宮古島で注目を集めるある農作物があります。それは、島の未来にもつながる可能性を秘めているものでした。
可憐で小さな花が畑一面に広がる宮古島城辺地域。これ、なんの花だと思いますか?実はソバの花なんです。
ソバの種を撒いたのは2月。畑の主は、島内で蕎麦屋を営む鎌田謙さんです。大阪で生まれ育ち、10年ほど前、母の故郷・宮古島に移住。家族でソバの栽培を始めました。
鎌田さん「新しい宮古にない農作物ができるかもしれないってことで。あとは地下水保全のためになるんじゃないかと。学生が研究してたんですけど。引き続き、農家でできるんじゃないかなって、やり始めました」
川がない宮古島では、全ての飲み水を地下水に頼っています。地下水は人々の「命の源」です。しかし1980年代、その地下水が主にサトウキビ栽培で使用される化学肥料で汚染されているという調査結果が発表され、島に大きなショックが広がりました。
なんとか島の地下水の汚染を食い止めたいと、およそ20年前に研究を始めたのが地元の高校たちと前里和洋先生でした。試行錯誤の中、5年かけて探し当てたのが『ソバ』だったのです。
前里和洋先生「サトウキビ収穫後、3~5月に日本ソバを植えれば土壌に溜まった肥料成分を吸収してくれるというのを実験で認めましたので、日本ソバが土壌中の肥料成分を吸収するということで、地下水に流れていく肥料成分が抑えられる」
ソバは土壌中の化学肥料成分を吸収。人体への影響もなく、さらにサトウキビの収穫後から畑が空く期間で栽培でき、農家の収益増にもつながります。しかし当初は、不安もありました。
前里和洋先生「北の国で栽培されている作物が亜熱帯地域の宮古島でできるというのは、私も半信半疑どころかダメだと思っていた半面、実際栽培してみると予想に反して相当大量の収量を得られたものですから、『これはいけるんじゃないか』と」
鎌田さんの畑に撒かれた種は、ぐんぐん成長。1か月後にはたくさんの白い花が咲き、およそ70日後には実がなります。今年は5トン収穫できました。
去年まで、製粉作業は県外に依頼していた鎌田さん。しかし、今年からは機械を購入し、自分で製粉することにしました。
鎌田さん「製粉はやりたいですよね、自分でね、最後まで。畑からやっているんで。ゆっくり細かい粉をひくこともできるし、これは面白いので、毎日実験。少しずつ変えていって毎日違うお蕎麦を出せたら面白いかなと思う」
100%宮古島産のソバ粉でソバ打ち開始です。
鎌田さん「その年とか畑とかによってぜんぜん違うので。香りも全然違うし。打ってるときに大体わかります。なんか少しだけ緑なのわかります?これが宮古でとれるソバの特徴のひとつなんです。緑ががっている。ソバの実にちょっと色がついているんです」
お昼時。一足早い新蕎麦を求めてやってくる人たちでお店は大忙しです。
お客さん「あっさりしていてとても美味しいです」「この子は初めて食べます。おいしい?よかったね」
鎌田さんの畑でとれたそば粉は、蕎麦だけでなく、様々な料理に活用されています。
島野菜デリ じゃからんだ・小原千嘉子さん「ソバ粉は限りなくいろいろ作れると思う。スイーツはもちろん、なんでもできますし。あとはソバの実が食感も良くて栄養価も高いので、いろんなお料理スイーツに使っていけると思います」
鎌田さんの姿をみて、協力してくれる農家も増えてきたといいます。
鎌田さん「宮古島のためになるんだったら使ってと(言ってくれる)本当にありがたいです」
鎌田さん「かわいた草の香りとか畑の土のにおいとか、そういうのが強いなと思うので、そういうのをもっと出して、宮古島の太陽のエネルギーとか土のパワーとかそういうのをソバに出していきたいなと思っています」