嘉手納基地周辺の河川や地下水の汚染を県が発表してから3年が経ちました。
7つの市町村、およそ45万人に関わる飲料水の問題に沖縄県はどのように対応しているのでしょうか。現場を取材しました。
県企業局 平良 敏昭局長(当時)「大工廻川から高濃度のPFOSが検出されたこと。及び、比謝川においては、大工廻川との交流部から下流においてPFOS濃度が上昇していることなどから、発生源は嘉手納基地である可能性が高い」
県企業局が明らかにしたのは、人体に有害な有機フッ素化合物PFOS、PFOAによる河川や地下水の汚染。こちらは県企業局が公開したデータに基づき作成したグラフです。
大工廻川や、比謝川取水ポンプ場、そして長田川取水ポンプ場で数値が高いことがわかります。これをアメリカの環境保護局EPAの基準値と比較するとほとんどの取水源でアメリカの基準を超えていることがわかりました。
県企業局 配水管理課 志喜屋 順治配水調整監「嘉手納基地の方で、何かしら、有機フッ素化合物を使っている状況があるんじゃないかということで。0比謝川、長田川、嘉手納井戸群、そこで高濃度が出てきているという傾向が出ている。そこで嘉手納基地と因果関係があるんじゃないかということを把握したところですね」
さらに、これらの場所を地図に落とすと、詳しい状況が見えてきました。最も汚染が酷い大工廻川は、嘉手納基地内、滑走路のすぐ傍を流れています。そしてその大工廻川とつながっているのが比謝川取水ポンプ場と長田川取水ポンプ場。長田川取水ポンプ場では、アメリカの基準の9.8倍、比謝川取水ポンプ場では、8.7倍、大工廻川では16倍にもなっていました。
取水源の汚染が発覚した北谷浄水場では、PFOS、PFOAを除去するため、あるものを活用しています。コンクリートで覆われた池の中を覗いてみると…。
県企業局 北谷浄水管理事務所 福元 淳主幹「こちらは活性炭吸着地と言いまして、中には粒状活性炭が入っていまして」
池の底に敷き詰められているのは吸着力の強い炭です。これまでも水質改善のために使われていたこの炭がPFOS、PFOAの除去にも活用されています。
県企業局 配水管理課 小島 健司主任技師「PFOS、PFOAについては、北谷浄水場で従来使用してきた粒状活性炭、こちらの方で除去できることがわかっていますので、こちらを用いて、PFOSの低減をして、送水しているところです。一粒当たりの粒は、1ミリあたりと、小さいものなんですけど目視では見えないのですが、この中には無数の穴が開いている状態です。この穴に有機物を通すことで、不純物が吸着されて除去できる」
しかし、この処理方法にも課題があります。粒状活性炭は使い続けていると、効果が弱くなってしまうのです。これまでは8年に1回の交換でよいとされていましたが、PFOSの問題が浮上し、交換のペースを4年に1回に早めることになりました。2016年、企業局が急遽4つの池の粒状活性炭を入れ替えるために要した費用はおよそ1億7000万円。県はその負担を日本政府に求めましたが。
沖縄防衛局 田中 利則局長「米軍とPFOSの検出と、因果関係については、いまだ確認されていることではありません。従いまして、日本国内でのPFOSを規制する基準がない状況の中で、補償を行うべき状況下にあるという結論には達していないところでございます」
企業局は、基地内への立ち入り調査を求めていますが、そこにも大きな壁が立ちはだかっていました。問題がまたブラックボックスの中に入って、見えなくなってしまう。
嘉手納基地内を流れる川や地下水が有害物質で汚染されていた問題。基地内への立ち入り調査を求めた県に対して、アメリカ軍の回答は、驚くようなものでした。
県企業局 配水管理課 志喜屋 順治配水調整監「立ち入りは認めないというのは、正式に回答はいただいております。(Q.認めないという理由はなんですか?)この問題は、国家規模での議論が必要だということで、基本的には、日米合同委員会に諮る案件ですということで、現地米軍は判断しないという回答になっております」
日米合同委員会、それはアメリカ軍に対して、様々な特権を与えてきた密室の会議です。合意内容も、議事録も、公開されません。
沖縄国際大学 前泊 博盛教授「我々が知らないところで、国民の生命財産を危うくするような取り組みが、勝手に決められている、そのことが開示されていないんですよ。そしてみんなブラックボックスの中に入れられている」
しかしなぜ、この局面で、日米合同委員会の名前があがったのでしょうか。
沖縄国際大学 前泊 博盛教授「(Q.日米合同委員会を理由に立ち入り調査を断られているが?)まあ恐らくですね、現場に任せて現場の裁量でですね、できる対応と、そうでなくて合同委員会、政治マターになっていく事案と分けていたと思いますね。今回の場合は、現場サイドの裁量でできるはずだったものが、大きな問題になって、合同委員会にあがったので、現場は誰も手だしできないということになったと。まあそれくらいの事案だということがはっきりしたと思いますね」
県企業局 配水管理課 志喜屋 順治配水調整監「(Q.これまでも水道水について、日米合同委員会物件ってあったんですか?)記憶する限りでは、聞いたことがない」
アメリカ軍が責任を認めない状況では、汚染を食い止めることもできず、その状況では、いくら汚染を除去しようとも県民の危険や不安は根本的に解消されません。
沖縄国際大学 前泊 博盛教授「領土内において、こういう問題が起こっているのに、日本の主権が行使できないような形で放置されているんですよ。そういう意味ではね、この問題について、闇から闇に葬り去られないように注意する必要がありますね」
県民の生活を揺るがす飲み水の汚染。解決のめどは立っていません。
PFOSの汚染を放置させている背景には、アメリカ軍基地の存在とともに、国内に規制する基準がないということも理由にあげられます。国は今基準作りに取り組んでいますが、それについても、私たちが納得のいくものになるようきちんと見ていく必要があると思います。