沖縄にとって深刻な待機児童問題。県は今年度までに待機児童ゼロを目指していましたが達成できずにいます。そこで、待機児童解消への足掛かりとなる新しい制度の保育園を取材しました。
那覇市にある由風出版。書籍やカレンダーなどの出版はもちろん、ペットショップの広報やコンサルティングまで、様々な事業を展開しています。
「こんにちは!」「ごはんもってきたよー」
2歳の双子の父親でもある代表の谷正風さん。2年半前に出版社を立ち上げてから、こうしてお昼は子どもも一緒に食卓を囲んでいます。
谷正風代表「それではいただきまーす」
子どもが産まれ、拠点を自分の故郷である沖縄に移した谷さん。妻・由香さんも、出産前までカメラマンとして第一線で活躍していました。
妻・由香さん「仕事はアウトドアがメーンだったので、沖縄の山に登ってみたいという思いがフツフツ」
仕事に復帰しようと、いざ2人の預け先を探すも、認可保育園は待機児童であふれていました。
妻・由香さん「(保育園が)なかったのもあって、ずっと2人を自分でみてた」
県内の待機児童数は去年10月現在3952人。谷さん家族が住む与那原町も113人となかなか入所への道は険しいのが現実です。
そこで、谷さん去年「保育園を作る」ことを決意。
谷正風代表「妻も元々写真家で第一線で活躍していたので復帰させたい。できるだけ子どもたちにもいい環境で成長できたらなと思って作っちゃった」
谷さんに保育園を作る後押しをしたのは、内閣府が2016年から推進している「企業主導型保育事業」。厚生労働省が進める認可保育園とは別に「従業員のために保育園を作りませんか?」というもの。現在、全国ではおよそ2400カ所、県内でも55か所に広がっています。
整備費や運営費は認可保育園並みの助成があるほか、従業員に合わせた開園時間を設定することができます。
また、待機児童が減らない背景に保育士不足がありますが、企業主導型保育園では独自に保育料を設定できることから、保育士の待遇改善も企業の努力次第で可能なのです。
谷正風代表「最低限の目標を達成して経営を合わせていきたい。頑張る保育士さん、看護師さんもみんないい待遇ができるように会社全体で取り組んでいけたら」
一方、こちらは沖東交通が去年開園したオレンジキッズ保育園。県内第一号の「企業主導型保育園」です。
営業事務のお母さん「安心ですね。周りのお友達とか聞くと、保育園探すのも大変というのを聞いているので、復帰も保育園も確保されていて、とてもよかったなと思います」
オペレーターのお母さん「熱が出た時も会社の保育園なので、すぐに電話がかかってきて、そのまますぐに行っていいよと会社の人も帰してくれたりとか、すごく迷惑はかけているが感謝している」
沖東交通では子育て世代や女性の採用を増やすことでタクシー業界の若返りを目指そうと、去年、企業主導型保育園を開園しました。
沖東交通・東江一成社長「20代のタクシー乗務員も入社しているということで、全体的に女性に対するアピールはできているのかなと。会社全体の雰囲気も良くなっているし各営業所の活性化にもつながっている」
従業員や地域の子育てに企業が一翼を担う「企業主導型保育」。出産後も安心して女性が働ける社会を作るために今、求められる姿なのかもしれません。