新型コロナウイルスの流行は社会活動を大きく制限し、私たちにライフスタイルの変革をもたらしました。その象徴的な1つが学校に行かず、インターネットで授業を受ける「オンライン授業」です。便利な一方により、急激な導入により、ある問題が浮き彫りになりました。
沖縄市にある学習塾、意伸学院(いしんがくいん)学習塾も休業要請の対象となったことを受け、期間中は授業をオンラインに切り替えました。
意伸学院・伊藤克季教育長「生徒の持っているテキストとこちらにある同じテキストを使って、Zoomを主に使って、ご自宅と教室で同じテキストの解説を進めていきます」
この春、美東中学校に入学した金城暖佳(きんじょうほのか)さん。パソコンは持っていないので、知人から借りて、授業に臨んだといいます。
金城暖佳さん「不便とかもちょっとはあるんですけど、風邪とか引いていても家でパソコンとかでやったり出来るので、うつす心配もないし」
意伸学院・伊藤克季教育長「一人ひとりの表情がアップで映っているので、通常の授業だと俯いたりしているとわからなかったりしている部分が見えやすくなっています。」「生徒の手元が見えないんですよ。なので問題を解かせている時間、どんなふうに解けているか解けていないのかというのが見えないんですよね」
外出が規制され、3密回避が強く呼びかけられる中でも、学ぶ機会を確保できると一躍脚光を浴びた「オンライン授業」。しかし一方で、それはある問題を浮き彫りにしました。
生活困窮世帯の子どもたちを対象に教育支援や居場所づくりを行っている「NPO法人エンカレッジ」「貧しくても勉強したい」という子どもたちに学習支援をしています。
しかし、新型コロナの影響で、子どもたちはこの場所に来ることすらできなくなりました。NPO法人エンカレッジ坂晴紀代表「教室来れないので、勉強の問題ももちろんそうですし、ご飯の問題だったりとか」「家庭に居場所のない子たちもいるもんですから、そういったところの部分でどうしているのかなというのはすごく先生たちは心配しています。」
さらに坂代表は、教育現場で急激に導入された「オンライン授業」についても子どもたちの「格差」を広げるのではと懸念しています。
NPO法人エンカレッジ坂晴紀代表「家庭にネット環境のある子だったり、デバイス環境のある子というのはいるんですけど、この環境がない子たち、ネット環境やデバイス環境がない子たちも結構いるもんですから、そういったところで経済格差が学力格差につながっているというのも、今回顕在化されてきています。」
家庭の事情で、パソコンやタブレットといった機器、また、Wi-Fiなどのインターネット環境が整えられず、取り残されてしまう子どもたちがいるのではと心配しているのです。
NPO法人エンカレッジ・坂晴紀代表「Wi-Fiだったりとかネット環境、デバイス環境というのは必要だなと。でそれがうちだけではできないんで」「社会全体で行政も企業も含めて、そういった世帯に対して、やっぱり環境を作っていくということが必要なのかなと感じています。」
県ではいま、子どもたちがオンライン授業に臨める環境にあるかどうかを調べるために、パソコンを持っているか、インターネット環境にあるかどうかなどを調査しています。結果を受けて、予算を組み、早ければ9月をめどに、機器の貸与なども検討しています。
こうした中、支援を始めている企業がありました。不動産事業や通信事業を展開するレキオスではWi-Fi機器などを家庭や塾に貸し出しています。
株式会社レキオスホールディングス宜保文雄社長「塾代がなかなか出せない子たちというのは、そもそもの生活環境自体も整っていなくて」「各家庭でオンラインの授業をやろうねと思っても、実際、家の中に通信環境がないという現状がさらにはっきり浮き彫りになった」
「教育格差は子どもたちの未来を奪ってしまう」宜保社長はそう訴え企業や地域が支援していくことが必要だと話しているのです。
株式会社レキオスホールディングス・宜保文雄社長「結局親の経済的な理由、格差が子どもたちのまた教育格差に繋がって、それが結局また将来、就職から含めて所得格差へ繋がってという負の連鎖、負のサイクル。それがもうはっきりした」
株式会社レキオスホールディングス・ 宜保文雄社長「インフラの初期のイニシャルというか、そこは行政の力と予算を使って一気にインフラをしていただいて、ただ毎月のランニングというのがあるわけですよ。それを全部、ずっと例えば補助金とか税金で持つというのは正直、現実的じゃなかっり、重たいので」「ただ依存するだけでなくて、私たちも民間の法人ではありますけど、できることを一緒になって力を合わせて、沖縄の地域の課題を解決していけたらうれしいなと思っています。」
国が緊急事態宣言を解除し、各地で再開された学校生活。しかし学校が始まったとしても「オンライン授業」は今後もあらゆる場面で多様されるものとみられます。家庭環境によって取り残されてしまう子どもたいないように。格差を縮め誰もが平等に学べる環境の整備が急務です。