Qプラスリポートです。全国のアメリカ軍基地の7割が集中する沖縄。戦後、県民の土地を奪って造られたアメリカ軍基地ですが、この軍用地への投資を推奨する本が出版され波紋を広げています。
小野寺防衛大臣「現在、規律違反の有無も含め、詳細について調査中であり、判明した事実に基づき厳正に対処してもらいたいと思う」
先週の小野寺防衛大臣。厳正に対処すると述べたのは、職員が無許可で出版したある本をめぐる問題です。「掟破りの不動産投資法」刺激的な帯のついた表紙をめくると、こんな言葉が続きます。
「軍用地投資のメリットとは?」「ローリスク・ミドルリターンであることが最大の魅力です」「デメリットは?」「ほどんどありませんが、いちばんのリスクは基地が返還されることです」
著者は本の中で、自分は沖縄で生まれ育った「現役の沖縄防衛局職員だ」と告白し、読者にこう語りかけます。
「私は、土地の買い入れや借り上げ、財産の管理に関する業務に長く携わってきました。軍用地は、噛めば噛むほど味が出ます。いや、持てば持つほど収益性は高くなります」
沖縄の軍用地はその大半が、強制的に奪われた土地。本は、その土地を単に「金融商品」として語り進めます。また、沖縄のアメリカ軍用地の77%は、民間や市町村から借り受けた土地だとし、戦後の強制的な接収の経緯も紹介する一方で、軍用地への投資を、そのほかの投資や駐車場経営などと同じように比較して論じています。
私たちは、普天間基地内、宜野湾区に先祖代々の土地を持つ地権者を訪ねました。
松本さん「この『新松本』と書いているところが、私のおじいさんや先祖の生まれた家ですね」
もともと水が豊富で豊かな土地だったという宜野湾区。戦前は、たくさんの住戸や畑がひしめいていました。今もアメリカ軍が使い続けている土地は、戦後、一括払いの要求といった危機をはねのけ、現在の賃貸契約となっています。
しかし沖縄戦と戦後の苦難の記憶は薄れ、いつからか軍用地が「おいしい不動産」と見られていること、借り上げに携わる防衛局職員自身が投資を推奨することに、松本さんは怒りを覚えています。
松本さん「なんかこう、ざらっ、とした感じがしてね。現地のことを知らない本土の方とかが読むとね、割と誘発されてくる部分はあるかもしれませんね。土地を奪われ家屋敷を奪われ、そういう人々の気持ちにもうちょっと寄り添うべき公務員の方々がですね、やはりそこは一定限、守るべき線はあると思うんですよ」
この本で松本さんの目を引いたのは、「最大のリスクは基地返還」だと明言する部分。実際、所属機の事故が相次ぐ普天間基地についても、早期返還を望まないかのような記述がみられます。
「代替施設の建設に最低10年以上かかることは確実。さらに、危険性物質の除去にも時間がかかる」
松本さん「昭和20年に何があったのかというのを一生懸命勉強すればね、こういうことはできないんじゃないかなと」
防衛省は厳正に対処するとしていますが、本の著者は、自らが軍用地投資で利益を出したことも詳細に記していて、業務上入手した情報を自らの投資に利用していないか、といった点でも徹底した調査が必要です。