県内の児童養護施設、里親家庭などを巣立った子どもたちの進学や資格取得を経済的に支援しようと、2011年に設立された「にじのはしファンド」。9年たった今も支援の輪をつなげています。
しかし、施設などから巣立つこの時期に、どうしても避けられない壁。そこには社会の理解不足が、子どもたちの一人立ちの邪魔をしていました。
那覇市松川にある「にじの森文庫」。週に2回、子ども食堂を運営しています。「子どもの居場所を確保する」として、県内の児童養護施設や里親などからの卒業後の進学や資格取得を経済的にサポートするNPO団体、「にじのはしファンド」の活動のひとつです。
にじの森文庫・金城辰美館長「近所や企業からお米やお菓子を寄付して頂いているので、だいたい食事は賄っていて、お肉はなかなか寄付はないので購入して賄っています。」
地域とも連携しながら、子ども食堂を開いている日には子どもたちのために、20合から30合のお米をたいて、子どもたちを迎えています。しかし、子ども食堂を利用する子どもたちの中で、およそ半分が孤食や貧困という問題を抱えた子どもたちだといいます。
にじの森文庫・金城辰美館長「子どもたちがネグレクト状態になっている子がいて、子どもに手をかけることが精神的にできないとかの家庭があるので、子どもの貧困と言われている。子どもの居場所として活動してて、食事の提供や、学習支援で利用してもらっている。」
子どもたちはこれからの夢を描いています。来月の新学年に心を躍らせている子どもたち。しかし一方で、ある子どもたちには、進学や就職を阻む、大きな壁がありました。
にじのはしファンドの活動のひとつ「にじのしずく」。児童養護施設や里親家庭などを卒園したあとのアフターケアを行っています。しかし、卒園後の進学や就職という新生活をまえに今、大きな壁に悩まされています。
にじのしずく・棚原喜美枝支援コーディネーター「今、なんでも携帯もつにしても、車買うとか、仕事するにしても、必ず保証人が求められてくる。そうした時に親類縁者がなれない場合が多いので、じゃあ誰がなるかってときにほんとに誰もいない。」
去年4月ににじのしずくを設立して以降、およそ98件の相談がきたといいますが、にじのしずくでは3人の相談員まわしているため、受け皿の狭さも、見過ごせない問題です。
卒園後の保証人問題。一般的には身分を証明するために必要とされ、今の社会では就職するさいに必要とされるケースがほとんどです。子どもたちが元いた施設の施設長にお願いをして保証人を立てることも多いといいますが…。
にじのしずく・棚原喜美枝支援コーディネーター「(保証人制度に)壁があって、ずっと前に退所した子が相談に来ていて、なかなか保証会社がうちの退所者を受け入れてくれないんです。今6か所断られていて、どこにもあたらない。本人はへこんでいくし、どうせ施設の子だからでしょって言ってくるし。」
なぜ法的に認められた保証人をたてているにも関わらず、保証人問題が解決しないのでしょうか。
にじのしずく・棚原喜美枝支援コーディネーター「保証人って3親等以内っていわれていて、身内の方がなるのが基本条件みたいで、続柄のところに「施設長」とあるとどうも理解できない。身内じゃない人がなぜなるの?とまず蹴られる。」
さらにこれだけではなく、18歳で施設などから巣立った子どもたちにとって、未成年者がひとりで家を借りることのハンディや、未成年者に必要となる親権同意書が準備できないなどの条件が重なり、社会的信頼度が薄くなってしまうことも要因で、できないということです。
家を借りたいが就職できない。就職するためには家が必要になる。でも、就職するための家が借りられない。このような負のスパイラルに陥ることも。
今の現状では、みかねた周りの人が名義を貸し、1件のみ賃貸契約に繋がりそうだということですが、いまだ契約に至った相談事案はないということです。そのため大家や不動産に直接声をかけて、個別の判断を仰いでもらうしかなく、根本的な解決には程遠いままです。