泥を塗りつけ厄払いをする宮古島のパーントゥ。去年、ユネスコの無形文化遺産に登録されました。世界の奇祭と登録されてから初となる、パーントゥを取材しました。
宮古島市島尻。人口およそ340人の小さな集落。普段は静かな時間が流れています。しかし、年に1度、大勢の人で賑わい、興奮に包まれる日があるんです。それがパーントゥが現れる日!
むかしむかし、島尻のクバマという浜に、異様な形相をしたお面が流れつきました。
村人たちは神様がやってきたと考え、お面を崇めていました。するとある日、村の男がお面を被って集落内を駆け回ったのです。これがパーントゥの起原だと言われています。
島尻で数百年前から続くとされるパーントゥは、神聖な井戸の底からとった泥を塗ることで、無病息災などを祈願する伝統的行事。
国指定の重要無形民俗文化財(1993年)に指定され、去年、上野野原と共にユネスコの世界無形文化遺産にも登録されました。
島尻自治会・宮良保会長「こういう小さい島尻から、世界に発信されるわけですからね、非常にうれしいことですね」
午後5時。通りには大勢の人が。パーントゥが現れると、集落は一気に賑やかになります。
「ぎゃーーーー!」「1年健康で頑張ります」「おうちにいきたい、(おうち帰る人?)はーい(涙)」
パーントゥは今年、赤ちゃんが生まれた家にも訪れます。
「ひゃー」「(赤ちゃんに泥つける)ありがとう~こっちかよ~」
川田さん夫婦「風邪ひかずに元気に、健康で、1年間またがんばります」川田さん家族「せっかくお化粧したのに。もうメイクが台無しだわ。美人?あはは」
取材中の私の元にも・・・。
大勢に囲まれ大人気のパーントゥ。しかし、見物客が増えたことで悩みも増えたといいます。
宮良自治会長「パーントゥは走って泥を塗るんですけれども、人がいっぱいいたら走る場所がない。(パーントゥを見ようと)たまに屋根に登ったりする人もいるんですよ。こういうことも非常に危険ですので、やめてもらいたいと思っています」
また、数年前から「服が汚された」というクレームが増えたのに加え、怒った男性がパーントゥの身にまとっている草を引っ張るという事態も起こりました。
島尻自治会では開催日を公表することを控えたり、祭りの趣旨を理解してほしいとして「苦情は受け付けない」と周知したりしています。
観光客「(Q:服装は)パーントゥ用に持ってきました。捨てて帰ります」「(Q:携帯も防水?)そうです。パーントゥのために」
また、1カ月前から準備を進め行事を支える青年会にも課題が。
島尻青年会・山内隼人会長「今13人ですね。来年、再来年、徐々に2人、3人と、どんどん減っていく。入ってくる若者が今いないので。病気とかを払いのける大事な役割かなと思って、パーントゥをやる青年たちもその意気込みでやっていると思います」
祭り開始から時間がたつにつれて通りはどんどん人で埋め尽くされ、パーントゥは身動きがとれないほどに。
そんななかでも祭りの間ずっと動き続けるパーントゥをサポートしたり、泥の塗り直しや草を補強したりする役割も青年会が担います。
祭りも終盤、子どもも大人も交通整備をする警察官も、みんな泥だらけです。
地元住民「これからの継承が課題だと思いますので、地域の繁栄、無病息災、個人の健康を祈る趣旨だけは変わらないで、今後も継続して継承していきたいと思います」
世界に認められたパーントゥ。悲鳴と笑顔いっぱい一日には、伝統を思う人々の思いが溢れていました。