美しいユリ畑のあちこちから伸びる土にまみれた手。印象的です。世界各地の映画祭で今、絶賛されている県出身の女性監督の映画「土の人」の一場面です。
作品では、基地問題にさらされ続ける沖縄の今が象徴的に描かれていました。
沖縄戦などの記録フィルムに似合わない音楽と戦争を想像させる抽象的な場面が続く短編映画「土の人」。監督したのは那覇市出身の美術家で映像作家の山城知佳子さん(42)。
今月8日、60年余りの歴史を誇るドイツの「オーバーハウゼン国際短編映画祭」で、女性監督に贈られる「ゾンタ賞」を受賞するなど、ヨーロッパやアジアで高い評価を得ています。
映画では軍事基地のある架空の土地に生きる「土の人」が描かれます。
ラストシーンでは、土に生きる人々が次々と倒れていってもなお、白いユリとともに蘇るような映像は、沖縄の過去の今とを繋いでいるようにも見えます…。
今回で15作目となる山城さんの映像作品に共通するテーマは「沖縄と米軍基地」です。「オキナワ TOURIST」と題された3作品では、沖縄にアメリカ軍基地があるゆえに起きるゆがみや苦悩、本土に届かない沖縄の声などが描かれています。
意欲的に沖縄を描く山城さんの活動の原点になったもの。それは2人の兄でした。
山城さんの兄は「お笑い米軍基地」などで知られる芸人の山城智二さん。兄弟ともにエンターテインメントの世界で違う視点から「沖縄と米軍基地」を描いていました。
山城さんは今回の受賞について「足元を深堀りすることで普遍性につながるという自信を持ちました」と話し、今後は長編映画作りにも意欲を示しています。
山城知佳子さんの監督作品、映画「土の人」ですが、3つの画面を使って上映し、作品の世界に観客を引き込むという表現方法もユニークな映画です。
今度の土曜日から桜坂劇場で凱旋上映され、お兄さんの山城智二さんとの「兄弟トーク」も予定されています。