きょうから変わった法律があります。増加する、親などの虐待から子どもを守る法律です。それが、きょうから施行された「改正児童虐待防止法」。子どもたちを守ることができるのでしょうか?
母親「いっぱいいっぱいになる気持ちはわかるというか、それでそういうつもりなくても不意に虐待みたいなことがあったりするのかな、とは子どもが産まれて初めて思いました。」
父親「そこは私も紙一重なところがあると思う。もしかしたら見る人からしたら体罰とか虐待に見えるときもあるかもしれないし。」
子どもへのしつけは体罰になるのか。狭間で揺れる親たちの声。
「1467」これは去年県警が児童相談所に通告した児童虐待の被害者の数です。統計が残る2007年以降過去最多となりました。そんな中、きょう改正児童虐待防止法などが施行され、親から子への体罰禁止が「初めて」明文化されました。
なぜ、法律は改正される必要があったのでしょうか。児童相談所で勤務した経験を持つ沖縄大学の山野良一(やまの・りょういち)教授です。
山野教授「今回は2つの児童虐待の事件が契機になっている。一つは東京の目黒で船戸結愛ちゃんという当時5歳の女の子が、なくなりました。いい子になりますという手紙を残して僕らの心を打つような事件があったんですね。」
そしてもう一つの事件。
山野教授「栗原心愛さんという小学生が、千葉県野田市に転居した後に虐待でなくなってしまう事件があった。」
山野教授は、この2つの事件にある共通点を見出していました。
山野教授「『自分はしつけをやっていたんですよ。虐待をやっていたわけではない』、という風に強弁した。虐待としつけの間にあるのが体罰だと思うんですね。その体罰をお父さんとしては肯定した。」
ここに、子どもの権利の保護を目標として活動している世界的なNGOが、2年前に発表した子どものしつけの意識調査があります。それによると、およそ6割の大人が、何らかの場面で子どもに体罰すべきと答えているのです。ただ、この問題を難しくしてたのが、民法で定められた親の権利でした。
「懲戒権」とは、子どもの利益になるのであれば、必要な範囲内で懲戒することができる権利のこと。この懲戒という言葉が、しかる、ひねる、殴るといった行為とされているのです。今回の改正でこの懲戒権について、2年以内に見直す事が盛り込まれました。
さらにもうひとつ、今回の法改正で変わった点がありました。
山野教授「一つは介入といって、一時保護といって親御さんが納得しなくても児童相談所で子どもを保護できる。そういう役割をする職員と、保護した後に家に戻すとかいうときに親御さんに対して、サポーティブといいますが、受容的な形で関わる職員って必要だと思うんですね。その役割を分けなさいということが法改正の中でありました。」
ただ、今回の法改正では親に対する罰則は定められてはいません。
山野教授「逆に罰則がないほうが大事だと思います。決して今回の法改正が親たちを苦しめるものであってはいけないと思う。」
体罰の無い子育ての実現へ。山野教授は子育てに対する政府の取り組み方が大事になってくると話します。
山野教授「逆に罰則がないということは、政府とか都道府県とか市町村がやらなければいけないことが増えたということ。つまり体罰じゃない子育ての仕方って何ですかということをちゃんと提示しないといけないと思います。」
虐待防止へ動き出した日本ですが、世界には40年前、すでに虐待禁止の法律ができた国がありました。
山野教授「一番いい例がスウェーデンなんですけど、1979年というだいぶ早い時期に体罰について法律の中で禁止するということを入れた。それまで79年に法律ができた時には、体罰をしちゃうという親御さんが日本と同じくらい6割7割いた。ところが20年後に同じような調査をしたら、体罰をする親御さんたちは十数%に減っていた。」
このスウェーデンの例からも、日本でも長期的な意識改革が必要だと山野教授は話します。
山野教授「短期的に虐待予防のためにこれが役立つかというと、これが4月1日にできました。じゃあ4月2日から虐待死なくなりますということにはならないと思う。10年20年30年後にやっぱり虐待を減らすためには、ここからやるということが出発点。」