多くの人が抱えているであろうコンプレックス。できるだけ隠してしまいたいと思う方がほとんどだと思いますが、それを赤裸々に語ってしまおうと呼びかけている人たちがいます。インターネットでサイトを運営している2人の大学生を取材しました。
「身長が低い。」「笑顔がブサイク。」「名前が嫌だ。」「自分の人生を生きられない。」「 “普通 ” に振り回されてきた。」
パソコンの画面上に映し出される言葉たち。これらは、コンプレックスをテーマにした「コンプレックス大百科。」に掲載されているものです。
このサイトは、なかなか人に話すことのないコンプレックスや、それをどのように乗り越えたのかを赤裸々に語るというもので、目的は「どんな人生にも価値がある。」と伝えるためです。
運営しているのは、琉大生の松田和幸さん(23)と映像制作などのを手がけるアーティストTGすこ太さん(22)。
2人は様々なコンプレックスの話を聞き、取材しています。この日は極度の上がり症を克服した男性を取材していました。
瑞慶山さん「中学校2年生のときに学校全体の前で話す機会があったんですよ。」「前に立って(マイクを)持った瞬間、頭の中が真っ白になって、手が震え始めて、作文用紙が『バサバサバサバサ』となってそれがマイクにあたるぐらい作文用紙が揺れて、それで会場がどっかーんと(なった)。」「そこから上がり症がスタートした。」
取材と執筆を主に松田さんが、写真撮影を主にすこ太さんが担当しています。
松田和幸さん「今の世の中の価値観って『こういう人が可愛い』とか『こういう人がかっこいい』とか、画一的なみんな同じような価値観で物事とか人を判断していると思う。」
すこ太さん「『生きているだけで素晴らしいんだよ』みたいなことを表現したいなと思っていた。」「色んな人のコンプレックスを集めてメディアにしたいと(思った)。」
「コンプレックス大百科。」を考案したのは松田さんです。それは松田さん自身の幼少期のコンプレックスが原点でした。
松田和幸さん『自分がいなくなれば、この人たちは多少幸せになれるかな』と思った。」
今、話題を集めるコンプレックス大百科。考案した松田さんの原点もまたコンプレックスでした。
松田和幸さん「両親がずっとお金のことでけんかしているような人たちで、それを見ながら、当時、自分にお金がかかっていることは、5歳ぐらいのときに理解していたので、『自分がいなくなれば、この人たちは多少幸せになれるかな』と思った。」
心理学の専門家は、コンプレックスは幼少期に親などから影響を強く受けて形成されることが多いと説明します。
琉球大学・伊藤義徳准教授(臨床心理学)「トラウマになるような後々までこだわってしまって、とらわれてしまうようなつらい経験というのは、親子関係とかレイプ。」
松田さんがコンプレックスを乗り越えたきっかけは、アルバイト先で掛けられた言葉でした。
松田和幸さん「『他人をうらやんでいるだけじゃ何も変わらないというか、自分の人生は自分で変えていくしかない』と言われて、『確かに』と思ったんです。」「そこから休学してフィリピンに行きまして、人生って楽しんでいいんだなというある種の衝撃を受けた。」
今回2人が取材した瑞慶山剛さん(20)。大勢の人の前での失敗が原因となって「極度の上がり症。」になったと言います。
瑞慶山さん「そのトラウマというか(コンプレックスが)スタートして、そこから部活も(影響が出始めた)。」「イップスという野球選手には致命傷と言われている病気にかかって、ボールが思ったところに投げられなくて。」
影響は人間関係にも…
瑞慶山さん「相手がどう思っているとか思ってなかったんですけど、ものすごく相手に関して敏感になり始めて、そこから少しづつ女性と喋らなくなった。」
琉球大学・伊藤義徳准教授(臨床心理学)「(コンプレックスを)思い出すとつらいので余計そのことを抑え込んだり、思い出さないようにするために、特定の人間関係を避けようとしてしまったり(する)。」
瑞慶山さん「まず、すっきりしました。自分の過去の出来事とかトラウマを話して、自分自身と向き合うというところで、すっきりした。」
取材の5日後、サイトには瑞慶山さんの記事が掲載されていました。
琉球大学・伊藤義徳准教授(臨床心理学)「コンプレックスに関わろうとしている人たちの姿がたくさん集まっていて、読めるというのも貴重な場だと思います。」
松田和幸さん「(コンプレックスの)色んな乗り越え方を掲載しているので、『自分だったらこういうやり方でコンプレックスを乗り越えていけるのでは』ということを感じてほしい。」
TGすこ太さん「(今後は)結構年取ってるおじちゃん・おばあちゃんから話を聞いてみたいと思います。それぐらい人生積んでる人たちが改めてコンプレックスと向き合うと、どういう言葉を発するのかというのは興味があります。ぜひいましたら、お願いします。」
「コンプレックス大。そこには、自分自身と懸命に向き合った人たちの姿がありました。