の世代が多く消滅の危機に瀕しています。ハイスさんは、沖縄の人々の中にある「恥ずかしい」という思いが、しまくとぅばを話さない原因のひとつなのではと考えています。
ハイスさん「笑われてうちなーぐちをしゃべるのが嫌になるとか」「私よりうちなーぐちが上手な人がいるとか、敬語ができないとか、でも日常会話できる人がまだすごく多い」
しかし、ハイスさんが教えるしまくとぅばの勉強会では地元の若者の参加も増えていて、まだ希望はあると感じています。
ハイスさん「(しまくとぅばができると)かっこいいというような雰囲気がやっとできた感じがしますね。」「今20代とかにウチナーグチを教える機会を設けるというのもすごく重要だと思います。」「残そうという人がいて、その年齢だったら一生懸命覚えようと思ったら、上手になりますよ。」
今、消滅と継承の分かれ道にさしかかっているしまくとぅば。私たちの手で守り続けていかなければいけません。
ラジオ「また来週もお聞きください」
オランダにも消滅するといわれているフリジア語という言葉があるが、学校で「英語」「オランダ語」「フリジア語」の3つの言語で授業が行われている。友達同士など普段の会話でも使われているそうです。
しまくとぅば検定は12月に実施されます。申し込み締め切りは9月末です。くわしくはしまくとぅば普及センターまでお問合せください。