辺野古を巡る裁判で県が敗訴しました。国に取り消された辺野古の埋め立て承認撤回の回復を県が求めた裁判で最高裁判所は26日、県の訴えを退けました。
この裁判は、辺野古の埋め立て承認撤回を取り消した国を相手に県が2019年7月に提訴したものです。その3カ月後には福岡高等裁判所那覇支部が県の訴えを退けたため、それを不服とした県が上告していました。
26日の判決で最高裁判所・第一小法廷の深山卓也裁判長が前の判決を支持し県の上告を退けたことで県の敗訴が確定しました。
敗訴した県は。玉城知事は「最高裁判所には法の番人として本件訴訟の重大性や行政不服審査法地方自治法について先例のない重要な法解釈を含むことなどにかんがみ、口頭弁論を開き、充実した審理を経た上で判断をしていただけるものと期待していただけに誠に残念であります」と話していました。
一方、勝訴した国は。菅官房長官は「埋め立て承認の撤回を取り消した国交大臣の裁決について、沖縄県知事の主張した点はいずれも避けられたものと承知してます。政府としては普天間飛行場の一日も早い全面返還を実現するため、全力を尽くしていきたい」と話していました。
今後、国は大浦湾に広がる軟弱地盤を補強するため、設計変更を県に申請する方針ですが玉城知事はこれを認めない方針です。
記者解説 関与取り消し訴訟 最高裁で県敗訴
ここからは石橋記者です。辺野古をめぐっては、法廷でいくつも争われていますが、今回の裁判はどういった位置づけなんですか?
石橋記者「裁判のきっかけは埋め立て予定地で見つかった軟弱地盤の存在です。これを理由に県は埋め立て承認を撤回しましたが、防衛局は国交省に申し立て、これを受けて、国交省が撤回を取り消しました。県は国と地方の争いを仲裁する第三者機関である「国地方係争処理委員会」に申し立てていました。しかし、その申し立ては「審査の対象にはならない」として却下されました。そこで、県は司法に判断を仰いだわけです。」
この裁判の論点は何だったのでしょうか?
石橋記者「県が問題視しているのが「行政不服審査制度」です。埋め立て承認撤回の時に国が対抗措置としたものです。そもそもこの制度は一般私人の救済を目的としたもので、国の機関である沖縄防衛局は使えないのではないかと制度の乱用だと県は訴えていました。」「裁判所は県の訴えを退けたため県は上告して最高裁に判断を求めたわけです。結局、ここでも県の主張は認められず、前の判決を維持する形でまた県の訴えは退けられました。」
きょうの判決で、どういった影響が出てくるのでしょうか?
石橋記者「はい、アメリカ軍基地問題に詳しい沖縄国際大学の前泊教授に聞きました。」
石橋記者「最高裁の判決ですが、県と国、双方はどういうふうに受け止めていると考えますか?」
沖縄国際大学・前泊博盛教授「国としてはこれまでの流れにですね、歯止めをかけない、むしろ、進めていくための判決を準備させたかのような印象を受けますね。三権分立が崩壊をした状況、それが、はっきりしたような気がしますね。司法の独立性・独自性をもって、行政のことに対してもしっかりとですね、公正な判断をしてくれるというふうな期待があったと思いますけど、行政に忖度するような判決しか出せない、そういう司法に成り下がってしまっていると、そういう印象を受けますね。県としては、こういう司法と行政の癒着のなかで、どういう判決を引っ張り出すかというところでは、裁判闘争のあり方についてもね、大きな転換を求められている。そういう判決になっていると思います」
敗訴したことで一層厳しい状況に立たされた玉城知事。辺野古を巡る攻防では、大浦湾に広がる軟弱地盤を固める工事に向けた国の設計変更申請が控えています。玉城知事はこれを認めない構えですが、今回の判決が「設計変更」に与える影響はあるのでしょうか?
沖縄国際大学・前泊博盛教授「一般私人とですね、行政機関が同じ扱いになっていること自体、この司法として、こういう矛盾について、しっかりと突かなければいけない司法が判断停止をしてしまっているという思考停止状態になった判決になっていると言わざるを得ないと思います。当然、こういう判決が出てくるとですね、司法からの許可を得たと、判決でね、この事業について、承認を得たというような、そういう印象操作にも使ってくると思います」
また、前泊教授は、設計変更にとどまらず、辺野古を巡るもう一つの裁判やサンゴの移植でも国は強硬姿勢をさらに強くしてくると指摘します。県に対抗策は残されているのでしょうか?
石橋記者「新基地の阻止を掲げる玉城知事が、今後、どういうふうに対応していけばいいのかというところですが、いかがお考えになりますか?」
沖縄国際大学・前泊博盛教授「大事なのは国内世論ですよね。国民が知らなさすぎると思います。その(辺野古新基地)規模の将来性、それから、無駄の壮大性ですね。そういったものを国民に知らしめることです。軟弱地盤の問題、それから、予算の問題に反するような埋め立ての強行、こういった問題について、どれだけ、国民世論に訴えられるかというのは、国会論戦にも期待したいところです。国会で仕掛けるというところでは元国会議員の出身であるというところで、玉城知事が本領を発揮しなきゃいけない部分だと思います」
石橋記者「今回の判決を受けて前泊教授は、出来レースに近いものがあると強く批判していました。辺野古をめぐる県と国の裁判では県の敗訴が続いていますが、撤回の正当性を主張するもう一つの裁判でも県は絶対に譲れない立場で、玉城知事は新基地建設の阻止を諦めないと述べていました。」
そのためには、国内の世論や国際世論に訴える必要性があると世論の重要性を前泊教授や万国津梁会議の委員たちが訴えています。辺野古を進めたいという思惑だけで工事を推し進めている国の暴走がこのままでいいのかということを国民一人ひとりがしっかりと見ていく必要があります。