ことしは「組踊」が初上演されてから300年の節目の年です。番組では、それを記念した組踊の上演会で披露される花火の復活にかける男性を紹介しましたが、その花火がついに先日、披露されました。花火復活は成功したのか、ご覧ください。
組踊。1972年に国指定無形文化財に認定された沖縄を代表する伝統芸能です。今からちょうど300年前、中国の使者をもてなすため、首里城で初めて上演されました。
歌と演奏と踊りで構成される組踊ですが、その演出には花火が用いられていたことはあまり知られていません。
これが、組踊の上演の際に使われたからくり仕掛け花火の絵図。琉球王国の古い書物に記されています。
初上演から300年を機に、この花火を復活させようとする人たちがいました。
金城裕幸さん。組踊の道具や衣装制作、修理を手掛ける国選定の保存技術者で、からくり仕掛け花火の仕掛けを担当しました。
国選定保存技術者・金城裕幸さん「復元ものとかに携わる機会は中々ないと思いますので、まして今回『花火』があったということも今回わかりましたので、それに携わるというのは光栄だと思いました」
先月、野外公演に向けて2回目の仕掛け花火のテスト。仕掛けが上手く作動するか、花火が噴水のように流れるかを確認しました。
今回の仕掛け花火担当の花火師・金城義信さん。
沖縄花火・金城義信さん「(仕掛け花火は)難しいものだろうとは想定してたので。配線というか導火線の取り回しが、互いに飾りを付けに関渉しないように、あと火の粉、燃えた後に火の粉が落ちないように」
炎天下での作業。額の汗をぬぐいながら黙々と進められました。
義信さん「これここに引っかからないですか」裕幸さん「あっそうか、そうだね、やっさー」
仕掛けを動かす釣り糸の部分にちょっとした間違いが。しかし日が暮れるまでに仕掛けを完成させなければいけません。
作業からおよそ4時間、仕掛けが出来上がりました。
金城義信さん「上手くいって良かったです」
金城裕幸さん「一応、出る物がちゃんと出たから僕は良かったです」
国立劇場おきなわ・茂木仁史調整養成課長「噴水がきれいに出てたんで。噴水っていうのは両脇にパッと広がる花火が意外と火花が長く見える。きれいな流れが出来ていたので、それはとても良かったと思います。(観客に)300年前に旅した気持ちになってほしいですね」
このあと300年前の花火がついに観客の前に現れます。
組踊は今からちょうど300年前に初上演され、数多くの脚本・演出を手がけた踊り奉行・玉城朝薫が生み出した沖縄独自のエンターテインメント。
先週、国立劇場では300年を記念した公演が行われ、500人の観客が集まりました。
舞台では、新しい王様の誕生を祝福する踊りや300年前の初上演で披露されたという玉城朝薫の代表的演目「執心鐘入」も上演されました。
午後8時。静まり返った会場にいよいよ、からくり仕掛け花火が登場します。
義信さん「先人たちはこういった、からくり仕掛け花火っていうのを作り上げてきたなと思いますよ」
茂木さん「三味線の音が聞こえて、鼓の音が響いて、ここだけ特別な空間があるっていう、その特別な空間に自分たちが立ち合っているとう、そりゃもう本当に幸せというほかに言葉見つからないですね」
観客「鼓が入ったりとか普段ない楽器で、見たことのないのに、組踊見るとまた新鮮でとても感動しました。楽しかったです」「(舞台は)これが本物かなって。(組踊の)メイクとかそうですけど、花火とかも150年前ぐらいだったのに。こんなすごいのができてるんだなというびっくり感があります」「花火があったということ自体知らなかったので、すごくびっくりして、150年前のきれいな花火を見てたんだなと」
茂木さん「大成功で、心配していたことも全部上手くいったので、本当に良かったです。うそのタイムスリップだけれども、それでも見たというような、実感としてもタイムスリップだった感じがします」
裕幸さん「(今後の仕掛け花火)できる限りの知恵を絞って、なるべく仕掛けがわからないような仕掛けを作りたいんですけども、これどうやってやってるのかを、見てるお客さんに感じてもらえたらいいのかなと思います」
300年前、玉城朝薫が作り上げた宮廷芸能・組踊。集まった観客は、復活した花火によって琉球王国時代へといざなわれているようでした。