特集です。さてあすは5月15日、沖縄が本土復帰して46年になります。
復帰後、北部訓練場など軍用地が返還されましたが中には土壌汚染された土地があることも分かり深刻な問題として浮上しています。
そこには沖縄が本土から取り残され続ける大きな問題がありました。
それは突然の発表でした。
「担当者としては、真摯にIUCNの指摘を受け止めたい。」
今月4日、ユネスコの諮問機関、国際自然保護連合IUCNが奄美・沖縄の世界自然遺産登録延期を勧告したのです。
その理由としては、北部訓練場跡地が推薦地域に盛り込まれていなかったことがあげられていました。しかし…
宮城秋乃さん「何か匂いが強烈で、化学薬品臭が強烈だったのでバッテリーの部品がたくさん出てきましたね」
美しい自然が残されている北部訓練場跡地。しかし地中には土壌汚染という問題を抱えていました。
亜熱帯樹林が広がる国指定の天然記念物に指定されているヤンバルクイナやノグチゲラが生息する北部訓練場跡地。
チョウの生態を研究するアキノ隊員こと、宮城秋乃さんは今年1月、散策の途中である物を発見しました。
宮城秋乃さん「最初の訓練弾を見つけたのがここなんですよ。ここに何か埋まっていた跡がありますよね。ここに訓練弾が埋まっていて」
土の中から顔をのぞかせていたのは、訓練弾やプロペラ、タイヤといった廃棄物。それはついこの間まで、この森がアメリカ軍によって使われていたことを語る物でした。
おととし、日米両政府が沖縄の負担軽減を大々的にアピールした北部訓練場過半の返還。廃棄物が見つかった現場は、沖縄防衛局が一年かけて不発弾やゴミ、有害物質を除去したはずの土地でした。
宮城秋乃さん「2016年の12月に返還された跡地なんですよ。それまでは市民は入ることもできず。廃棄物の中に、訓練弾とか、使用済みの照明弾とかが混じっていたので、弾を使う訓練をしていたと思います」
こちらはベトナム戦争さなかの1962年の映像。ベトナム人に扮したアメリカ兵も登場し、ゲリラ訓練をする様子が記録されています。元アメリカ兵からは、枯れ葉剤を使用していたという証言も出ていますが、この土地で、どのような訓練が繰り返されていたのか、実態はわかっていません。
県内では、各地のアメリカ軍施設や跡地で土壌汚染が相次いでいます。今回、日米両政府の公文書に基づいて汚染地図を作成しました。
汚染地図によると、北は北部訓練場から南は牧港補給地区まで、これまでにわかっているだけで、県内20カ所で土壌汚染が起きていました。
環境リスクの専門家で、東京工業大学の村山武彦教授は次のように指摘します。
村山武彦教授「一般的に土壌汚染というのは非常に難しくて、仮に汚染がわかったとしても、どれくらい埋まっているのか、何が埋まっているのか、非常に分かりにくいですね。それだけでも、ほかの事例でも、調べるのが大変だというのがあるんですけど、沖縄の米軍用地の話は、そもそも国が違うと、そこから始まって、何がどこに埋まっているのかは、非常に分かりにくいというのがあるので」
宮城さんが、この森に通うのは、あるチョウを観察するためです。琉球ウラボシシジミ。この辺りは、この小さなチョウの幼虫が棲む貴重な場所です。
宮城秋乃さん「これはトキワヤブハギという草で、幼虫がマメ科植物の種の部分だったり、新芽を食べたりするんですよ。これを観察するために来ていたんですね」
しかし皮肉にも小さな命の営みを追いかける中で宮城さんはアメリカ軍が捨てた廃棄物や危険な訓練を目の当たりにしました。
宮城秋乃さん「昆虫を調べるために、山の中に入って、そしたらたまたま廃棄物が埋まっているとか、オスプレイが空中給油をしているとか、本当にたまたま発見するわけですよ。でもたまたま発見したことは、昆虫たちにもかかることなので、結局私が放っておくわけにはいかない。」
政府は、北部訓練場跡地を国立公園に編入し、新たに推薦地域に盛り込んだ上で、世界自然遺産登録を目指すものとみられています。
しかし宮城さんは、こんな風に懸念しています。
宮城秋乃さん「廃棄物が残っているかもしれない地域を、国立公園や自然遺産に登録すると、観察にいらっしゃった方が、廃棄物に触れてしまう、ケガをしてしまうこともあり得るかもしれないし」
この地域が自然保護区として、観光拠点として生まれ変わるのは県民の願いでもあります。しかし返還された軍用地には沖縄の戦後の傷跡が残っていました」