こちらは重度の知的障害を持つ仲村伊織さん。現在15歳、本来ならば高校1年生ですがまだ進学できずにいます。そこにある壁とは。
私たちが伊織くんに初めて出会ったのは今から4年前。伊織くんには重度の知的障害と自閉症がありますが、地域の同級生たちに囲まれて小中学校を普通学校で過ごしました。
すっかり青年の顔つきになってきた伊織くん。スマートフォンを操作して音楽を聞く姿は普通の15歳と変わりません。
母・美和さん「息子の希望が気持ちが置き去りにされている状況なので、ぜひ皆さんで検討していただきたい」
今年4月、伊織くんの両親の姿は県庁にありました。
去年、伊織くんと両親は県立の普通高校へ学校推薦での進学を希望します。しかし、県の推薦基準に障害のある子の基準がなかったことから、一般入試を受験。文字の読み書きができない伊織くんは一次、二次ともに不合格となりました。
そのため、両親は他府県で取り入れられている障害者独自の評価方法を沖縄県でも取り入れてほしいと、県に対し、あっせんの申し立てをし、県議会へも陳情をしたのです。
父・晃さん「大人が考えない発想で子どもたちがかかわっているのを自分たちは見てきたので、それを高校受験という壁で諦めることができなかったので今日に至った」
現在、伊織くんは来年の進学に望みをつないで週3回、学習支援教室へ通っています。スマートフォンやタブレットの操作が得意なことを生かし、意思疎通をアプリケーションを使ってできるよう訓練しています。
そして、午後はヘルパーさんと畑へ。気分が乗らないことも多い伊織くんですが、事業所の人たちに促され、なんとか水やりができました。
この日の夕方、笑顔で帰宅した伊織くん。一緒にいるのは大好きな同級生の悠河くんです。
中学校の卒業式、なかなか壇上に上がれない伊織くんの手を取ったのが悠河くん。高校進学後、伊織くんのヘルパーになりたいと、この日から放課後、研修に入ることになったのです。
美里工業高校1年・小倉悠河くん「伊織もおれのことわかってくれているかわからないけど、名前を呼んでくれるし、一緒にいて楽しいから、この仕事を希望しました。3年間、伊織がいて当たり前だと思っていたから、何も(大変だと)感じることはなくていて、当たり前の存在だった」
伊織くん「ゆうが!ゆうが!」
母・美和さん「『大きい学校、大きい学校』というので、高校に行きたい彼の気持ちはすごく感じ取っていた。進路はバラバラですが、自分も同じように仲間が作れる普通高校が、本人の視点で言ったらそれが自然な流れ」
父・晃さん「『特別支援学校でも仲間作れるさ』というんだけれども、彼のいう『学校』は、障害のない友達が自分にちょっかい出したり、できないならやってあげるよという仲間が自然にできてきた。親としては先にいなくなる存在なので、一人でも多く残してあげたい」
15年間、地域の仲間と一緒に成長してきた伊織くん。「おおきいがっこうへいきたい」という言葉は社会への訴えにも聞こえてきます。
障害者と健常者を分けることなく行なう「インクルーシブ教育」。伊織くんを取り巻く仲間たちは、障害者を「特別な存在」ではなく「当たり前の存在」として受け入れること私たちに教えてくれています。