特集です。辺野古新基地建設をめぐる国との争いについて玉城知事は、「国地方係争処理委員会」に審査を申し出ました。争いを仲裁する”第三者機関”に県は何を訴えていくのか、久田記者とお伝えしていきます。
久田記者「はい、この「国地方係争処理委員会」に新基地建設問題をめぐって県が審査を申し出るのは3度目です。最初の申し出は2015年(11月2日)、審査の対象に該当しないとして、却下されました。そして2度目の申し出はおととし(3月14日)。この時は、国の関与が違法かどうか、「判断しない」という予想外の結論となりました。今回、この2度の審査に関わった、国地方係争処理委員会の前の委員長にお話を伺いました。」
「国地方係争処理委員会」の委員長を務めていた、小早川光郎さん。委員会の制度設計にも関わった人物です。
小早川さんは2015年と16年に県が審査を申し出た、辺野古新基地建設をめぐる争いの仲裁役となりました。
小早川さん「結局はこの制度をつくったときに、これほどの大きな政策的な対立の問題が、を、この制度で処理すると、処理できるとは元々考えてなかったですね」
小早川さんは、2015年に県の申し出を「却下」した際の議論には、「問題が残っている」と振り返ります。国がこう主張した部分です。
「国は、一般私人と同様の立場で承認を受けるものといえ、『固有の資格』において受けるものとはいえない」
県は、新基地建設に向けた埋め立ては基地建設のための埋め立ては外交・防衛に関わり、「国家の行為にほかならない」と主張。
これに対し国は、一般の私人でも国でも、埋め立てを申請する手続きは同様で、国は特別な立場にはないとして、本来国民の権利を救済するための行政不服審査法を使い、埋め立て承認の取り消しを無効化。先月、「撤回」が無効とされたのも同じ理屈です。国が、本当に一般私人と同じ立場で埋め立て承認を受けたと言えるのか。
小早川さん「それは本当にそうなのか(国は一般私人と同様の立場か)、委員会としては問題提起はするけれども」「国土交通大臣の解釈、というものを、国地方係争処理委員会が覆すということは一般的には予定されていない、と」
委員会は第三者機関とはいえ、総務省が設置した機関。省庁の判断を覆し、内閣に法解釈の問題を指摘することには、高いハードルがある。そんなことを小早川さんは赤裸々に語りました。
小早川さん「委員会も、国の行政機関のひとつであると。内閣のもとに置かれている行政機関です」「法解釈の問題というのは、委員会としてはまだ決着はついていないと思いますけども、その点をどう、もう一度考え直すのかどうなのか、というのはこれは政府の全体の問題」
県の申し出を却下した委員会ですが、当時出した文書には「一見明白に不合理」であれば、審査の対象となる―という抽象的な言葉があります。
小早川さん「その辺がまさに『一見明白に不合理』でない限りは(国の判断を)覆すことは予定されていないと…」「うん、まぁこの但し書き。「但し」以下は委員会としてそこをぎりぎりのところまでは考えたつもりです」
この抽象的な表現は、委員会が第三者機関としての存在理由を保とうと抵抗した、わずかな痕跡です。きのう、係争処理委員会に3度目の審査を申し出た玉城知事。しかし、委員会にも限界があるように見えます。
小早川さん「だから今回も、国土交通省がこのように主張されて、それが政府部内で問題とされることなく通れば、そうすると恐らく、いや、どうかな…」