日本ペンクラブに加入する全国の作家や詩人などが、戦争と文学について語り合う集会が5月20日に宜野湾市で開かれました。
作家たちの目に今の沖縄はどう映り、この時代にあって、言論は、文学は、どんな役割を果たすのでしょうか。
作家・日本ペンクラブ前会長・浅田次郎さん「とても皮肉なんですが、普遍的な苦悩の中から、文学の傑作が生まれていく」
おととい、宜野湾市で開かれた日本ペンクラブ「平和の日」の集い。直木賞作家の浅田次郎さんやノンフィクション作家の吉岡忍さん、落合恵子さんなど9人の書き手が一堂に会し、平和のために文学は何ができるのかというテーマで語り合いました。
作家・日本ペンクラブ会長・吉岡忍さん「沖縄戦もあり、冷戦下で朝鮮戦争、その後もベトナム戦争が非常に近い所で行われました。とりわけ沖縄は、戦争に非常に近い所で書かれている文学というものがある地域であります」
作家・元琉球大学教授・大城貞俊さん「沖縄ではさらに基地被害にあう弱者がいます。今日ではこれらの人々が声を上げると、ヘイトスピーチの対象にされ、バッシングに遭うこともあります。私たちの先輩はそれでも、声を上げて権力に抗い続けてきました。この奇跡を私はとても尊敬しています。文学は弱者にスポットを当てて言葉を紡ぐこと。ここに大きな役割の一つがあるように思います」
一方、40年間、地元浦添を舞台に小説を書き続けている作家の又吉栄喜さんは、書き手に厳しい意見を投げかけました。
小説家・又吉栄喜さん「人の言うことは聞くなということですよね、自分の声を聞けと。今の作家はまだ現状に亀裂を入れていないと思うんですよ、状況に振り回されている。本当はわしづかみにして、状況は投げ飛ばしたり、踏みつけたりするような文学の力、主人公の登場を待ち望んでいます」
議論の根底にあるもう一つのテーマが「権力との対峙」。ハンセン病の元患者を主人公にした小説「あん」の作者・ドリアン助川さんは次のように指摘しました。
道化師・作者・詩人・ドリアン助川さん「歴史と環境の中で、精一杯人間を描くのが文学ならば、ひょっとすると、私たちの文学はこっちの方向性を持たなくてはならないという縛りなんて無しで、ただひたすら、人間を描き続ける文学さえあれば、私はきょうのテーマにもなっている権力というものに対する一つの壁になるのかなと思っています」
「沖縄」をテーマに、それぞれ作家の思いが語られた今回の集い。戦争の足音が近づいているという不安の声も上がっている今だからこそ、文学の力が必要なのだと言います。
又吉栄喜さん「権力者は一番、文学者を恐れています。逆に言えば、独裁者に圧力をかけることができるのが文学だと思います。文学はそういう独裁者を閉じ込める最後の砦だとも言えます」
浅田次郎さん「僕は自分の小説を書くにあたって、自分の憲法があって、美しく、わかりやすく、面白く書く。これの対極にあることが戦争であって、戦争というものは醜くて、わかりづらくて、とても不快なものです。だから文化の名の下に、美しい芸術を興隆していくことができれば、僕は人類から戦争というものをなくすことが必ずできると思っています」