みなさんは「助産院」をご存知でしょうか。医師ではなく助産師がお産に立ち会う施設です。県内で唯一、入院施設を備えた沖縄市の助産院。この平成の時代にたくさんの出産・育児を見つめてきた助産師を取材しました。
沖縄市にある母子未来センター。5人の助産師が常勤していて、お産の前から、お母さんたちの相談に乗り、産後のケアまで、細かくサポートしてくれます。開設以来、ここでお母さんたちに頼りにされているのが宮里直美さんです。宮里さんは病院で看護師として働いていましたが、助産師になりたいという夢を諦められず、この仕事を志しました。
宮里直美さん「(病院では)もう少しお話ししたかったけど、途中でおわって次の方っていう風にならざるえないからそういうところでジレンマがあったり、今は自分が持っている全霊で関われるっていう意味では、私の気持ちも伝わってくれているのかなって気はします」
宮里さんが助産師として働き始めたのは平成3年。以来、27年間、様々なお産に立ち会ってきました。
クバの葉助産院助産院橋本恵里子さん「私もお産宮里さんにお願いしたんですよ。あの時にすごい感動した。宮里さんの手がすごいあったかくってこの手でやってるんだって。いいこと言っちゃった~」
この日は1人の妊婦さんが、検診にやってきました。
宮里さん「元気だからね、大丈夫。楽しみだね~」
安慶名さん「もうすこしゆっくりでもいいよ~みたいな)
宮里さん「令和で産みたい?」
安慶名さん「うーん、どっちですかね」
28日にお産を控えた安慶名さん。この助産院で2度目の出産をします。
安慶名真弓さん「結構、先生がいないっていうので不安を感じる方もいらっしゃるみたいなんですけど、ベテランの助産師さんがずっと見ててくれるので、なにあってもすぐに対応してもらえるので。病院とかだとパパっと(検診が)終わってしまうんですけどここは、可愛いね、元気に育ってるよーとか宮里さんが声掛けして頂きながら。また出産のときも、宮里さんが迎えてくれてとても痛くて、来た時に宮里さんの顔みたらすごくほっとして宮里さん!みたいな感じで」
妊婦さんにとっては心強い助産院。しかし、今、助産院で出産する人は少なくなっています。というのも、県内で入院施設のある助産院は、ここ1カ所だけなのです。
1人の助産師に産前から産後まで、一貫してサポートしてもらえる助産院。出産を前に見学に来る人も多くいます。
宮里歩さん「フリースタイルで(出産を)やっているところを家の近くで探しているんですけど、助産師不足みたいで今はやってませんっていうところもあったりしたので」
少子化が課題になっている中でも、ここ沖縄では全国1位の出生率を維持しています。しかし、妊婦さんたちにとって心強い存在である助産師の数は赤ちゃん1000人あたりでみると、全国が36.6人なのに対し沖縄県は26.1人と少ない状況です。
平成のお母さんたちを見守ってきた宮里さん。出産、子育てをめぐる環境の変化から助産師の役割はますます大きくなっていると考えています。
宮里さん「核家族化ということで、なかなか支援してくださる方が周りにいないという方が結構増えてきたんですよ。もんもんと一人で悩んで、泣きながら暮らしているっていう方がだんだん増えているのかなと思うと、やっぱり入院中からなにか困ったらここが相談窓口よっていうところをどんどんアナウンスしていかないといけないかなという風に思っています」
さらに、宮里さんは、昭和と大きく変わってきたことが、もう一つあるといいます。それは「お父さんたちの役割」です。この日は、妊娠中のお母さんとお父さんたちが参加して陣痛や出産、そのあとの子育てについて学んでいました。
参加者お父さん「一緒に行きなさいと言われて・・」
参加者お母さん「1人目でわからないので一緒に勉強したほうがいいかなと」
参加者お父さん「1人目なんですけれども、育児休暇を取る予定なので家事とか食事とか運転とかはやろうかなと思っています」
宮里さん「わりかしお父さんって、子育てはお母さんの手伝いみたいに捉えられていたのが、やっぱり自分の子だから一緒に夫婦協力して育てて、育てようみたいな感じになってきているかな」
お父さんは外で仕事、子育てはお母さんだけの役割・・・そんな考え方は過去のものとなっていますが、それでも、お母さんたちの負担は大きいものです。宮里さんは、助産院が彼女たちの支えになればと考えています。
参加者お母さん「二人っきりの日中の過ごし方よりは、ここで実際、お友達になりもして。友達ができてそこから広がっていくので自分のなかでは役に立ってます」
宮里さん「私たちの一番の目標は身近にとなりの助産師っていうふうに何か困ったらこの人に相談行ったらいいよっていう人がどの地区にでもいる、歩いていけるような、近所に助産師がいるっていうのが私たちの目標」
沖縄で1日に生まれる赤ちゃんは平均で44人。毎日それだけの感動が生まれるとともにお母さんたちの大変な毎日がスタートします。時代が変わっても尽きない子育ての苦労。宮里さんは、一番近くでお母さんたちを支え続けます。