朝から物々しい雰囲気に包まれた本部港
船越遼太郎記者「こちら本部港の塩川地区では、土砂の搬出が予定されていますが抗議する市民がトラックの行く手を阻んでいます」
午前中はトラック1台分の土砂を船に積んだだけで他のトラックは待機を余儀なくされました。
現場で抗議する人「何度も何度も県民は(新基地建設)反対だということを民意で本当にしていますよね。それを無視して政府が県民を馬鹿にするのもほどほどにしなさいよと思います」
港の使用許可は今月末が期限となっていましたが国は5月以降も継続して使う申請を出していて管理事務所はあすにも許可を出すことにしています。埋め立てを阻止したい県は…
玉城知事「国が私人になりすまして行政不服審査制度を用いる手法等がまかり通れば、強制的に意向を押し通すことができるようになり、地方自治、民主主義が破壊されます」
埋め立て承認撤回が取り消されたことを不服として県は国と地方の争いを仲裁する第三者機関に申し出ました。
玉城知事「数々の指摘を政府が一顧だにすることなく違法な工事を強行することは看過できず、違法な裁決は取り消される必要があります」
何度突きつけても立ち止まることさえしない国、辺野古に基地を造れるのか?そこには数多くの問題が…
辺野古の新基地建設で問題となっている”軟弱地盤”大浦湾側の埋め立て区域のおよそ6割にも及んでいました。この場所の海をのぞいてみると…大規模なサンゴの群集が生息していました。”コモチハナガササンゴ”と呼ばれフワフワと揺れる姿が印象的です。このサンゴの下に軟弱地盤が広がっているというのです。国は今後、この場所の地盤を改良したうえで基地建設を進める方針です。
そもそも”軟弱地盤”とは、どんなものなんでしょうか?
日本大学理工学部・鎌尾彰司准教授(地盤工学)「地盤調査から得られるものが”N値”と言っておりまして、通常、N値は0から50の数字で表示されます」
“N値”は、標準貫入試験という調査によって得られます。重りを落下させて、杭を30㎝打ち込むのに必要な回数です。数字が大きいほど、地盤が固いことになります。
日本大学理工学部・鎌尾彰司准教授(地盤工学)「例えば(N値)0っていうのは、このハンマーをここに乗せただけで30㎝貫入しちゃいますよと。こういうのが(N値)0ですから」
N値0(ゼロ)は、重りを使わず、杭を設置しただけで自然と沈んでいくほど柔らかいことを示しています。地盤工学を専門とする鎌尾准教授に軟弱地盤を再現してもらいました。
石橋記者「抵抗なくすっと入っていきます。砂っていう感じがしない、例えるなら、マヨネーズ。これがいわゆるN値0の柔らかさ?」
日本大学理工学部・鎌尾彰司准教授(地盤工学)「もちろん、これもN値0の強度になります。」
大浦湾側に広がる軟弱地盤、最も深い所では海面から90mにまで達していました。
日本大学理工学部・鎌尾彰司准教授(地盤工学)「軟弱地盤といえども下に行けば行くほど土の重さがかかってきますので強度は上がっていく」
特に、水深70m以下の部分は”非常に固い”層に分類され国は地盤改良が必要ないとしています。ところが…、
石橋記者「上から押すと結構固い感じがしますが…(パキっ)真っ二つに割れるんですね…」
日本大学理工学部・鎌尾彰司准教授(地盤工学)「岩盤みたくは固くない、もともと粘土ですので、そのように割れてしまうと…」
石橋記者「固いと言っても柔らかいなかで固いというのが、まさにこれというかんじですかね」
日本大学理工学部・鎌尾彰司准教授(地盤工学)「そうですね」
国が説明する”非常に固い層”…それは、大人の力で簡単に割れる程度の「固さ」でした。
石橋記者「地盤改良せずに進めていくっっていうところは、問題がある?」
日本大学理工学部・鎌尾彰司准教授(地盤工学)「長期間にわたって沈下が続くっていう特徴があります。そういう沈下量が大きくなってくる可能性がある。特に怖いのは、段差ができてしまうことですね」供用していて非常に危ないような構造物になりますので、補修がですね、すぐにでも必要になるということになります」
地盤改良の問題は工事そのものだけにとどまりません。国交省が県の埋め立て承認撤回を取り消すための判断材料となった鑑定書。
「より精緻な解析を実施するのが有益と考えられる」
詳細な地盤調査の追加が必要だと作成の依頼を受けた専門家の意見が記されていました。ところが、国交省の裁決書には追加調査の必要性に全く触れていませんでした。
日本大学理工学部・鎌尾彰司准教授(地盤工学)「様々な検討事項がまだあるよということもあわせて書いてありますので、裁決書というのは残念な形でこの鑑定を受けていないということで非常に残念」
沼尻キャスター「研究者も今回の「撤回の取り消し」の根拠を疑う話でした。ここから取材した石橋記者です。さて、軟弱地盤の問題は何度か番組でもお伝えしています。国がいう地盤改良の工事は本当に可能なのでしょうか?」
石橋記者「国が検討している地盤改良の工法の1つに「サンドコンパクションパイル工法」というものがあります。砂の杭を打ち込んで地盤を固める方法です」
作業船から筒状のパイプを打ち込んで砂を投入した後、圧力をかけて砂を押し込みながら締め固めていきます。
これを繰り返して砂杭をつくります。7万7000本近くの砂杭を打ち込む工事なんですが取材した鎌尾准教授はそもそも論として大きな問題を次のように指摘します。
日本大学理工学部・鎌尾彰司准教授(地盤工学)「今、現有の我が国が持っている地盤改良船では海面から70mまでしか届きません。ここの地盤は海面から90mありますので、最後の20mは届かない、地盤改良できないエリアになってしまいます」
石橋記者「要は、誰もやったことがない工事で、作業ができる船も”ありません”ということなんです。届かない残りの20mの部分について国は、地盤改良できるとしていますがVTRで指摘したように固い地盤とは言えず、県の撤回を取り消したの国の根拠こそ軟弱だったと言わざるを得ない状況でさらに、軟弱地盤に打ち込む砂杭を造るための砂をどうやって確保するのかという問題もあるんです」
日本大学理工学部・鎌尾彰司准教授(地盤工学)「砂の量として650万立法メートル、東京ドームに換算しますと5杯分くらいそれだけの砂をどこから供給するのかっていうのも明らかにされていない」
石橋記者「およそ7万7000本の砂杭をつくるのに650万立法メートルの砂が必要です。これは、県内で採取される砂利でまかなおうとすると3年から5年分の量に相当します。国は地盤改良に3年8カ月かかると説明していますが作業船や砂の供給の問題を抱えているなか果たしてこの期間で十分なのか疑問が残ると鎌尾准教授は指摘していました」