不登校でユーチューバーとして話題を集める10歳の少年「ゆたぼん」。社会に一石を投じるゆたぼんの言葉と行動は、同じ悩みを抱える家族にとって、励みになっていました。
講演前のゆたぼん「緊張はちょっとしてるけど、でも、わくわくする。」
講演前の来場者「話を聞いてみないと賛成も反対もできないと思ったので、興味本位で来ました。」
「不登校のユーチューバー」として注目を浴びている「ゆたぼん」こと中村逞珂(ゆたか)くん。先月、親子で講演会を開きました。
大阪出身のゆたぼん、麦わら帽子と甚平がトレードマークで、去年6月、沖縄に移住してきました。
ゆたぼん・ユーチューブの動画「学校と命やったら、絶対に命が大切や。だから、死にたくなるくらいなら学校には行かんくでいい。それぞれみんなが学びたいタイミングで学ぶねん。苦しみながら学校に行くのはやめよう。」
インターネットを通じて、学校が嫌で行きたくないと悩む子どもや、その親たちを励ますメッセージを発信し続けています。
ゆたぼん「オレは今10歳で、学校に行きたい時に行く自由登校です。」
ゆたぼんが学校に行かなくなった理由、そこには、宿題をめぐる「ある」出来事がありました。
ゆたぼん「宿題をやめたら、先生に『やってきなさい』と言われたけど、オレはやりたくないのでやりませんでした。じゃあ、先生に次の日学校に行ったら居残りさせられて、先生に叩かれました」
宿題をしなかったところ、休み時間に無理やりやらされることに、学校への不信が募りました。
母・きよみさん「(子どもが)元気に生まれてきてくれたらそれでいい、命さえあればそれでいいとしか思わないと思うので。そこにたどり着いたという時点なんですね、そこでようやく、受け入れようって、ゆたかくんの気持ちを尊重しようと思えた。」
父・幸也さん「本当に子どものことを思わないで、自分たちのことを、世間体とかそういうことを気にしていたら、後悔していたんじゃないかなと思います。」
家族で悩んだ末、「学校に行かなくていい」という答えにたどり着きました。ただ、学校に行かずユーチューブで活動するゆたぼんの姿に、インターネット上では、様々な意見が飛び交っています。
賛成:ダルビッシュ有(メジャーリーガー)「自分の好きなように生きればいいよね。」
反対:楽しんご(タレント)「不登校は不幸だよ。」
賛成:茂木健一郎(脳科学者)「学校に行かないと常識を学べないとゆたぼんを批判する人は、学校で何を学んできたんでしょうか?」
反対:高須克弥(医師)「試験もなんにもないお化けの世界で遊んでいると、常識知らずになります。」
ゆたぼん「俺なんて、日本中の人たちが石をバンバン、バンバン、インターネットで投げられてんねん。でも、俺は、そんなの気にしぃひん。」
そんな「ゆたぼん」の言葉に励まされた家族がありました。
ゆたぼんに励まされた家族の母「強い子だなと思いました。自分の意思をしっかり持って、自分らしい生き方をしているっていうのはすごい格好いいなと。私も悔いの残らないように子育てを頑張りたいなと思いました。」
ゆたぼんに勇気づけられたという、那覇市に住むこちらの家族。
ゆたぼんに励まされた家族の母「私の息子が学校に行きたくないという同じ悩みを抱えていた時に、学校に行かないで楽しんでいるゆたぼんくんを見て、どういう生き方をしているのかなって、興味を持って、一緒に講演会に行きました。」
学校に行きたくないという悩みを抱えいるのは、3人兄弟の末っ子、小学2年生の海斗(かいと)くん。
海斗くん「はじめて学校に行く時、2年生になってから行って…」
きっかけは今年4月、1年生から2年生に進級した際、新しくなった担任の先生と上手く信頼関係が築けず、海斗くんの気持ちが学校から離れてきました。
ゆたぼんに励まされた家族の母「心の中ではあの頃のように元気に(学校に)行ってほしい。いってきますって言ってここでニコニコして行くっていうのはまだ、その気持ちを持っているんですけど、彼なりの生き方でもいいのかなって。」
いい大学に行けなくなるといわれたりするなか、「学校に行かない」という決断の後押しになったのが、ゆたぼんの親子講演会でした。
父・幸也さんの話「理由がわからないけど、学校に行かなくなったっていう子がすごい多い。学校に合わない子がいるんであれば、学校に行かない選択、自由登校っていう選択も、1つの選択肢として認められるべきなんじゃないかなと思うんです。」
学校に行きたくないという理由を深堀りして、子ども追い詰める必要はないと考えることができるようになったからだと言います。
ゆたぼんに励まされた家族の母「白黒はっきりさせようみたいな、行きたくない理由がこれ、だったら、それを直すから行くっていうものではないんだなっていうのは感じましたね。本当にこの子に寄り添ってあげたいなって思います。」
まっすぐに自分の意思を伝えるゆたぼんや、彼を支える家族については。
ゆたぼんに励まされた家族の母「大人の批判的な言葉がたくさんゆたぼんに降り注いでるじゃないですか、そんなの振り切って、気にしないって。そこを自信を持ってやっているゆたぼんとゆたぼんの家族は、すごいかっこいいなって思います。」
ゆたぼん「人生は冒険だ!」
講演会の来場者「自分が苦しいっていう生き方じゃない方を選択するっていう選択肢もあるんじゃないかなって、自分も体感として感じていたので、自由に生きるっていうことは大事だと、再確認させていただきました。」
不登校の原因が複雑かつ多様化している今だからこそ、「ゆたぼん」がした決断をどのように受け止めるべきか、社会の在り方が問われているのかもしれません。
金城キャスター:ここからは、取材をした石橋記者です。今回、第2弾ということですが、ゆたぼんの行動、言葉に励まされたという人のケースを紹介してもらいました。
石橋記者:はい。他にもゆたぼんの言葉に救われたという同世代の子どもや、その親がいるのが取材で分かります。「正しい答え」を見つけにくい難しいテーマだと思います。不登校の場合、苦しんでいるのは当事者の子どもたちですが、親もまた、同じように苦しんでいます。
石橋記者:何事もなく、学校に行って教育を受けてくれる。ある意味、親はそれで安心するわけですが、果たしてそれが「子どもにとっての正しい選択なのか」そこが問題なんですね。
中村キャスター:子どもが行きたくない!と言った場合に、子どもを守るために、学校に行かせないというのは、親にとっては決断を迫られますね。ただ、気になるのは、行っていないときの教育はどうなるのでしょう。
石橋記者:誤解しないでほしいのですが、ゆたぼんの場合、前回も触れましたが、決して学校に行くことがダメという考えではありません。自分が壊れてでも、無理をして行くべきではない、と訴えているんですね。
石橋記者:一方で、指摘されたように学校に行っていないときの教育。これには、子どもにとっての大切な1年を、どのように親が教育的な担保をしてあげるのか、課題は残されているように思えます。
石橋記者:ただ、ネットに上がる根拠のない誹謗中傷は、ゆたぼんや、その家族の実態を伝えるものではないことは、取材して強く感じたことです。