県内企業の様々な挑戦をご紹介する「Qビズ」です。沖縄の食材として、観光客に定番のあの商品の人気が国内で高まっています。そして、その食材の生産を増やそうと、IoTの技術が使われています。
今、特に県外で需要が急上昇しているのが、こちら、海ブドウです。これを早く、そして、大きく育てるには…。
今回、私達が訪れたのは、糸満市にある、海ブドウの養殖場。
日本バイオテック・山城由希取締役「こちらが実験をしている水槽になります」
年間およそ18トンの海ブドウを生産しているこちらの施設で、去年から行われている実験がこちら。
日本バイオテック・山城取締役「二酸化炭素をここに圧縮して、それを海水の中に溶け込ませる」
高濃度の二酸化炭素を水槽に溶け込ませ、生産を増やすというのです。
日本バイオテック・山城取締役「(海ブドウは)すごく売れています。それはもう、足りないくらい、いつも」
今、需要が急激に伸びている海ブドウ、しかしそこには課題があります。海ブドウの養殖にかかる期間は、夏はおよそ1ヶ月間、冬は2~3ヶ月間かかります。
日本バイオテック・山城取締役「採れる量が月によって本当にバラバラなんですね。それは台風が来たりとか、水温が安定しなかったり。そういうのを均一化できるように」
今回の実験装置が、こちら。高濃度の二酸化炭素を海水に溶け込ませるものです。そして、水の中で、自然界のような水流を作る、プロペラ型のスクリュー。
琉球大学工学部・瀬名波出教授「海草も植物ですので、二酸化炭素が多いほうが光合成が活性化します。基本的に光合成が活性化していますので、海ブドウが元気に育つという状態です」
そして、この実験を支えたのが、インターネットを使って情報のやり取りを行う、IoTの技術です。
浦添市にあるIT企業、OCC。糸満市の養殖場にあるいけすの水温や水中の二酸化炭素量を測るph値など、様々なデータが10分ごとに送られ、モニタリングできるようになっています。
OCC・屋比久友秀取締役「今水槽の中がどれくらいの二酸化炭素の濃度になっているかというのは、ほぼリアルタイムでわかることができます」
実験の結果は目を見張るものでした。こちらが、従来の方法で養殖した海ブドウ。そして、こちらが高濃度の二酸化炭素を含む海水で養殖した海ブドウです。従来の生産量より、およそ1.5倍の生産量となったのです。
日本バイオテック・山城取締役「こちらが、今の実験の二酸化炭素とエアレーションをもので、これが通常のものになりますね。長さがだいぶ育って来ているのと、粒の付き方が太めなのと違いがありますし、あと若干、ハリ、触った時の感じが、二酸化炭素の方が元気な感じがします」
海ブドウの品質も向上し、日持ちも2倍になりました。
実験チームでは今後、さらにAI、人口知能の技術も取り入れ、海ブドウの安定した生産を行っていくことにしています。
OCC・屋比久取締役「高濃度の二酸化炭素海水をどのタイミングで、どれくらい水槽に添加したほうがいいのかっていうのを、IOTを使って自動制御していきたいと考えています」
琉球大学工学部・瀬名波教授「沖縄が海草の基地となって、新しい産業を作っていくメッカになるのではないかと期待しているところです」
海ブドウの需要なんですが、近年急激に伸びています。この需要の高まりに答えようと注目されているIoTなんですが、日本語では、モノのインターネットとも呼ばれています。あらゆるものがインターネットにつながり、情報のやりとりをすることといわれていて、例えば自動車なら自動運転、小売なら決済や商品管理に使われています。
農業の分野では、今回のような海ブドウの例以外にも、水田の水の管理、水位をセンサーで測って知らせてくれるもの。鳥獣対策では、獣などが寄ってきたときはセンサーが検知してメールなどで知らせてくれるものなどがすでに国内では導入されています。
総務省ではこのIoT導入の経済効果をおよそ5兆円と試算していて、今後、県内のほかの分野でも広がっていくことが期待されます。