さて、春は出会いと別れの季節でもあります。こんな別れにカメラが密着しました。41年、地域の安全を守り続ける糸満警察署がこのほど新しい庁舎が完成し、お引越しが行われました。
剥がれたタイル。ヒビの入った階段。右耳と下あごの欠けたシーサー。ここは糸満市にある廃墟…ではなく地域の治安を守る糸満警察署。築41年。県内の警察署では一番古い庁舎です。
金城署長「地盤が沈下したり、建物にひずみができたり、そういった状態が出てきて引っ越すことにしました」
老朽化などの理由から、この度引っ越すことになりました。
金城署長「武道場の天井から雨漏りが常にあって、武道場の天井にビニールシートを張って雨漏りを避けると。」
老朽化した糸満署を悩ませた雨漏り。。武道場だけでなく、なぜか1階の天井にも雨漏りの跡が。さらに…
金城署長「訓授場というとても大きな部屋が警察署にはあるが、それも建物の中になくて」
建物内に大きな部屋がない糸満署。会議などは外のプレハブで行っていました。
仲村刑事課長「警察官としての基本的な1歩を踏み出した署でもありますし、刑事の道の第一歩になったかなと思っています」
そう話すのは刑事課の仲村潤(なかむら・じゅん)課長。15年前、警察学校卒業後に初めて着任したのがこの糸満署でした。そして去年、刑事課長として戻ってきたのです。
仲村刑事課長「通いなれたところで新たなところに変わるが庁舎を離れるのはさみしい思いがあります」
全体の勤務が終わると何やら署員が入り口に集まってきました。
始まったのは、警察学校を卒業した新人警察官を迎える伝統の儀式。この日は2人の新人警察官が学校を卒業し、糸満署に戻ってくる日だったのです。
金城署長「41年間慣れ親しんだ糸満警察署が無事に閉庁の時を迎えることになりました」
引っ越し作業はここから!仕事を終えた署員らは荷物をまとめていきます。そこには新人警察官の姿も。初めての仕事は、当番勤務でもパトロールでもなく引っ越し作業でした。
赤嶺巡査「自分たちが使うところなので自分たちが全部やらなきゃいけないので大変な面もあるんですけど明日からも引き続き引っ越し作業やっていきたいと思います」
41年慣れ親しんだ場所から引っ越すことになった糸満警察署。地元の人からはこんな声も。
地元の弁当屋 西銘多寿子さん「お巡りさんもお腹すいたって言って弁当買いに来てくれたり。このお店のパトロールもかねて来ていただいていたのでとてもさみしくなります。」
旧糸満警察署から500メートルほどの距離にある、丸糸ショップ。35年以上警察官の胃袋を支えてきました。
地元の弁当屋 西銘多寿子さん「沖縄水産高校の学生だった子がお巡りさんになっていたりとか、転勤になって戻ってきた人と久しぶりねーって感じで話もできてとてもアットホームな感じの糸満署の皆さんでした」
場所は変わっても、やることは変わらない。昼夜問わず、地域を守り続けます。そして迎えた新庁舎での初勤務。朝から開所式が行われ、署員たちにも気合いが入ります。
県内で一番古い庁舎から、一番新しい庁舎になった糸満警察署。中を見てみると…
旧庁舎では雨漏りがひどく、いたるところに老朽化を感じた武道場。新庁舎は白を基調に清潔感漂うデザインに。
旧庁舎では外に設置されていた訓受場は、3階建てになり庁舎の中に設けられています。新しい環境に署員は…
署員「新しくて上等ですね。仕事がやりやすいです。広さですね。広さと設備が充実。最新型になってますので。」
仲村刑事課長「新しい事務所になって課員のモチベーションも上がっていますし、より一層業務に取り組んでいきたいと思います。」「当直室も休憩室がきれいに整備されたので、当直勤務をしやすい環境になったかなと思います。」
金城署長「建物がとても新しくなって署員が非常に気合が入っていると、嬉しそうな表情がみんな見えますね。」
署員の明るくなった表情に満足気な金城署長。実はこの3月で定年退職することが決まっています。
金城署長「37年間の警察人生の中でこんな場面に立ち会えたのは非常に心に残る刻まれた、いい思い出になりました。地域のため県民のため国民のために努力が継続されていくことを期待しています。」
たくさんの人たちの様々な思いが詰まった、糸満警察署のお引越し。新しくなった庁舎からこれからも地域の安心と安全を守り続けます。