今年チーム史上初めてJ2リーグで戦ったサッカー・FC琉球。これまでになかった盛り上がりを肌で感じている方も多いのではないかと思います。
そこには当然選手たちの頑張り・活躍があるのですが、そのウラでは日々奮闘し続ける新社長の存在がありました。
今年、かつてないほどの熱気の高まりを見せたFC琉球。ピッチで走り続けた選手たちの後ろには、陰で奔走し続ける社長の存在がありました。
那覇市の県体育協会スポーツ会館に事務所を構えるFC琉球。ほかのスタッフと同じ机の並びに座っているのが琉球フットボールクラブ代表取締役社長・三上昴さん。
三上昴代表取締役社長「最初は4階と5階でオフィスが分かれていたんですけど。最初にやったのが4階にいた人たちを5階に持ってきて、みんなが顔が見えるように仕事しようと思って。本当は(社長席)欲しいですけどね(笑)」
東京出身の三上さん。今年6月に31歳の若さで代表取締役社長に就任し、全国のJリーグクラブの中で最年少の社長に。なんと前職は大手証券会社・ゴールドマンサックスの証券マン、職場は六本木ヒルズでした。そこからのFC琉球の社長への転身には、小さい頃から続けてきたサッカーへの思いがありました。
三上さん「もう一回サッカーしたいと思った時に、ちょうどワールドカップがあったんですよね。その時に僕の同世代の選手たちが世界で身一つで極めながら戦っていく姿を見て、会社の看板の下で甘えている場合じゃないと思ったのが最初のきっかけという感じです。わからないことも多かったですし、知り合いも全然いない中でこっちに来たというのもあるので、とにかくがむしゃらに1年が過ぎた」
競技運営部・友利貴一さん「誰よりも働いています。誰よりも汗かいて、覚悟を持って働いている姿を僕らも目にしているので、すごく尊敬しています」
がむしゃらに過ごしてきたという1年。三上さんの予定表は今も数時間単位でぎっしりと埋まっています。
きのうは選手らとスポンサー企業への挨拶へ。同じ肩書として面会するのは、一回りも二回りも年齢が上の人々。そこにも三上さんなりの哲学が。
三上さん「ピッチの選手がよく『年齢は関係ない』と言っていると思うんですけど、経営もそれに近いと思う。クラブとしての思いをしっかり伝える、それこそ僕が代表をしているので、変な話はできないですし、そういうのはすごく意識しています」
社長という仕事に年齢は関係ない。その一方で、若く経験が浅いことも自覚し、意外なところでも汗を流しているんです。
午前6時過ぎ。この日はFC琉球のホーム戦開催日。早朝から会場設営のため集まるスタッフたち。その中に三上社長の姿が。
三上さん「これ重たいんだよな」
社長自ら、設営のために汗を流しているんです。
三上さん「知らないことが多かったので、自分で1回やらないとわからない。やっぱり疲れるんですよね、これって。だからこそ色々考えるようになるし、どうしたら効率的なのか、どうコストを削減しないといけないのかとか」
設営しながらも常に考えているのは、このスタジアムをどうやって魅力的な場所にしていくのか。
三上さん「もともと場外は全部委託していたんですけど、今年から琉球はいさいマーケットとして沖縄のものを提供できる、サッカー以外のきっかけを作りたいと始めて。もっとここが楽しめるような場になればという思いで色々やっているんですけど」
こうして試行錯誤を繰り返しながら作り上げてきたホーム戦。
今シーズンはJ2に上がったことや県勢選手たちの活躍、さらに元日本代表の小野伸二が加入した直後の試合で1万人を超えるサポーターがスタジアムに詰めかけるなど、年間で去年のおよそ2倍となる入場者数10万人を達成。
さらにホーム戦での売り上げは去年のおよそ5倍と、課題となっている経営にも変化が見られています。そこにも三上社長のある施策が。
三上さん「(施策に1つとして)招待券を極力減らそうと。琉球は無料招待券が多いクラブとイメージが付いてしまった。招待券というのはある意味、自分たちの試合の価値を0円で渡してしまっているのとほぼ同意義だと思っているので」
合理的に、かつ泥臭くFC琉球の舵をとる若き社長。東京出身の三上さんにとって、家族を置いて単身で乗り込んできての沖縄での挑戦です。
三上さん「(Q:転職して沖縄に来ることに家族はどんな反応だったんですか?)前職は色々な意味で暮らしも良かったですし、それを家族からしたら良くわからない理由で離れていくのでかなり不安はあったと思いますし、その分苦労させてしまっているので、やはりその最低限の暮らしというか、苦しい思いをさせないというのが僕としては果たさなきゃいけない義務かなと思いはあります」
強い覚悟を持ってFC琉球を引っ張る三上社長。目指す先にあるのは、沖縄を愛し、沖縄に愛されるクラブだと話します。
三上さん「我々FC琉球は日本一のクラブを目指しています。ピッチで躍動する選手、そしてピッチと選手と一体となったサポーター、そういった沖縄の愛にあふれたスタジアムを目指しています。またきょうから新たな一歩が始まります」
来季もJ2で戦うFC琉球。若き社長の挑戦にも注目です。