さて、あさって5日はこどもの日ですが、3年前の5月5日は県内で初めて「子ども食堂」が開設された日でもあります。子どもの貧困対策をきっかけにはじまった子ども食堂。現在の状況や課題を、現場の生の声と専門家のインタビューを交えてお送りします。
先日、県内にまた新たな子ども食堂が誕生しました。手掛けるのは大手芸能プロダクションの吉本興業。先月那覇市に開校したばかりの専門学校内で、毎日子どもたちに軽食を提供するという取り組みを試験的に始めたのです。
全国的にも珍しい、大手企業が運営するその様子を見ようとこの日視察に訪れたのは、専門家の湯浅誠さんです。
そもそも、貧困家庭の子どもなどを対象に無料で食事を提供する場として6年ほど前から注目され始めた子ども食堂。湯浅さんが代表を務める「こども食堂安心・安全委員会」は先日、その数が全国でおよそ2300か所に上るという調査結果を発表しました。
湯浅誠教授「(Q増加の背景は?)地域の交流拠点としてそういう場があるといいなっていうのがひとつ。もう一つは子どもの貧困問題がクローズアップされてきているので何かできないかなと思っているところで、子ども食堂の情報に触れて「これならできるんじゃないか」と」
学習支援などに比べて始めやすく、制度がないため様々な子ども食堂が誕生していると湯浅さんは言います。県内では、3年前、沖縄市に初めて子ども食堂が誕生しました。県によると、県内の子ども食堂の数は現在26市町村に、あわせて105カ所あります。
湯浅教授「(Q沖縄の印象は?)沖縄はとにかく県を挙げて官も民も企業も含めてかなり広く危機感が共有されている。全国的には先進県と認識している。」
評価する一方で、課題も指摘
湯浅教授「県も永遠にお金を出し続けるのは難しいかもしれません。地域の理解を得ながら会員制を取ったり寄付を集めたり色んな人の参加を促しながら自分たちで回転していけるようになることが大事。第2段階のテーマは「持続可能性」。いかに安定的に運営し続けるかということ」
ここからは取材にあたった比嘉さんです。
比嘉記者「県内地域での取り組みや行政の支援などによって急速に増えてきた子ども食堂ですが、今はその対象や目的も多様化しています。全国を共通する課題として湯浅さんは・食事やケガなどに対応できる安心・安全な環境づくり。また、子ども食堂によって体重が増えたとか、学力が何点あがったなどの短期的な話ではなく、本来の目的である貧困の連鎖を断つために・支援に頼らず自主的に運営していける持続性。また、・多様性を維持しながら質を底上げしていくことが大事だとも話していました」
色々な課題が見えて来て、「子ども食堂が誕生する」という第一段階から、「継続していくためにどうすればいいか」を考える第二段階に入ったんですね。
比嘉記者「そうなんです。ここで、新たな方向転換をした県内の子ども食堂をご紹介します」
浦添市にある、「てぃーだこども食堂」全国で初めて、小学校のPTAが中心となって始めた子ども食堂で、県内では2番目に開設されました。子どもたちが児童センターの庭づくりを手伝っている間、お母さんたちはお昼ご飯をつくります。
参加した保護者「浦添小学校のPTAがこういうことやっていると聞いて「参加してみよう」と来て初めは食べる側だったんです」
去年は、平日は毎日晩ご飯を提供し、土曜日は3食に加えおやつも出し、1日に来る子どもたちが100人を超えることも。すると困ったことも起きてきたと言います。
代表の梁さん「子どもたちが毎日過剰なサービスを受けることで意識がなくなっていく(当たり前になっていく)その子どもの背景の大人たちも僕たちが休んだら「なんでご飯作ってくれないんだ」というクレームが来るようになる」
運営するメンバーにも負担がかかり、決めたのは「原点に戻ること」でした。
代表の梁さん「自己肯定感と自己努力を気づかせるための活動だったのが薄れてしまった。じゃあご飯を作るのが必要なのかなというところで、実はてぃーだこども食堂は今年度のテーマとして「ご飯を作ることにこだわらない子ども食堂」という舵を切りました。子どもたちとの共同作業を一緒に楽しんで、何かをやったら何かをやっていいというのを気づかせたいなという原点回帰をしています」
運営する方が疲弊してしまったり、本来の意図とずれてしまっては継続も難しくなりますよね。
比嘉記者「はい、そこで開催頻度を絞って子供と一緒に活動するというのがてぃーだこども食堂の「第二段階」なのかもしれません」
そもそもはやはり、子どもたちのためにはじまったことですからね。
比嘉記者「そうですよね。湯浅さんもおしゃっていたのは、子ども食堂がいま多様化する中で、表看板は地域交流で色々な人を受け入れても、貧困から来る問題などサインに気づいた時に就学援助や控除制度の紹介などにつなげられる「裏メニュー」を持っておくことが大事ということでした」