3月に入り各地で卒業式が行われ様々な”旅立ち”の姿が見られます。きょうは戦争によって学ぶことを奪われた77歳の女性のために中学生が自分たちの卒業式を前に心のこもった”たった一人の卒業式”を開きました。
卒業式入場の様子「ただいまより音楽に合わせて卒業生、牧野順子さんが入場します」
花道通る牧野さん大勢の拍手の中、3年生が作る花道を笑顔でくぐるのは牧野順子さん。77歳の卒業生です。きのう、那覇市立寄宮中学校では、今度の土曜日に控えた卒業式を前にある特別な「卒業式」のリハーサルが行われていました。
生徒会長の知花ももかさん。彼女を中心に3年生40人の実行委員会によって準備しているのは”たった一人の卒業式”その主役は・・・ことし77歳になる牧野順子さんです。74年前の沖縄戦による混乱で学校での学びを奪われた牧野さんでしたが5年前、71歳の時、夜間中学「珊瑚舎スコーレ」に通い始め、ことし、ついに卒業をつかみとりました。
今回の卒業式は、珊瑚舎スコーレから学校で卒業証書を渡してほしいと中学校が依頼され実現したものです。これは先月(2月13日)牧野さんの自宅まで招待状を手渡しにいったときの場面。生徒会長のももかさんも涙でいっぱいでした。
迎えた卒業式-沖縄戦のために学びを奪われた牧野順子さん。全校生徒およそ600人の拍手に迎えられ”たった一人の卒業式”の始まりです。
司会「牧野さんの卒業式を挙行すべく私たち3年生の中から実行委員を立ち上げ、きょうまで一生懸命計画を練ってきました。そしてきょうここにいる寄中生全員で牧野さんの中学校卒業式をしたいと思っています」
校長「卒業証書。牧野順子」「卒業おめでとう。良く頑張りました」
働きながら、夜間中学「珊瑚舎スコーレ」で学んだ証「卒業証書」を受け取りました。
送る言葉「牧野さんのどんなことがあっても自分の目標を見失うことなく、前向に物事に取り組む姿に感銘を受けました。僕も牧野さんのように、自分の意思を貫き、目標を持って、笑顔を絶やさずに生きていこうと思います。きょうが牧野さんにとって忘れられない1日になるとうれしいです」
順子さんの卒業式のために、寄宮中学の3年生の手作の卒業式では順子さんの思い出も紹介されました。戦争に翻弄されながらも走りぬいた77年、順子さんの目からは涙があふれ出しました。
去年、脳梗塞で倒れ、以来、言葉を話すことが困難な順子さんの代わりに娘のみどりさんが感謝の気持ちを代弁しました。
答辞「通うのは大変だったと思うんですけれども、第二、第三の青春というか、そういう形で学校生活をものすごく楽しんだと思います」「きょうこのように素敵な卒業式を企画していただいて、卒業式を迎えられたので、頑張って練習したので母に言葉をもらいたいと思います」
牧野さん「ありがとうございました」みどりさん「母からの感謝の言葉です。一所懸命練習しました。本当にみなさんありがとうございました」
3年生(実行委員)男子生徒「1カ月前から準備をしてきて成功することもできたのでとても感動しています」女子生徒「大人になっても夢を叶えられているということにとても感動した」
知花ももかさん「(牧野さんは)本当に頑張ってきたと思うので、その卒業式を私ができたというのは、本当に光栄なことだと思っています」「自分の卒業式より泣いていると思います。明日にならないとわからないんですけど。自分のことより感動が今すごく大きいです」
知花ももかさんが順子さんに質問「最後に聞いていいですか?私たちの卒業式どうでしたか?(知花さんオッケーポーズ)」77歳の同級生のために3年生が開いた”たった一人の卒業式”。忘れられない思い出の式になりました。