2021年度の国防権限法案について審議していた米連邦議会下院軍事委員会の小委員会は、辺野古新基地建設予定地に広がる軟弱地盤の懸念を盛り込んだ報告書をまとめました。
現地時間の24日に公表された米連邦議会即応力小委員会の報告書。この中では「辺野古で進められている普天間代替施設の開発を懸念する」と明記されていました。計画に悪影響をもたらす要素としては、大浦湾で地震発生の可能性が懸念されていることを指摘。海底にある活断層や50メートルに及ぶくぼみなどの存在から、地質学者らがこの計画について非常に困難であると指摘していることを明らかにしています。
委員会では国防長官に、危険性の評価などについてまとめた報告書を12月1日までに提出するよう指示しています。
米連邦議会の動きを受けて玉城知事は。
玉城知事は「着実に私たちの行動やワシントン事務所の活動、そしてアメリカにいる沖縄県系の国民のみなさんの努力が、一つひとつ形になったものと思います」と話していました。
一方、25日開かれた「万国津梁会議」には地盤工学の専門家で日本大学の鎌尾彰司准教授が招かれました。
日本大学・土木工学科の鎌尾彰司准教授は「サンドコンパクション(地盤改良)船、高さ100mの船が5隻も6隻も。あそこ(辺野古沖)のエリアにいるというのをイメージするとあり得ない」と話していました。
鎌尾准教授は、軟弱地盤は最も深い所で水深90mまで続いていて、国内にある作業船では水深70mまでしか工事できないために、長期にわたって地盤沈下が起きる危険性を改めて指摘しました。
日本大学・土木工学科の鎌尾彰司准教授は「70mまでしか届かないから、残りの20mは硬い、改良がいらないんだよみたいなニュアンスに聞こえてくるんですが…。(地盤の)沈下は大きいんですよ。不測の事態がどう起きてくるかが誰にも予測できない」と話していました。
万国津梁会議の柳澤協二委員長は「リスク要因を大きめに見積もったうえで工事の手順なり安全性なりを考えていくのがたぶんまっとうなやり方なんだろうけど、過小評価した判断の上に、設計がなされようとしている」と話していました。
辺野古の埋め立てが強行されるなか、今回、米連邦議会で取り上げられた辺野古の活断層や軟弱地盤の懸念。今後この動きがどう影響するのかが注目されます。
ここからは石橋記者とお伝えします。石橋さん、軟弱地盤や活断層については、番組で何度もお伝えしてきましたね。
石橋記者「今回の報告書でも懸念されているのがこちら、大浦湾に広がるおよそ66ヘクタールの軟弱地盤です」「国は7万1000本の砂杭などを打ち込んで地盤を固め補強すると言っています。ただ、工期や工費は当初よりふくれあがっているんです」
さてアメリカ連邦議会小委員会の報告書で「辺野古で進められている普天間代替施設の開発を懸念する」と指摘されたことは今後、辺野古の新基地建設計画に影響するんでしょうか。
石橋記者「これで工事が止まるかどうか影響は未知数ですが、小さな芽が出てきた、要は、アメリカ側がこの問題に関心を示すようになったと沖縄国際大学の前泊教授は分析しています」
沖縄国際大学・前泊博盛教授「これまで辺野古問題についてどちらかというと無視してきたアメリカ議会が少し関心を持ってきたのかなという印象を持ちますね。しかも、軟弱地盤の問題と活断層の問題という日本政府が最も触れてほしくない部分に触れてきているというところでいうと日本政府に対するインパクトが非常に大きいのではないかという印象を持っています。」
「強行して作っている基地、本当に大丈夫だよね?という進捗状況について疑問を持っているし、造られた後、提供される基地が、欠陥基地ではないかという懸念、与えられて渡された後に、その後、軟弱地盤が沈みはしないのか、 それは大丈夫かどうか?検査した結果を踏まえて報告してくれという付帯決議のような形で入れてきています。どうも基地建設、軟弱地盤問題大きな問題になっているじゃないか、あるいは活断層が指摘されているのに日本側はなぜコメントしないんだとか、大丈夫かどうかは調査しろという中身になっているわけですよね、それを報告して来いと。それを12月という形で期限まで切られてくると、日本政府にとっては穏やかな気持ちでいられないと思いますね」
Qこれは日本政府を揺るがす一報になるかもしれない?
沖縄国際大学・前泊博盛教授「本当に小さな芽だと思いますね。本当に種が芽吹いたようなもので、これが本当に伸びて花を咲かせるような成長があるかどうかはまだわかりません。核心部分をついてきていると言う部分では無視できない部分になると思いますね」
石橋さん、アメリカ連邦議会の動きがすぐに辺野古を止めるということにはなりそうにないですね。
石橋記者「はい。ただ、工事は先ほども触れたように簡単には進みません」
きょうの万国津梁会議に招かれた専門家からもいくつかの問題点が指摘されているんですよね。
石橋記者「軟弱地盤は最も深い所で水深90mまで続いているのにそこまで工事できる船がないということです。そのため地盤が固められないまま大型の護岸がその上に置かれようとしています」
果たしてこれで大丈夫なのか?
石橋記者「その点について国は工事をしない所は「固いので問題ない」といっていますが、鎌尾先生は長期間にわたって地盤沈下を起こし滑走路が凸凹になるので「軍事基地としての機能を果たせないのではないか」と疑問を投げかけていました。キャ)今回のアメリカ議会の動きが辺野古の工事にどのような影響を及ぼすのか未知数なところはありますが、ようやく議論のテーブルに乗ったという感じがしますね。