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首里城の正殿などが焼けた火災から2週間。それぞれ小説家として、ノンフィクションライターとして、沖縄にまなざしを向けてきた2人が現地を訪れました。藤井誠二さんと、真藤順丈さん。2人の目に映る今の沖縄とは。

藤井さん「ここまでは『首里城に来たな』というイメージですよね。」

真藤さん「まだね。」

沖縄の売春街に生きた人々をつづったノンフィクション、「沖縄アンダーグラウンド」の著者、藤井誠二さん。戦後沖縄の「戦果アギヤー」を主人公にした小説「宝島」で直木賞を受賞した真藤順丈さん。沖縄と向き合って作品をつくり、注目された2人が首里城周辺を訪れました。

真藤さん「映像の燃えている様子が、胸がずんずんとうずくような感じがありました。これを見て沖縄の方々はどういうふうに感じるだろうと真っ先に考えました。」

藤井さん「92年に公開されてすぐ見に行った。中を見たら息をのむというか、ここは日本ではない、中国でもない、ここは紛れもない琉球なんだと実感するような内装だった。沖縄の友人が(火災で)ひどいショックを受けていたり心に穴が開いてしまっている状況を考えると、僕自身も胸が痛かった。」

真っ先に沖縄の人の気持ちを案じたという2人。すぐに動きました。

藤井さん「すぐ真藤さんが『やろうよ』と、たまたま沖縄にいたので、すぐ『いいよ』と。即答だった。」

日曜日には、那覇市の書店で急きょ首里城再建のためのチャリティーイベントを開催。

藤井さん「今は僕らにできることはお金を集めること、世論を喚起すること。」

真藤さん「県外の方もショックを受けている。でも一過性のかんじになりかねないとは思うので。」

再建については、それぞれ沖縄の歴史の裏側や、タブー視されてきた世界を描いてきた2人ならではの思いがありました。

真藤さん「(自身の)作品の中には首里城は一切出てこない。もっと地べたのコザとかを中心に書いてきた。これだけ美しくて壮麗な、沖縄の多様な文化を表しているようなもの。でも僕が思うのは、確かに首里城はアイデンティティーだけれど、じゃあ首里城だけが沖縄のアイデンティティーかというとそうでなはいと思う。戦争の記録や史跡がいたるところにあって、そういうところに目を向け足を運ぶだけでも首里城の再建への紐帯が強くなるなんじゃないかと思います。」

藤井さん「少なくとも僕が取材した夜の世界や中部、北部の人はあんまり首里城に関心がない地域だし、むしろ首里や那覇を遠く感じる人もいる。沖縄のアイデンティティーは多様性があって、首里城だけがアイデンティティーではなくて、色んなものが分散している。そのうちの1個であることが大事だと思う。」

首里城が消失した後、県民が様々な言葉で表現した、琉球文化を物語る朱色の城。

城間幹子・那覇市長(10月31日 Qプラスより)「琉球の歴史を物語る首里城ですので、シンボルを失ったというような、私個人的には、落胆の思いがあります。」

玉城知事(10月31日 知事会見より)「大変ショックでした。県民にとって大切な世界遺産、アイデンティティーのよりどころを失ってしまった。」

沖縄の人が抱く、沖縄への思いとは何なのか。沖縄のアイデンティティーとはどこにあるのか。藤井さんと真藤さんは、こんな風にみていました。

藤井さん「沖縄のアイデンティティーが、首里城や政治運動など、色んな場面に登場しますが、それっていったいなんだろうと考えるきっかけがより深まったというか、そういう機会ができた。沖縄のアイデンティティーが先行して使われるのではなくて、県内の人も県外の人も、沖縄が好きな人が力を出し合って作るんだという過程を通じて、首里城が大事な存在だったというのがわかれば理想だろうと思う。」

真藤さん「首里城が上物ではなく、基盤が世界遺産であるように、そこに至るまでの歴史がアイデンティティーというところなんだろうなと。沖縄、県外の力が結集した時に人間の本当の営みの力が生まれるのは間違いないと思うので、物書きの目から見ると、多くの物語が生まれるんだろうなと、人々の息吹が立ち上がっていくんだろうなと思います。」