今や、なくてはならない存在となっている外国人労働者。しかし、日本で働き続けるために在留資格を証明する在留カードを偽造する犯罪が起きています。その闇のビジネスに迫りました。
金城圭吾記者「今や外国人は貴重な労働力となり、いたるところでその姿が見られます。しかし警察はそんな外国人材の逮捕に踏み切ったのです」
こちらの警察が押収した4枚の在留カード。多くの項目で改ざんが確認されています。
那覇警察署・金城重成副署長「今回の偽造在留カードは国籍、氏名、生年月日、写真が真正の情報で、住居地、在留資格等は偽りの情報です」
所有者は、県内の飲食店で働いていたベトナム人。在留期間を偽り、1年から3年、不法残留していたことが明らかになり、ベトナムに強制送還されました。彼らは元々、正規の就労ビザや技能実習ビザで入国していました。しかし中には、日本で働く資格を持たない留学生も。
県内で就労する外国人「日本語学校に入っている留学生は、他の人からお金を借りて、こっち(日本)に来て勉強しているから、こっちで働いてお金を(ベトナムに)送って(借金を)払う」
県内では2014年からの5年間で不法残留で摘発される外国人が急増し、去年は11人が摘発されています。また、全国でも不法残留者は年々増加。摘発に至っていない人も含めると、およそ7万4000人にも上っています。
その背景にあるのが全国的に横行する「偽造ビジネス」。県内にも広がり始めていることがわかりました。
県内における偽造ビジネスの実態は…。
那覇警察署・金城重成副署長「偽造在留カードの入手方法にインターネットを使用するケースが増えており、これまでにはインターネットを介して県外、および国外から入手するケースも見られます」
今回逮捕されたベトナム人もインターネットを通じてカードを手に入れたことを明かしています。
偽造ビジネスによるカードの販売経路はこうです。国内に複数存在するカードの偽造拠点。仲介人となる人たちがSNSでカードの注文を受け付け、偽造拠点に発注。仲介料を上乗せし、販売するのです。
今回の事件でも、警察は逮捕した4人の供述をもとに突き上げ捜査を実施。そのうち1人にカードを提供した仲介人を突き止め、逮捕しました。
仲介人になっていたのは香川県で造船員をするベトナム人の男で、フェイスブックを通じて購入者にパスポートの画像を送らせ、それをもとに偽造拠点に偽造在留カードの作成を発注していました。販売価格はわずか1万5000円でした。
金城圭吾記者「香川から発送された偽物のカードは那覇市内のアパートに届き、男の手に渡りました」
カードを購入した男が当時住んでいたアパート付近で取材していると、フェイスブックで、偽造カードの販売を行うアカウントを見たことがあるというベトナム人の男性に遭遇しました。
手口を知るベトナム人男性「よくFacebookで流れている(偽造の)在留カードとか免許とか結構多い」
実際にFacebookを開くと-
画面にはカードの販売を行う多くのアカウントや、実際に販売されたと見られる数えられないほどのカードが映し出され、需要の高さを物語っていました。また、仲介人と購入希望者のやり取りは電話や無料通信アプリで行われるのか、電話番号やQRコードが掲載されていました。
ベトナム人男性「いろいろな写真がある。在留カード。日本語能力試験、N1からN5まで。(試験を)受けなくても、お金で(証明書を)買える。これは学校の学生証」
なんと、在留カードだけでなく、様々な公的な証明書の偽造も行っていたのです。さらには、購入希望者を安心させるためか、実際にカードを購入した人とのやり取りの写真がアップされていました。
仲介人「あしたカードを送ります」購入者「わかりました」仲介人「これがカードです」「学生証はもう少し時間がかかります」購入者「わかりました。送ったら教えてください」
ベトナム人男性「(偽造在留カードを)職場にコピーして出してもばれないみたいなので。機械でチェックしないとわからない。だからこの理由で(日本で)働きたいから在留カードの偽物を作っている」
政府は少子高齢化が進み、労働人口が減少するという国内の課題を解決しようと、今年度から改正入管法を施行。今後、外国人材のさらなる受け入れ拡大が見込まれる中、悪質な偽造ビジネスの取り締まりは避けては通れません。
那覇警察署・金城重成副署長「警察としては引き続き不法滞在者の検挙を推進するとともに、不法滞在を助長する在留カードの偽変造、不法就労等に係る犯罪の取り締まりを強化していくこととしています」